「さてと」 優作はネクタイでヒデの手首を縛ると、ベッドの枠に腕を吊すようにしてくくりつけた。こうするまでにはひどく暴れられたが、縛り上げられてからは観念したのか動きもしない。 しかし、口を尖らせて優作を睨み付ける目は相変わらずである。 レコーダのマイクテストを終えた優作は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると、勝ち誇ったようにヒデのそばに寄った。 そして、マイクを手に取り一言。 「えー。3月26日深夜1時……今何分だ? ……20分か。これから、ヒデさんにいろいろと質問をしてみようと思います」 そう言うと、優作はズボンの後ろポケットから財布を取りだし、一万円札を10枚程、縛り上げたヒデの前に並べた。 「何だよ、これ」 怪訝そうな顔をしてヒデが尋ねる。 優作はと言うと、相変わらず涼しい顔をしたままだ。 「正直に答えれば、ここにあるお金はみんなヒデくんのもの。だが、これから行う質問に対し、嘘偽りをひとつ述べるごとに一万円ずつ減っていきまーす♪」 「なんだよ、それは?」 「では、質問開始。えー、まずは本名から」 「ぜってー、言わねえ!」 「はい。じゃあ一万円没収♪ では続いての質問」 「汚ねえぞ! てめえ!」 「年はいくつですか。正直にお答えください」 「……24」 「またまた一万円没収〜」 「なんだよ! ちゃんと答えただろうが!」 「オレは『正直に答えてね』と言ったんだ」 「だから!」 反論しようとするヒデをあからさまに無視して、優作は次の質問に入った。 「これは正確に答えたら、一万円プラスのボーナス問題。住所を述べなさい」 「都内特別区(23区内)!」 「続きは?」 「教えてやんない」 ヒデは首を回して子供のようにぷいっと拗ねてみせた。 優作は顎に手を当て少しの間唸ると、ぽんと膝を叩く。 「まあ、今回はおまけで保留、と。では次」 こうして、幾つかの質問をぶつけてはみたが、ヒデの口は思った以上に固く、せっかくの本人インタビューも、あまり成果はなかった。 一枚、また一枚と引っ込められる一万円札を、歯ぎしりしながら見逃すが、ヒデはそれ以上に自分に対して詮索を受けるのは嫌なのだ。だが、お陰で優作は本当のヒデを垣間見ることができた。 5人のチンピラに囲まれてもひるむことなく挑み、男の相手をするときは妖艶な美女のように艶っぽく、常にクールを装っているヒデが、実はこんなにも直情的で子供っぽく膨れることがあるなど、ノリでさえ知らないだろう。 |