車の少ない夜中の一般道を軽快に走るベスパだが、優作は少し焦っていた。
 夜中の信号は、変わるのがむちゃくちゃ早く、青信号だと思って進むと交差点に着いた途端に赤になる。
 そんなことの繰り返しでは、優作でなくとも頭に血が上る。
 いっそ信号無視でもしようかとも思うが、バイクで事故ったら、こっちが死んでしまう。
 これから悠人を迎えなければならないのに、事故って死んだら意味がない。
 しかも、こともあろうに優作はノーヘルだった。
 普段、滅多にヘルメットを被ることがないから、つい忘れてきたのだ。
 ノーヘルでは首都高にも乗れない。
 巡回中のお巡りに見つかったら、確実に捕まる。
 時間が切迫している今、それも避けたい。
 慎重に、かつ急いで。優作は青信号になると猛ダッシュでベスパを進める。
 制限速度もなにするものそと走るベスパの後ろから、パトカーがサイレンを鳴らして走り寄ってきた。



探偵物語

<<back   top   next>>