移住しよう。僕はそう決心した。
もうこんな地獄はいやだ。よそへ行けば、もうすこしましな暮らしができるかもしれない。ともかくここから逃げ出そう。
僕はアキラの体にナイフを入れ、いくつかの肉片にした。道中の食料だ。
アキラは僕の親友だった。他の人間に食わせるなんて我慢ならない。
ボロボロになったアキラの衣服で、肉片を包んだ。かなりの重さになったが、持てないほどではない。
僕は朝が来るのをまんじりともせずに待っていた。
地上へのびる出口から光が差してきた。
僕は食い散らかされた白骨や、腐乱してウジのたかった死体をまたぎながら階段を上った。
最近は曇り空が多かったので、太陽を見るのは久し振りだ。晴れ渡った空の下に廃墟が横たわっている。
ほんの一年前まで、我々は来るべき未来に怯えながらも平和に暮らしていた。それがたった一年でこんなにも荒れ果ててしまったのだ。
あまりにも多くの人が死に、あまりにも多くの物を失ってしまった。
一体なぜこんなことになってしまったのだろう。
僕は空を眺めていた。あたりには腐臭が漂っているが、太陽はまぶしい。
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