明日へ…第二部11

寝場所をなくした僕は避難所へ身を寄せることにした。そこにはたまらなく重い空気が漂っていた。もう一度なくしたものを手に入れるには、残された時間が短すぎる。もうどうにでもなれ、といわんばかりに皆自棄になっているようだった。自殺を図る者、他人の物を奪おうとする者、暴力に明け暮れる者。連日連夜争いが絶えず、気持ちのおさまる暇などない。中には刃物を振り回す者まで出てくる始末だった。その他、様々な理由で何人かが帰らぬ人となってしまったが、もうそんなことは些細なことと感じられた。

一部の者は避難所を抜け出していった。他人の家に無理やり押し入り、そのまま居座ってしまう者、家人を追い出したり、中には殺してしまう者までいた。僕も避難所を出ることにはしたが、さすがにそこまではできず、とりあえずは地下鉄の駅に寝泊まりすることにした。

火災はその後も跡を絶たない。避難所は飽和状態になり、街のあちこちに行き場をなくした人達が途方に暮れていた。雨風をしのげる場所、少しでも暖かい場所を求めて、争いは今日も絶えない。

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