読書日記 

 2002年10月

さーて、今月は最初から濃ゆいよっ(笑)



 「聖なる黒夜」 柴田よしき 角川書店 ISBN 4-04-873411-3 本体価格2,000円 

 見本でとっくに読んでたんだが、今日発売されたのでやっと感想かける・・
 (うずうずしてたんだ!)
 著者のRIKOシリーズ(参考こちら)の番外編、になるのかな。
 ヤクザの天使(笑)山内練と刑事の麻生さんのお話。本編のちょっと前・・麻生さんが
 まだ探偵ではなくて刑事だったときの話ですな。
 出所した練ちゃんを拾ったヤクザ・韮崎が殺害された事件と、練ちゃんがムショに入る
 羽目になった事件両方の顛末を追う筋になってる。
 どちらの筋も真実が明かされていく過程がはらはらするっちゅーか・・
 (練の事件の方は冤罪事件だと分かってはいたが)やっぱこの作者、事件ネタ
 書かすともり上げ方うまいなぁ、と思った。二段組670Pの大作ですが、
 目は疲れたけど・・一気に読ませられたもんなあ。
 しかしこの作品のポイントは・・作者もご自分で言ってるとおり・・
 「麻生さんと練ちゃんの恋愛物語」と位置付けされてるところにあるのね・・ひい。
 しかし元からこのシリーズは、本編でもジェンダー論的なものが入っていたので、
 いまさら女×女の話だろうが男×男だろうが男×女だろうが
 もうどれでもいいっつったらいいねんけどね。
 しかし!及川さーーーーん!!わしゃびっくらこいたよー!(謎の叫び。)

 いやーそれにしても・・・作者にとってこのシリーズの主要人物はすごく愛着のあるもの
 なんだろうなあ。いうたら脇のキャラで1800枚も書こうってのがすごいよ。
 そうなると・・読者もとことん付き合ったろやないけ、って気になるわな。
 私はついてくぞ!やっぱおもろいしなーこのシリーズ。うん、オススメ。

 さて、感想かこうと思うと怒涛のネタバレになるので(反転さすにはスペースが
 大きくなりすぎる・・)
 ここからどうぞ。ツッコミ万歳ってかんじか。


 ながーい超大作ですが、できれば、このシリーズは本編読んでから読んで欲しいかも。
 面白いと保証します。
 あと最後に一言言わせてください。いいですか?では・・ゴホン(軽く咳払い)。

 麻生ーーー!!いきなり口ん中入れんなぁぁぁぁぁ!!!!
 あほかお前ーー!
 えづくわぁっ!おえって。


 以上!

 2002.10.05



 「神戸在住」1〜4 木村紺 講談社アフタヌーンKC 本体価格 各457円  マ

  どういうお話かと言うと・・・主人公の辰木桂(この子は東京出身)と言う女の子が
 神戸の大学に通い、そこで過ごす仲間との日常を淡々と描いたお話。
 それだけかいっ!と言うつっこみがきそうですがこれがまたねえ・・・
 もっすごおもろいねん。
 絵が独特で(参考こちら)、まずトーンを一切使ってない!全て斜線で。
 そのタッチがまたほんわかしてていい。ほんとにね・・本当になんでもない
 日常のお話を描いてるだけなんだけど、いいお話だよ。
 染み入るというのかな・・とりあえず、今の時点で2002年に読んだ漫画では
 一番のオススメです。このままいったら2002年のマイベスト1になるね。
 日本漫画家協会賞も取ってるみたいです 。
 知人と「お互いのオススメ本を貸し合おう!」ってことをした時に借りたのがきっかけで
 読みました。人に薦められなかったら読んでなかったと思う。
 だからめぐり合わせって大事よね。

