ある日、僕はサイレンの音で目を覚ました。近所で火災が発生したようだ。僕は急いで服を着替え、外へ飛び出した。 火は目と鼻の先で暴れている。実際に火事を目の当たりにするのはこれが初めてだった。 空はまだ薄暗いので、火は周囲を明るく照らし出す。 ずっと向こうの方でも二、三ヶ所、空が焼けている。 振り向くと、そこにもあそこにも火があがっている。 夜明け前の街に火をつけて回っている奴がいるようだ。 木造建築の多いこの地域では、火がすぐに燃え広がってしまう。
やがてガソリンスタンドの方から大音響が聞こえ、その場所に大きな火柱があがる。 狙ったかのように強風が吹き、火を煽っていく。
夜が明け、火がおさまったとき、街の三分の一が焼け落ちていた。
BACK | 明日へ… Index | Novels Index | TopPage | NEXT