Aiニッコール45mm/F2.8Pについて 『Aiニッコール45mm F2.8P』は、かのNEO氏も非常に早い時期からトピックスで触れていらっしゃるレンズです。 トピックス19で既に紹介され、さらにトピックス302でその基本スペックを他のレンズとの比較をまじえて発表されており、氏の情報収集力と先見性には頭が下がります。 このタイプのレンズは俗に『パンケーキレンズ』と呼ばれる所以は、カメラボディーに付けた状態のレンズが扁平かつ寸胴でパンケーキ(ホットケーキ)の様に見えるからですが、この実にうまい表現は海外では比較的古くからあるポピュラーなもののようです(元祖はやっぱりラ◎カの沈胴らしい)。 なおニコンはAi化する以前に『GNオートニッコール45mm/F2.8』というパンケーキレンズを発売していて、現在の中古市場でも高値を維持しています。 また製品の仕様面にご興味をお持ちの方は、下記のニコンのWebを参照してください。ここまで書くか?って言う位、細かく公開しています。 http://www.nikon-image.com/jpn/products/mf_nikkor/ai_45_f28p.htm しかしFM3Aと同じく、そのデビューは波乱に満ちたものであったようです。 シルバータイプは2001年7月3日、つまりボディーと同じ日に産声をあげたのに、ブラックタイプは同年10月4日生まれ。この時間差攻撃の余波か、今でも白黒のブチでお使いの方がいらっしゃるようです(有名な写真家「大西みつぐさん」のニコンF100なんかはいい例です・・・)。 因みに私のは黒/黒です。 そのインプレッションはというと・・・ レンズのお姿はまさに『パンケーキ!』。焦点距離の割に開放F値が2.8という事と、テッサー型の設計であることで前玉の直径が小さいため、FM3Aに付けた状態で見ると『カメラがおちょぼ口で笑っている』ようにも見えます。 専用のNCフィルターと専用フード、おまけに専用のフロントキャップとリアキャップ、更には専用のソフトケース(私はこのレンズを中古で買ったのですが、リアキャップとケースが付いていませんでした。)といった具合に、何もかもが『特別あつらえ』のレンズなんですが、特に専用のフードは秀逸です。まずこの値段のレンズに、あのニコンがフードをつけて売ることからして驚きなんですが、これが良く出来てるんです、実に。何故いままで誰も作らなかったんだろう?(中版カメラ用レンズの一部には良く似たものがありますが)と思うくらい説得力のあるカタチをしています。そしてこのフードを纏った瞬間に『パンケーキ』が『見事なフジツボ』に変身するのであります。このデザインをした人もすごいけれど、そのデザイン画や図面に承認印を押した人の勇気に拍手を送ります。ただしこのフードをフィルターねじ径の同じニッコール50mm/F1.4につけると、面白い格好にはなりますが『ケラレ』ますので、火遊びもほどほどに。 操作面からいうと、薄型でネジ山の数が少ないせいなのか、ヘリコイド(ピントリング)の回転は少し軽め。ほんのわずかな力加減ですぐにピントがズレてしまうので、少しばかり慣れが必要かもしれません。ゆえに一部のプロ(もしくは辛口評論家)が言っている『ピントリングと絞り環のローレット(ギザギザのこと)が同一形状でかつ段差が少ないので、誤動作しやすい』件に関してはある程度的を射ていると思います。 ものすごくプラスに考えれば、あの『ウエムラスペシャル』を作ったニコンだから、あの『アポロカメラ』を作ったニコンだから、極寒耐久性のハイスペックグリースを使っている。だから常温では柔らかいのかも(これ、ホントに勝手な想像ですから悪しからず)。 肝心な『写り』の方の話です。 私は素人なのでそれなりの表現しか出来ませんが、このレンズは円形絞りのお陰か、テッサー型の特徴なのか『ボケ』(特に夜の点光源)が立体的できれいです。この傾向は特にリバーサルフィルムを使って、かの名玉『AFニッコール50mm/F1.4D(多分MFも)』と撮り比べた場合に顕著で(この50mmは、特に絞り開放での撮影時のボケに独特のクセがあります)、ある写真家をして『休日なのにネクタイをしているような真面目さ』と言わしめた『硬め』の50mmに対して、この45mmにはなんというか『優しさのようなもの』を感じます。更にちょっとベテラン風に表現すれば『絞り開放から破綻無く安心して使え、周辺光量の落ち込みも若干有るが、目立たない』とでもなるのでしょうか。開放F値が2.8だから当たり前なんでしょうけど。 またある雑誌記事によると、『付属のNCフィルターをつけると、このレンズ固有のシアン(青色)傾向が補正されるはず』なのだそうですが、その真偽はわかりません。フィルムがこれだけ発達した今、敢えて論ずるべき問題でも無いように思います。 このAiニッコール45mm/F2.8は、でしゃばりもせず、でもするべき仕事はきちんとこなし、デザインにはいやみが無い。設計では相当苦労したはずなのに値段もほどほど(でもレンズって高いですよね、やっぱり)だと思います。 そこでこのパンケーキレンズの総評は、 『数字ばかりが性能じゃないのヨ!! と諭してくれる育ちのいい少し勝気なお嬢さん』 となりましょう(50mm/F1.4は♂、45mm/F2.8パンケーキは♀、どうもそんな気がしてなりません)。 NEO氏も以前書かれているように、撮影のシチュエイションによっては開放F値の小ささ(明るさ)に救われることが少なくありません。その意味でやはり50mmのF1.4(勿論MFのF1.2も)は偉大な存在だと思います。 しかし、小粋にそしておしゃれにキメて、でもいいのが撮れたら大伸ばしするなんていう使い方をしたい向きには45mm/F2.8はとてもいいレンズだと思います。 あなたが女性でも男性でも(そのいずれでも無い方でも)、好きな人の前で小型のボディーに小さなレンズを付けた一眼レフカメラをオーバーコートのポケットからスッと出して、さりげなくシャッターでも押した日にゃァ、運がよければ『イチコロ』ですよ。 『ねこ』なんかを気軽に撮るときなど、ほらカメラのお目々が小さいでしょ。そうっと近づいて友達になる時なんかは、このレンズで決まりですね。 1.ニコンFM3Aについて 筆者:NECOさん |