  この作品の関西弁はね、生きた関西弁やね(笑)。
 たまに小説で「それは関西弁ちゃうやろ!」ってのを見かけますが、
 この本のはほんまにネイティブやね。関西の言葉って、京都と大阪と神戸で全部
 違うんよ微妙に。例えば大阪やったら「知っとる」が神戸では「知っとう」
 になるのよね。友達もそうやったなぁ・・その辺も読んでて面白いとこでした。
 私自身は関西出身ではないので、(近畿の天気予報にはかろうじて引っかかるとこ
 出身(笑)だが)こっちきたときにびっくりしたもん。
 あと、この作品を語るにおいて重要な、阪神大震災のこと・・・
 神戸の人たちにとって、あの地震がどんなものだったかを振り返ってる箇所が
 読んでて辛かった。今はもうあんなに復興してるのが本当、信じられないね・・。
 すごいね。
 いろんな意味で読んでほしいマンガ。私は「癒し系」とかって言葉が(正確には
 そんな造語で括るのが)好きではないんですが、分類するとしたらそれになるのかな。
 読んでーよんでー。味わい深いよ。

 2002.10.05



 「少年少女ロマンス」 ジョージ朝倉  講談社KC ISBN4-06-341311-X    
 本体価格390円 

 あああああぁぁぁ———————!2002年キング・オブ・少女漫画ぁ——!!
 ふぅぅ・・めろめろっ。王子様を待ちつづけるいかれた少女蘭ちゃんといじめっ子右京の
 恋物語。あの・・右京かわいすぎるんすけど・・(ぶるぶる)男純情一直線・・・!

 王子になってこのキレイな星もキレイな花もなにもかも
 この世の美しいものすべて ポエムノートの欲望以上のものすべてを
 君に差し出したい オレだけが差し出したい


 ・・・ですって。はわー。「差し出したい」ってのがつぼ。いやもーたまりまへん。
 しかし今までこんな含羞の表情で「愛してます」(!)という男子キャラが少女漫画に
 いただろうか !?
 ぬーん・・やはりジョージ、只者ではないなおぬし・・っ。
 あ、今月号のダ・ヴィンチにもインタヴ—載ってます。出世してきたのぅ・・。

 第2部も来年連載開始だそうな。ままま待ってるぜぇ———!

 2002.10.12
 


 「呪いのB級マンガ」 唐沢俊一 ソルボンヌK子  講談社 ISBN 4-06-334620-X 
 本体価格1,600円  

  ここ最近、昔の貸本漫画が古書店にて結構な高値で売りに出されるようになったの
 は、間違いなく唐沢氏の布教活動が影響している為でしょう。
 (それで古書マニアの間では色々意見が割れてるみたいだが・・)
 それがなかったら5冊100円でワゴンとかに並んでそうなものやのにね。
  ちなみに貸本漫画は、雑誌掲載作が単行本化されたものではなく、作家が毎回1冊
 書き下ろしして出版するもので、人気がある作家は多数の単行本をすごい勢いで
 出してたそうです。たしかにさがみゆきとか異様に作品数多かったな・・・。

  著者は近年、昭和30年〜40年代後半に最盛期であった貸本怪奇漫画の特集を、
 様々なかたちで組んでいて、元になっている本を読んだことのない・目にした事のない
 人達にとってはトンデモ本としての面白さを味わえるのでしょう。
 私個人は、子供のころリアルタイムでこの恐怖漫画郡を読み漁っていたので
 (注:私のころはもう貸本制度はありませんでした。近所の古本屋に大量にあったの
 ですが、あそこは今にして思うと前身が貸本屋さんだったんでしょうね。で、持ってた本
 を在庫としておいて置いたんでしょう。1冊50円とかでした。)
 「あーそういやこんな変な漫画あったわー」と、懐かしさと共に楽しむことができたの
 でした。しみじみ。また私の子供のころの読書傾向というのが、怪奇ものに限定されて
 ましたからねー。それで余計人より読んでた量多かったんだと・・・。

