「いつまでもここにいる訳にいかねぇし、このままじゃ帰れーし。ま、俺もまだ死にたくねぇから用心して頑張るさ。それに、その魔王倒すってのも面白いかもな☆」

笑ってドアノブをひねり、開いた扉の向こうに身を滑り込ませた。階段を降りて行く足音がどんどん小さくなっていく。

「まったく・・、魔王相手に面白そうですって?とんでもないヤツね」

クックックッと笑いを漏らしながら扉を見つめる。りーなはひとしきり笑った後、何か思い付いたのか自分の荷物を持って窓を開けた。

「レイ−−−ル!!」

下を歩いていた男に思いきり叫ぶ。少しして、自分のことだと気づいたのか男が「ん?」とこちらを見上げた所に「パス!」と荷物を放り投げる。受けとめたのを確認して、部屋を出る。階段を降りてカウンターを横切り、大きく構えた扉を景気良く開くと、

荷物を両手で抱えただ呆然としている大助を目にとめる。リーナは大助の前に立ち荷物を取り上げて「やーごめんね、ありがとう」と笑った。大助はまだ呆然としている。

「私がお供してあげるわ、世間知らずさん♪」

はっと気づき、リーナの顔を見る。大助が何か言おうと口を開きかけるが、リーナがそれを遮った。

「私が護衛してあげるわよ。強いんだから、私。ね?」

そこまで言って、大助が何も言わないのを肯定ととったのか、「さぁー行こう。いざゆかん!」と元気良く先に行ってしまった。残された大助はしばしその後姿を見ていた。

「(そうだな…、コレがゲームだったらこれから何かあるだろうし、ここがもし世にいう『パラレルワールド』とかいう所でも、なんとかなるだろ)」

と、なんの根拠もないことを考える。

「(レイルか・・・うん、まだなれないけど、うじうじ考えててもどうにもならないだろ。しばらくはレイルとして、やってみるか!!)」

レイ−−ル、行くわよ−」

少し離れた所からリーナが呼びかける。

「ああ」

何かふっきれた顔を上げ、リーナのほうへ掛けていく。

この時大助の、レイル・グレイブとしての冒険が始まったのだった。