2005年ベストミステリ




2005年国内ミステリBEST10へ     2005年海外ミステリBEST10へ



2005年01月〜12月までの間に出版された本を対象としています。





総  評

 今年出版されたミステリ小説に関しては、全体的に小粒という印象。そんな中で堂々トップの地位に上り詰めたのは“倒叙”ものの2作であった。これは他のランキング上においても揺るがないほどの絶対的なものとなったようである。そして私自身もこの二冊を強く推している。
 ただ、全体的に小粒といっても小説の出来が悪いという事ではなく、なかなかの良作、佳作を多々見つけることができた。よって、2005年のランキングを楽しむには3位以下にどのような作品が入っているかに注目することであろう。

 今年の国内ミステリでは、どの出版社が検討していたかに注目してみると、近年本格ミステリに力を入れてきている光文社が挙げられる。また、本格ミステリ一辺倒というわけではないのだが、文藝春秋も毎年それなりの本を出版している。そういった中で講談社がやや元気がないように思えるのが残念なところである。といっても、本を出していないというわけではなく、これは路線の転換によるものなのであるが。

 また、企画もので見てみると東京創元社の「ミステリ・フロンティア」が一番検討していたように思える。2005年に出版した本がなんと10冊。どれもが本格ミステリとして推せるわけではないにしろ、これだけ出版点数を上げることができれば、一企画としては十分なのではないだろうか。
 他の企画での2005年度の出版数はというと、「ミステリー・リーグ」が4冊、「本格ミステリ・マスターズ」が4冊、「ミステリーランド」が3冊。「登竜門 Kappa-One」に関しては、今年出版された2冊がどちらもミステリーではなかったのが残念なところである。

 と、大まかではあるが、国内のミステリーの刊行状況はこんなところ。2005年は2004年のように大物作家の新刊というのは少なかったように思えたが、それでも結構な数の本が出版され、良い本がたくさんでていたと言ってよいと思う。ミステリ界も不作だといわれつつも、徐々に底上げがなされてきていると感じ取れる一年であった。




 その反対に海外のミステリ小説のほうは不作であったように感じられた。以前に各種ランキングなどの上位に挙げられた作家が多数作品を出していたのだが、期待はずれとなったものが多かった。近年、安定していると思える作家は、マイクル・コナリー、ジェフリー・ディーヴァー、マイケル・スレイド、ロバート・ゴダード、ポール・アルテあたりであろうか。

 出版社で見てみると、最近がんばっているように思えるのは文藝春秋の文春文庫あたりか。また、出版点数は少ないが原書房は良いところを付いてきていると思える。国書刊行会や晶文社はもう最近では安定した供給状況にあるといってよいであろう。
 ただ、最近元気がないように思えるのが扶桑社。少し前の年は、ランキングのトップの中に何冊かはかならず入っていたような気がするのだが。

 そういった中で今年海外ミステリにおいて一番注目したいのは論創社の「論創海外ミステリ」。これは2004年後半から始まり、2005年にはなんと、27冊(30冊?)も出版している。にも関わらず・・・・・・話題作が一冊もない。各種ランキングを見てもトップ10どころか、トップ20にも入っていなかったり。これほど大味な出版企画というものは他に類を見ないであろう。

 他には、ミステリーではないが、国書刊行会の「未来の文学」シリーズが第1期の刊行を終え、第2期のラインナップを発表したこと。また、出版点数は少なかったが、晶文社ミステリから刊行された「クライム・マシン」は話題作となった事により、ジャック・リッチーの次の作品が企画されるのではないかと思っている。そして、文藝春秋と国書刊行会から相次いで出版されて話題となったP・G・ウッドハウスの作品。今年の売れ行きしだいでは、来年もまだまだウッドハウス・ブームが続くかもしれない。
 2006年にはそろそろ国書刊行会の「世界探偵小説全集」の第4期にけりをつけて、第5期のラインナップを発表してもらいたいところである。





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