整体学校 看護師求人

Act 18

私のベットの3倍はあるんじゃないかって思うくらい広いベットで、私は目覚めた。
あっ……私、気を失っていたのか……。
気がついた時、つくしさんが私の手を握っていた。
「あら? 気がついた?」
「……私?」
「ビックリしすぎて、気を失ったの」
そう言えば、一馬達が来たと思ったら、樹が現われて……。
とぎれた記憶を繋ぎ合わせた。
「ごめんなさいね。 驚かしてしまって」
「あの……、樹は?」
「私達の息子よ」
申し訳なさそうなつくしさん。
「ホント、バカ息子なんだから」
「……樹は、どうして日本に?」
「司が呼びつけたらしいわ。 もぉ、司ったら」
道明寺さんが時間を気にしていたのは、このためだったのね。
「つくしさんには……、道明寺さんも、私と樹のこと、知っていたんですか?」
「司は、ずいぶん前から知っていたみたい」
「道明寺さんが?」
「私は昨夜、司から教えられたけど。 まさか、麗ちゃんの彼氏が樹だとは思わなかったわ」
私だって、樹のご両親が道明寺さん達だとは思わなかった。
「樹は、私達に何も話さなかったけど」
「じゃあ、どうしてわかったんですか?」
「昨夜、麗ちゃん、司を見て『誰かに似ている』って呟いたでしょ?」
そうだ。
今までも、道明寺さんの優しい笑顔を見るたび、誰かに似ていると思ってた。
樹だったのか……。
そっか、親子なら似ていて当り前だよね。
「気分はどう?」
「もう平気です。 あの……樹は、どうしてますか?」
「私達の部屋にいるわ。 今頃、司に睨まれて小さくなっているんじゃない?」
「松岡先生や家元は、どうしてここに? もしかして……つくしさん達だけじゃなくて、松岡先生もご存知なんですか?」
「……多分」
一馬から聞いたのだろうか……。
「どうして、樹は牧野なんて名乗っているんでしょう?」
「さあ……どうしてかしら? 樹が牧野を名乗った理由は、本人に聞くしかないんじゃない? 樹をここに呼びましょうか?」
「いえ……大丈夫です。 皆さんのところに戻れます」
少し足元がふらつくけど、つくしさんと元いた部屋に戻った。
まだ動揺が静まらない。
でも、どういうことなのか、樹からちゃんと聞かなくちゃ。
部屋の中は重苦しい雰囲気が立ち込め、その中で、樹が道明寺さんに、一馬が家元に、それぞれに睨みつけられて小さくなっている。
くすっ、まるで叱られた子供みたい。
樹が私に気がついて、傍に駆け寄ってきた。
「……麗、大丈夫か?」
「うん……」
「ごめんな。 麗、ごめんな……」
大学にいた時も、二人で一緒にいた時も、樹はいつだって自信に溢れていて、こんな弱々しい樹を見るのは、初めて。
「ごめんな……。 隠すつもりはなかったんだ……」
「くすっ、まるで浮気がバレた時の言い訳みたい」
樹の顔を見ていたら、さっきまでの動揺が嘘のように落ち着いてきた。
いつもの俺様振りもどこへやら、小さくなって青ざめてる樹を抱きしめてあげたいと思う。
やっぱり私……樹が好きなんだ。
「俺は……。 俺はただ、一人の男として……麗と付き合いたかったんだ……」
消えそうな声で呟く樹。
「だからって! 素性を隠したまま、結婚を申し込むなんて、どういうつもりなの!」
つくしさんの剣幕に、その大きな身体をさらに小さくしている。
つくしさんも怒ると怖いんだ……。
「樹、あなたの気持ちはわからない訳じゃないけど……女の子にとって、結婚は大事なことなのよ。 それなのに!」
道明寺さんが『静の怒り』なら、つくしさんは『動の怒り』。
「あなた、自分が道明寺家の跡取りだって、わかっているの? 樹には、私達のような思いはさせたくないから、あなたの結婚に反対はしないつもり。 だからって、嘘をついたままプロポーズするなんて、許す訳にはいかないわ!」
「言えなかった……。 本当のことを話したら、麗を失いそうで……」
つくしさんの怒りの前で、消え入りそうに小さくなっている樹。
何も話してくれない樹に、愛されてないのかもって、不安になった夜もあったけど。
大事に思っていてくれていたんだ。
「麗! 樹のせいじゃないんだ。俺が……」
一馬のせい?
どういうこと?
「ちゃんと話して」
樹と同じように、小さくなって青ざめている一馬。
「俺が……。 俺が麗に樹を紹介した時……つくしおばさんの旧姓を教えたんだ。 だから……おばさん、樹を叱らないで」
「一馬くん、どうしてそんなことを?」
「……樹が雅と付き合っていなかったら……あんなに傷つかなかったら……」
雅さんが原因だと言うの?

( 2007/2/16 )

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