ニコンFM3Aについて


 実はFM3Aを買うまでに私は相当悩みました。
 理由は簡単。安い買い物ではないからです。
当然自分の予算を考え合わせて中古にするか、思い切って新品を買ってしまうか、と悩みつづけた訳です。
結局は程度の良い中古品の値が下がる様子も無く、あってもすぐに売れてしまうので新品を買いました。

今、何故あえてFM3Aなのか。
それは我が愛機ニコンF100のあまりに高い完成度と、その割には使っている機能が少ない自分自身との間に距離を感じ始めたからなのです。
無論F100は出動回数では我が家のナンバーワンです。今でも。
湧き出してくる疑問を振り払うかの様に、F100をフルマニュアルで使ってもみました。
でも最近無性に『もっとメカメカしくてギゴチナイ物に触れてみたい』という感情を抑えきれなくなってしまったのです。
私としてはかなりの思い入れをこめて買ったカメラなので『あばたもえくぼ』で、まともな話が出来るかどうか・・・。

 ご存知の方も多いでしょうがニコンFM3Aは21世紀になってから発売された、ニコンの伝統的設計によるマニュアルフォーカス1眼レフカメラです。いうまでも無く最大の特徴は『全速度域における機械式駆動と絞り優先AEのハイブリッドシャッター』を実現し、また少し地味ですがアクセサリーシューの接点が増やされ『外付けストロボ(失礼 スピードライトと言うべきでしたか)発光量の最適化機能』を追加したことです。
 F一桁機と異なり、適度に軽く、適度に小さく、適度に機能を絞ってあるカメラで、機械式シャッターのNewFM2や、これの兄弟機である電子式シャッターのFE2あたりと比べてもデザインや重量からスペックに至るまで、ほとんど一緒です(考古学的ニコン崇拝者の方には怒られちゃうかな?)。
 因みに2001年に発表された当時の大御所カメラ雑誌を紐解くと、ニコン側の開発担当者は『FM3AはNewFM2の後継機である』と断言しています。
こういったことも含めてですが、次のようなインプレッションになりました。

① 感触・質感
持ったときの感覚は、金属ボディーにシボ皮張りが好きな人にとっては確実に『シビレ』ます。素直に懐かしいのです。
プラスティック製のレバーやボタン類の質感云々を言う人もいますが、使っているうちに気にならなくなります。
Nikon』が『Nikon』になったっていいじゃアありませんか。『ニコン』とか『にこん』だったら私も嫌ですが。
同じマニュアル機でも、F3のように徹底的に人間工学を盛り込んだモデルと比べると、時代を遡ってしまったかのような錯覚さえ覚えます。
  全体に平面的で指掛かりが悪く、「ストラップを右手の人差し指と中指の股に挟み込み、その人差し指をシャッターレリーズボタンにのせ、中・薬・小指は突起のないボディー前面を、残る親指は予備角まで開いた『フィルム巻上げレバー』とボディーとの間に挟む。当然左手はレンズ鏡胴を支える。」という原点に返った持ち方を強要されるわけです。
  サマになる持ち方が出来るようになるまでには少し時間がかかるかも(ラ■カほどではないでしょうが)。


② 操作感
フィルム巻き上げレバーの操作は、『嬉し懐かし気持ちイー!』。
ニコンの開発ポリシーの中には『フィルムの最初と最後で巻き上げ感が変わってはダメ!』いうのもあるそうですが、そのためかどうか良くできていると思います。            
巻き上げ軸が回る音、巻き終わったときのクリック音etc.この良さに共感してくださる方は多い
のではないでしょうか。
ただし分割巻上げが出来ないのはホントに残念。リズムが取りにくいんです。
シャッターレリーズボタンはAFカメラになれている指にはちょっと重め。ストロークも長いので、ボ
タンを押し始めてからシャッターが切られる瞬間までに、何回か『おいッ!まだかよ!ピントがズレちまうよ!!』とカメラに囁くこともあります。
シャッター音はやはりデカい! 特にF3あたりに慣れている人にはかなり『安っぽい音』に聞こえる
かもしれません。手に伝わってくるバネの余韻に柔らかさが無いんです。販売店に並んでいるFM3Aをちょっといじくってみて、シャッターボタンを押した瞬間に『エッ?!』と思った人、結構いらっしゃるでしょう。ニコン側の見解としては『機械式シャッターで1/4000sec.を実現すると、このテの音になってしまう』のだそうです。
でも実際に写している時には気にならなくなるし、まあ好きにならないまでも慣れますよ。個人的には1/60sec.の時の音が好きです。
ファインダーについては新開発のスクリーンによって従来機より明るくなったそうですが、だからこそマニュアルピント合わせの生命線とも言える『見え具合』にお金をかけましょう。
このカメラには視度調節機構がないので、ピントあわせで疲れると言う方は、(出来ればニコンのサービスセンターがいいのですが)接眼補助レンズ(希望小売価格1,000円 税抜き)のチョイスを妥協なしでする事をお勧めします。結構『こんなもんでいいや!』で使ってしまう人いるんじゃないかなア。信頼できる人と相談しながら選んだ補助レンズをつけると、世界が変わります。ご参考までに、私がニコンサービスセンター(もちろん試させてくれるお店ならどこでもいいのですが)で数種類を付けてみた時に、−2、−3、−4の中で、若干強めだけどよく見える『ー3』を薦められました。その後は大変快調です。

③ 機能および機能性
MFカメラに1/4000sec.のシャッターは必要か?という意見に対して私の答えは、『有るに越したことは無い』です。これはストロボとのシンクロが1/250sec.まで有るのも同様です。
ある実験でFM3Aのシャッター速度を実測してみたら1/250sec.時の実測値は1/212sec.だったそうです。機械式でですよ! 市販品でですよ! すごいと思いませんか?
何を申し上げたいかというと、このシャッター設計の真の思想はハイスピード化に有るのではなくて、より高い(でも数字には表し難い)信頼性の確保だったのではないか ということなんです。
デジカメ開発に血道を上げている開発チームの傍らで、ギアとバネとコイルを組み合わせていたであろうニコンの開発者の『良く出来てんだろー このシャッター』と言う声が聞こえてきそうです。
敢えて絞り優先AEをつけたのはよく解釈すれば『挑戦の証』であろうし、俗物的にいえば『それなりの値段で売るための付加価値』なのでしょうね。便利ですけどね、やっぱり。
内臓露出計の指針式表示については『MFカメラはヤッパリこれでしょう』と言い切ってしまいましょう。(NewFM2をご愛用の皆さん、ごめんなさい)
意外と不評で、自分でも『なるほどナ』と思ったのは、露出補正ダイヤルのロックボタン位置の不便さです。露出補正ダイヤルのロックボタンについては、『FE2の時代に既に不評をかってたんだから』『せっかくAE付けたんだから』『そこまで頑なにならなくっていいから』等々。カメラの操作系がシンプルであるがゆえに不平を言いたくなります。
  
 私の独断によるFM3Aの総評としては、言い尽くされた言葉ではありますが

  『宣伝も商売もあまり上手でない、でもまじめな会社のまじめな人たちの手によって、こともあろうに21世紀に、出されるべくして出された、価値有るボディー』(ちょっと誉めすぎ?)

  とさせていただきます。

1.ニコンFM3Aについて
2.Aiニッコール45mm/F2.8Pについて
3.レンズとボディーの組み合わせについて

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筆者:NECOさん