黄仲正の責めは、夜空が白む頃まで続いた。
 悠人が果てても、休むことも許されず、ずっとイかされっぱなしである。
 朝日が昇る頃になって、悠人は解放されたと同時に気を失った。
 さすがに一晩中だと、責め立てる方も疲れたらしく、黄仲正は大きなため息をひとつつくとバスルームへと向かった。
 部屋を出ると、洗面台から水の流れる音がいつまでもしていたので、黄仲正は訝しげに思って洗面台をのぞいてみた。
 見ると、別室で寝ていたはずの劉太戴が、左腕を流水にさらしているではないか。
 しかも、鍛え上げた太い腕が、赤黒くなって更に倍くらいに腫れている。
「どうした、劉」
「あ。おはようございます。黄様」
 劉太戴は蛇口を止めて、洗面台を黄仲正に譲ろうと下がったが、黄仲正は続けるよう示唆する。
「構わん、続けなさい。フロントに氷を頼んでおこう」
「いえ、大丈夫です」
「それだけ腕を腫らしておいて、大丈夫なわけがない。今日は私のことはいいから、病院に行って来なさい」
「しかし……」
「その様子では、おそらく折れているのだろう? 万全の体制で本土に行かねばならないから、きちんと治療を受けておきなさい。いいね?」
「……わかりました」
 劉太戴は痛む腕をさすりながら、不承不承といったかんじで返答をした。
 子供のように拗ねる劉太戴に、黄仲正は劉太戴の厚い胸を軽く叩いて言った。
「そのかわり、今日は病院が終わったら、悠人のことを頼む」
「はい」
 劉太戴は頷くと、再び蛇口を開けて水を出す。
 腫れた腕を流水にさらす劉太戴の姿を、黄仲正はじっと見つめていた。
「しかし、工藤くんもやるもんだ。キミをここまで手負いにするとは」
「確かに。彼は強いです。悠人様が止めなければ、おそらく私の方が負けていたでしょう」
「そうか……」
 黄仲正は、昨晩のことを思い出した。
 最初のほうでは、優作が圧倒的に劉太戴を押していた。
 あのままコトが進んでいれば、いかに劉太戴とはいえ、倒されていただろう。
 だが、勝ちを焦れば焦るほど、勝機は段々と優作から離れていった。
「なあ、劉。工藤くんなら、悠人を守れると思うか?」
「彼ならできます」
 きっぱりと断言をする劉太戴の返事に、黄仲正は満足げに頷いた。
 腕時計に目を落とすと、針は五時を少し回っている。
「もうこんな時間か。シャワーを浴びたら出るとするか」
「少しお休みにはなれないのですか?」
「今日は八時から大事な会議がある。それに、久しぶりに悠人を堪能したから、気合いも充分だ」
 黄仲正はそう言うと、バスルームではなくリビングのほうへ足を運んだ。
 フロントに電話をして氷を頼んだ様子である。
 その後、シャワーを浴びると、黄仲正は身支度を整えあれこれと劉太戴に用事を頼んだ後、一人で出かけていった。



探偵物語

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