大助はぶちぶちと愚痴りながら、リーナの後ろを歩いていた。

いつまでもぶちぶちしていると、前を歩くリーナがぴたりと立ち止まった。「お?」慌てて大助も立ち止まるとリーナはきっと降りかえった。そして胸ぐらをつかみ鼻先まで顔を近づけると、

「だって・・・あんた、食べ過ぎなのよぉうっ!さっきいくらとられたと思ってんの?大体1/3よ?1/3!少しは遠慮しなさいよぉぉ!!」

がっくんがっくんと大助の首が勢い良くゆれる。

「でっ、わっ・・・おっやめ・・・・・・っ」

耳にキーンと響くリーナの声と、それと共に揺れる頭のおかげか大助は目を回していた。

「私だって久しぶりに懐が少しあったかくなったからおいしー物お腹いっっぱい食べたかったのに、…ってちょっと、人のはなし聞いてんのぉ!」

ぐきっ

首に走る痛みと共に大助は本格的に気を失った。

ズキンっとした痛み似大助は目を覚ました。ぼやける視界に天井が映った。そこから視線をずらすと自分の肩に白いシーツが見える。体を少しずらすとしたからぎしり、と音がする。どうやらベッド上にいるらしい。

再び目を閉じ眠りにつこうとしたとき、バンッと扉が開いた。

「あ、起きた?や、ごめんねぇ。どーも久しぶりの大金に舞い上がってたみたい∨」

「(リーナ?…そういやオレがね展のこいつのせいか?)」

申し訳なさそうに弱い笑みを顔に貼りつけ、ベットの横にある椅子に座った。顔色をうかがうようにのぞき込んできた。「どこか痛む?

すごい音してたけど・・」

「ッ・…へッもう大丈夫だっつーの。しっかし、こんな程度で気失うなんて情けねーな俺も」

がばっと勢い良く起きあがりさも平気だといわんばかりに体を動かして見せた。が、それが強がりだというのは誰の目からも明らか

で、目にはうっすら涙がにじんでいた。起きあがった反動なのか、思いのほか首に負担がかかりすごい激痛が走ったのだった。

しかし、ソレでリーナがほっとしたのも事実で、何となく責任逃れが出来たような気がしたのも事実だった。

「でも、あんた大丈夫って涙目になってんじゃないの」

「・・・(///)えーい、うるせい!だいじょーぶなの俺は!!もういくっ」

ベットを降りて椅子にかけてあった荷物をてに、扉の方へのそのそと歩いていく。

ふと、思い出したようにリーナが声をかけた。

「ねぇ、行くってどこ行くの?」

ぎくり、と肩を振るわせながら「えっ?」と振り向く。しばらくの沈黙の後、

「やっぱり、考えてなかったのね」

リーナは軽くため息をつくとずかずか大助の方へと近づいていき、びしぃっと鼻先に指を近づけると、

「じゃあ、あんた気の向くまま、風の吹くままとか言うわけ?このご時世にあてのない旅なんてカッコイイ事言ってるやつなんてほとんどいないわよ。あんたみたいな世間知らず、2時間で死んじゃうわよ?それに・・あてなんてあった方が良いに決まってるんだから」

「このご時世って、…なんかあんの?」

鼻先に突きつけられた指をどかしながら無邪気に尋ねる。尋ねられた方のリーナは目を点にしていたが、大助の無邪気さに負け呆れた様子で話し始めた。

「いい?今この世界はね、魔物なんつーもんがうじゃうじゃいて、その上、魔王なんつうけったいなものまでいるの。まあ魔物の親玉みたいなものね。でも、別に一歩歩けば遭遇!なぁんてことにはなんないけどね。やっぱり怖がってほとんどの人は町から出ないわね。ま、私の場合、命知らずの怖いもの知らず、すごいぞ・強いぞ・可愛いぞ。若さがキラリ☆の女戦死、リーナ・ファーリィだから良いんだけど」

「(何が良いんだろう・・?)」と思ってみても口には出さない。大助は天井を見上げてはぁ、と息を吐いた。「でも・・」といいかけて、手に持ったままだったマントと鎧を身に着けた。ドアノブに手をかけリーナのほうを振り返る。