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Act 5

牧野つくし。
今日は、どこまでも牧野つくしに繋がっている。
あのホテルの従業員を見かけてから、牧野つくしがついてくる。
西門様の奥様は牧野つくしの友達で、あのカナダでの出来事をちらつかせているのは明らかで、私も美奈子もえりかも、あのことを知られたら間違いなく離婚されるわ。
あのとき、一歩間違えれば、牧野つくしは死んでいたかもしれない。
でも、私たちのせいじゃない。
勝手に吹雪の中を出て行ったのは、牧野つくしだもの。
なのに、私達が離婚されるなんて、冗談じゃない。
三条桜子にも西門夫人にも、気をつけないと。
あの日のことは、絶対知られてはいけない。
大丈夫、まだ夫は何も気がついてはないようだから。
「慎也さん、そろそろ来ると思うよ」
時計をチラッと見た成金が、夫に声かけた。
話題がそれたことに安堵したのもつかの間。
まだ、誰か来るって言うの?
パーティーの途中から参加するなんて、非常識な人ね。
そういえば、一番大事なお客様が来ると言っていたっけ。
成金とも繋がりのある人なのかしら。
「いいかい、もうすぐ一番大事なお客様が来る。ちゃんとしてくれよ、僕の事業の運命を左右する人だからね」
念を押すように夫に言われて、冷や汗が出てきた。
「え、ええ・・・。わ、私、お化粧を直してくるわ。すぐ戻るから」
F3達に背を向け、美奈子たちと、パウダールームに急いだ。
夫の事業を左右する人って、いったいどなたなのかしら。
なんだか、とても嫌な予感がする。
「ねえ、百合子どうするのよ?西門様の奥さんがあの時の女だったなんて」
「そうよ。しかも、うちのと学生時代からの知り合いなんて」
「うちの姑のこともよく知っているみたいだったわ。まずいわ、まずいわよ」
「どうする?っていうか、どうしよう?ねえ、百合子、百合子ったら」
どうしようって言われたって、どうしたらいいのか、わからないわよ。
「どうしようって・・・わかんないわよ、そんなこと。それより、F4と付き合いがないのがうちのにバレたら、もっと大変よ」
「そんなこと!百合子が嘘なんかつくから悪いんじゃない、私も美奈子も関係ないことでしょ」
「なんですって!」
えりかったら、こんなところで裏切る気?
「ち、ちょっと待ってよ。こんなところで喧嘩しても・・・。と、とにかく、会場に戻りましょうよ。慎也さんの機嫌を損ねたら、大変よ。ねぇ、百合子」
「そ、そうね」
とにかく化粧を直して、これから来るお客様に取り入らないと
。 夫の事業が上手くいかなくなったら、このセレブ生活が終わってしまうもの。
急いで、会場に戻らないと。
「行くわよ。整形ブスやパンピーなんかに負けてはいられないもの」
そうよ、私の生活は自分自身で守らなくちゃ。
キャッ!な、なに?
「あっ、ごめんなさい!」
いきなりぶつかってきたこの女、メープルホテルの担当者じゃない?
「どこ見ているのよ?まったく、ドンくさい女ね」
近くで見るほど、牧野つくしによく似ている。
「あさ・・い・・・いえっ、大変失礼しました、九条様」
メープルの従業員とはいえ、この女のスーツはかなり上等だわ。
近くで見ると、はっきりわかる。
生意気なのよ、従業員の分際で。
「あなた、私が誰だかお分かりでしょ?あなたみたいな宴会担当者の一人ぐらい、道明寺様に言えば、簡単にクビにできるのよ」
「・・・・・・・・道明寺に?・・・ふふっ・・・・相変わらずね」
小さな声で聞き取れなかったけど、確かに私を笑ったわ、この女。
「な、なにがおかしいのよ?」
「本当に申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げる姿が、バカにしているようで余計に腹が立つ。
「ですが、ぶつかってきたのは九条様のほうです。前を見てお歩きになりませんと、危険ですわ」
「なんですって?それが客に対する態度なの?ち、ちょっと、待ちなさい!!」
「本当に申し訳ありませんでした。私、急いでますので」
私のことなど無視して走り去る女。
あんな女、絶対クビにしてやる。
「大丈夫?百合子?」
「今の人、牧野つくしにそっくりね」
「なに言ってんのよ、えりかったら。こんなところに貧乏牧野がいるわけないじゃない」
「あの女が今日のパーティーの担当者なんだけど、あんないいスーツ着て、生意気でしょ?」
「そうね、あれってシャネルのオーダーじゃない?」
「ホント、生意気だわ。牧野つくしにオートクチュールなんて、絶対無理よ」
そうよ、牧野つくしに似ているって言うだけだわ。
「百合子!」
「あ、あなた・・・」
「百合子、化粧に何時間かかっているんだ?いい加減にしてくれよ。和也さんと桜子が美作さんたちの相手してくれているけど、本来は君の仕事なんだから」
「ご、ごめんなさい」
いつまでも戻らない私たちに痺れを切らした夫に、また怒られるなんて。
全て、あの女のせいよ。
「あなた、聞いて。今日の担当者、私にぶつかっておいて謝りもしないのよ。クビにするように言ってくださらない?」
「オイオイ、なに言っているんだ?牧野さんは、そんな人じゃないよ」
「ま、牧野・・・ですって・・・?」
まさか、本当の牧野つくしじゃ・・・。
「そうだけど。彼女は礼儀正しくて、とても優秀な人だよ。君の気のせいじゃないのか?」
「・・・牧野さんって、英徳の方?」
「さあ、知らないけど。そんなこと、どうでもいいことじゃないか?とにかく、妻として役目をしっかり果たしてくれよ。もうすぐ、お見えになるんだから」
「お見えになるって、どなたですの?」
「だから、言っただろ?大事なお客様が来るって。君にも懐かしい人だって」
「えっ?それは、美作様のことじゃないの?」
「美作さんも花沢さんも大切なお客様だけど、これからお見えになるのは、もっと大事なお客様だよ」
「もっと大事な・・・?」
「あっ、お見えになった!」
えっ?
夫の視線の先には、長身で癖のある髪型。
もしかして・・・道明寺様?
「ほら、急いで、挨拶に行くから」
夫に引っ張られて、道明寺様の前に。
F4が揃うなんて、改めて夫の交友関係の広さに驚いたわ。
まずい・・・道明寺様と親しくなかったことが夫にばれたら、どうしよう。

( 2009/12/24 )


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