  いやそれはさておき。今回のこの本では好美のぼるという漫画家を、
 一冊まるごと使って紹介してるという・・なんて思いきった!(笑)。
 で、いつもの手法でソルボンヌK子が枠外に手書きでつっこみ入れてます。
 (それがまた面白くてねえ・・)
 たしかにこの人の作品は多かったです。私も何冊か読んだことありますし。
 (「あっ!生命線が切れている」というすごいタイトルの作品もこの人の・・・)
 まあこれらの作品がどれだけすごいパワーを持っているかは、本書で余すところなく
 紹介されているので触れるまい・・。いやしかしつっこみどころだらけで疲れました・・。
 とりあえずつっこみ星に生をうけた人間は、まともにつっこんでると疲労困憊、健康に
 悪いので薄目開けて見るくらいがよいでしょう。
 
 しかしなんで彼氏には立派な「鉄夫さん」という名前があるのに、
 主人公は「ポンズ」ってあだ名で呼ぶんだろう・・。「ポンズ、いや鉄夫さん!」って
 途中で言い直すくらいなら最初から鉄夫と呼んでやれよ。一体なんなのポンズって。
 そして別の作品では舎弟がネコンブ(・・・)という名なのだ!
 うーむ・・常人では考えられないこのネーミングセンス。ポンズにネコンブて。

  いや、こんな調子であげていったらきりがないので・・、本書を読んでいただければ
 よいのです。とにかく笑えること必須なのですから。
 それにしても唐沢夫婦の雑学本はとてもおもしろい。沢山本を出しているのですが、
 そのラインナップには惹かれまくりだわ。こういうことを追及していくのが仕事って
 とっても楽しいだろうなあ。
 HPこちら 
 
  (※ちなみに貸本マンガ入門書には同著者の「まんがの逆襲」光文社文庫 
  がよろしいかと・・)

 2002.10.19
 


 「世界の猟奇ショー」  幻冬舎文庫 唐沢俊一 ソルボンヌK子         
 ISBN 4-87728-738-8  本体価格457円 


  すっかり唐沢夫婦づいて、また読んじゃいました・・。
 まあまたこの夫婦の趣味まるだしじゃのう・・。しかしこの本の猟奇な下ネタとか
 読んでると、私なんぞは窺い知るべくもないあんだーぐらうんどな世界があるのね・・
 と感慨しきりですわ。あまり知りたくないのでよいのだが。
 「男と女の事件簿」とか昔おこった猟奇事件の紹介もあって、これみてると
 ソルボンヌさんは怖い見せゴマ書くのうまいなぁとおもっちゃう。
 だって不気味なんだもん。ひえー。
 しかしこの本で一番「いやぁぁぁーー」とおもったのは、イカをさばいたら中が寄生虫で
 いっぱいだった・・ぎっしり・・みっちり・・
(←ちょっとグロいので・・反転させてね)
 ってとこかしら。 うわあああ——いやぁぁぁ!!あー想像するだにきもい・・。
 まあ雑学本としてかなり面白いですが、グロいのあかん!!って人は読まんほうが
 いいかも。かわいらしい絵でさわやかに書いてますが内容は相当きついんで・・。

 2002.10.23



 「空に住む飛行機」 姫野カオルコ  講談社文庫 ISBN 4-06-185705-3  
 本体価格440円 


 「異常なほど厳格な父母の元に育った29歳の主人公の前に、ある日気になる
 男が現れて・・」
 というイントロ。読んでて思ったし、解説にも書いてあったけれど、このお話は
 かなり作者の体験をもとにしてかかれてるようだ。だって、前回読んだ
 『ガラスの仮面の告白』に出てきた作者のエピソードがそのまま出ているし。
 (失恋のとこはそのままでしょう)
 著者自身のエピソードだということがわかると、面白くなくなる小説もあるが、
 このお話はいやあ、面白かった。
 誰でも小さなきっかけで自分の繭に、
 亀裂を入れて一歩踏み出すことができるってこと。 そういうお話。
 また、まぎれもなく恋愛のお話でもある。一つ一つの心の動きがひたむきに、
 丁寧に描かれててすごくいい。
 で、その恋の決着、異様にリアルだったなぁ・・。いるよこういう男。
 でも好きになってる時はそれらの欠点に目をつぶっちゃうんだよね。
 見えてるのに、見えないふりをするんだ。このへんほんと、リアルだぜ・・。
 あと152Pの避妊に関する話ね!っかー!いやもう読んで確かめて!
 しかし、作中の両親の人物造詣は凄まじかった。著者のご両親も相当厳格な
 ようですが、本当にこんな親なら恐ろしい。耐えられんな。

 ああやっぱり姫野さん面白いじゃん!思わず「ガラスの仮面の告白」
 読み返してしまったよ。さくさく読むぜー!

