「どうした? 辛くなったのか?」
「辛くなんか……ないよぉ」
 悠人が何をして欲しいかわかっているクセに、徹底的にじらしてくる優作に、悠人は苦しそうな声をあげて抗議する。
 そんな悠人が可愛くて仕方がない優作は、更に意地の悪い笑顔を浮かべると、悠人の臍下を口で強く吸い上げた。
「ほんとうに? 何か辛そうだぞ。特にここの下辺りなんか」
「いじわる……しないで……よっ!」
 辛そうに文句を言う悠人に、優作はつい苦笑を漏らしてしまった。
 笑われたのが何だか口惜しい悠人は、息を荒げながらも、キッと優作を睨み付けた。
 睨まれていると知りつつ、優作は素知らぬ素振りで再び悠人の胸の突起を責め始めた。
「やっ! ゆ、ゆうさくってば……っ! ずるい……!」
「なんでだよ」
 切なそうに不平を洩らす悠人に、優作は我関せずと言わんばかりに反論するが、乳首を責める手と舌は休めない。
 次々と押し寄せる快楽の波に、悠人はおぼれそうになるが、ドクドクと激しく脈打つ下半身の一部が、悠人に現状を呼び覚まさせる。
 Gパンの中で破裂しそうに膨れ上がる悠人のモノが、欲しくて仕方がないと騒ぎ出すのだ。
 悠人はもう我慢できずに、優作の太股を挟み込むようにして、その部分を擦り付けた。
「お、お願いだから……もう……」
 泣きそうな声で訴える悠人に、さすがに意地悪しすぎたことを反省した優作は、悠人のGパンのボタンを外してファスナーを下ろすと、腫れ上がった悠人の股間を手のひらで包み込んでパンツの上から揉みしだいた。
「わかったわかった。こっちも欲しかったんだろ?」
「んっ……!」
 待ちわびていた感触に、悠人は返事のようなうめき声を出してのけぞる。
 優作は悠人の股間を責めながらも、器用にGパンを脱がしていく。
 むき出された太股に、優作の指が這うと、悠人は短い悲鳴を上げた。
 身体を仰け反らせ悶える悠人の腰に手を潜り込ませた優作は、悠人の身体をひっくり返して今度は背中に舌を這わせ始めた。
「あっ……、やだ……っ」
 優作に与えられる快感で上気した悠人の背中に、あの龍が浮かび上がっていた。
 忌まわしい思い出しかない背中の彫り物を優作に見られ、悠人はどうしようもない恥ずかしさに襲われ涙をこぼす。
「見ないで……、優作……いや……っ」
 悠人の悲痛な懇願にも拘わらず、優作は背中を責める手を止めない。
 それどころか、背中を伝う指は、龍の輪郭をゆっくりとなぞっている。
「……黄家のお宝とは言ったものだな」
「え……?」
 優作の言葉に、恥辱で死にそうなほど苦しんでいた悠人は、思わず顔を上げた。
 真っ赤になった顔を向けてきた悠人に、優作は軽くキスをすると、悠人の唇にすっと指を充てる。
「ここ、そして首筋、鎖骨部分に脇、乳首のあたり……」
 優作が言った場所を指でなぞると、悠人は沸き上がる快感に、思わず身悶えしてしまう。
「あっ! や……んんっ! はっ! ああっ!」
「脇腹、腰骨、丹田、内股、……へえ、膝裏もか」
 感心しながら優作の指が触れる場所は、どれも悠人がとてつもなく感じるところである。
「あとは……さすがにココは多いな」
 そう言いながら優作は悠人の股間に手を潜らせると、ペニスの先端、袋の裏側、肛門と袋の間、そしてひくついている悠人の蕾部分などを指でつついて回った。
「やっ! な……っ、なに……っ? ゆうさ……く、あああーーーっ!」
 優作の触れる部分から、ぐんぐんと沸いてくる快感に、悠人の全身は堪えきれなくなりそうな痺れに襲われた。
 指で触られているだけなのに、もう達してしまいそうになった悠人は、身体を仰け反らせ悲鳴を上げる。
「ゆ……さく……、も、もう……」
 泣きながら訴える悠人に、優作は背後から悠人を抱え込んでキスをする。
「我慢できないなら、構わないから吐き出せ」
 そう言うと、優作はいきり立った悠人のペニスをしごいて、放出を促した。
 沸き上がる快感を抑えきることができなくなった悠人は、絶頂に向かって一心に身体をくねらせた。
「ああうっ! あンっ! あはっ、ああ……、あ、あ、ああああーーーーーっ!!」
 悲鳴に近い喘ぎ声とともに、悠人はとうとう射精してしまった。
 優作に触られただけで、こんなになってしまう自分が恥ずかしく、悠人は涙の溢れる顔をぎゅっと枕に押しつけた。
 泣き崩れる悠人の背中越しに、優作がすまなそうに声をかける。
「……悪かったな」
「ううん……。ごめんね……、こらえきれなくて……」
「あやまるのは、オレの方だ。興味本位で悠人を弄くり回しちまったからな」
「なに……? それってどういう……」
「背中の彫り物さ。ずっと気になっていたんだよ。どうしてこんなに光り輝く図式の龍を描かせたのかって」
 真面目に語る優作の口調に、悠人もまた緊張した面持ちで耳を傾ける。
 優作の指が、背中の龍を縁取ってなぞると、悠人はまたびくりと身体を震わせた。
「おまえンとこが、満州八旗の血筋だって聞いていたから、もしかしたら清朝のお宝を示唆する暗号かとも思ったんだけどね。どうも普通にイメージするお宝のありかってヤツじゃないから、もしかしたらと思ったら……」
「思ったら?」
 優作の言葉尻を悠人が復唱する。
「龍が光を放っている場所は、今オレが悠人を触った場所。つまり、悠人の性感帯だな」
「なっ……?」
「なるほど、こりゃお宝には違いないや」
「……優作の馬鹿……。そんなことで……」
「だから悪かったって」
 うらめしそうな瞳で睨んでくる悠人に、優作は居住まいを正して悠人に詫びる。
「だけど悠人。もう二度とオレ以外の男に、こいつを見せるなよ」
「オレだって……、優作以外の誰にも見られたくないよ……」
 二人は見つめ合って互いに微笑むと、口を寄せてキスをした。



探偵物語

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