 2002.10.26



 「君の夢は もう見ない」 五條瑛  集英社 ISBN 4-08-774614-3    
 本体価格1,800円


  著者のデビュー作「プラチナ・ビーズ」は、後の2作目とあわせて《鉱物シリーズ》と
 称されているようだが、今作はその一連のシリーズに出てくる中華思想文化研究所の
 仲上所長を主役に据えた連作集。(著者の作品では、集英社刊「夢の中の魚」も、
 同シリーズの脇の登場人物を主役に据えた連作集であった)
  
  1999年初出の作品を皮切りに、足掛け3年の間に月刊誌で不定期連載されていた
 これらの諸作品を、著者は登場人物の「手紙」を作品間に挟むことにより、
 ひとつの長編になるような構成にして1冊の本にした。雑誌掲載分は全て既読していた
 ので、このような形でまとめられていたのは驚いたが、新しい切り口で読むことが出来て
 尚一層面白いものになっていたと思う。
 (同じような手法は「夢の中の魚」でもとられていた)

  過去に米国防省の情報機関での仕事に関わっていて、今は一線から退き
 《中華思想文化研究所》という出版社の所長に収まっている主人公・仲上が
 様々なきっかけで接することになった日常的な(しかし少々きな臭い)事件の数々・・・・
 といった感じの連作集であるが、どれも著者らしい題材というか・・
 決して派手なわけではないのに、心に残る話が多い。
 渋いというか・・社会的弱者の立場にいる人たちをかいていることが多いような
 印象を受けるが、またそれがうまく書けていると思う。
 「薔薇の行方」なんかは派手な印象があるが。この「薔薇の行方」と「胸壁の美女」、
 表題作の「君の夢は もう見ない」などがお気に入り。漢詩が効果的に引用されたり、
 雰囲気があっていい。 他の作品も併せてとても粋な作品群だ。

  さて、1冊にまとめるにあたって、著者は雑誌掲載の時には全く出ていなかった
 登場人物を出してきた。その人物は主人公と過去に因縁があり、今でもスパイ活動を
 していて、「もう一度俺と同じ夢を見よう」と、情報活動の世界に再度誘いをかけてくる
 わけだが・・。
 (ここからネタバレ)
 作品の間に挟まれている手紙でこの人物の事を伝聞の形で語らせ、
 主人公がまたスパイの世界に足を踏み入れるきっかけを書こうとしているのかな?
 という一種の期待を読者に抱かせておいて・・引っ張るだけひっぱっておいて最後の
 主人公自身の手紙によってその可能性を否定する、という筋になっていました。
 これだと「こんだけ引っ張っておいて、このラウル・ホウって結局誰やってん!」という
 不完全燃焼な感じ〜が残る感も否めないところですが、個人的にはこういう
 肩すかしもありかな、と思いました。
 スパイだった男がその過去に蓋をして、今ある生活を大切にしたいと願うところで
 終わるって筋、普通は書かないよなー。逆にそれでしめるのが、どう転ぶか分からない
 可能性を秘めてるって感じにもとれるようで、面白かった。

 (ネタバレ終わり)

  まあ、手紙全部でその人物の事を「語らせてる」というのが少々強引にうつる
 嫌いはあったが、全体的にはうまくまとまっていたのでは。
 それにしてもやはり著者の文章センスはいい。短編になるとそれが一層際立つと思う。
 この作品は鉱物シリーズを読んでいなくても全く問題なく読めると思うので是非。
 また読んでいる人には、そのシリーズの主人公もゲスト出演(?)していたりする
 ところが嬉しいポイントかも。

 とても質の高い連作集。
 長編への挑戦を躊躇っている方には是非お薦めしたい一作かと。 

 
 2002.10.31




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