「んまぁ!フランソワ−ズちゃん!心配したのよぉ。えぇっとり−ナさん?ありがとうございます。本当に!」

太目の女性が出てきて深深と頭を下げた。フランソワ−ズちゃんはますます切ない声を上げている。

「ささ、フランソワ−ズちゃん」女性が腕を上げてフランソワ−ズに近づいた。大助も(やっと開放される)と思い安心した。が、

「フギャ−!」と鳴いてますますのしかかってきた。

「あら、フランソワ−ズちゃんったら、この子に懐いちゃったのねぇ」

と言いながら、有無を言わさずフランソワ−ズをそのたくましい腕で抱きしめると、彼はすっかり諦めたのか「ん゛ー」とネコのような声

で鳴いた。

「本当にありがとう。ハイ、約束の300G」

リーナは無造作に出された金袋を両手で受け取り、ペコリと頭を下げ

「どうも。それじゃフランソワ−ズちゃん。バイバイ」軽く手を振り、屋敷から離れた。



「なぁ、あのフラン…ソワ−ズだっけ?あのオバサンのこと嫌がってたみたいだけど?」

屋敷からずいぶん離れてから、ずかずかと前を歩いていくリーナにふと声をかける。リーナはにっこり笑うと

「いーんじゃない?あんな金持ちの家で飼われてる、なんてそれだけでも十分幸せってものよ。それに私も懐があったかくなって幸

せ」

悪びれもなく言うと、先ほど受け取った金袋を軽く振って見せる。

大助はそんなリーナを遠巻きに呆れたような目で見た。そんな態度に気づいたのか、金袋を懐にしまいながら

「安心しなさいって。お礼はするからさ。おいしー所見つけてあんの♪」

「300Gのお礼が飯かよ・・・」独り言が聞こえていたのか「あら、嫌ならいいのよ」挑発するように告げる。

「な、何言ってんだよ。ありがたいって言ったのサァ」大助はあせってどこかぎこちなく、わざとらしいようなフォローを入れた。

リーナはその白々しい言葉に満足したのか、満面の笑みで通りの真中をずかずかと歩いて行った。目的地は食堂。



「ちょっとアンタ・・・・」

頬杖をついて定食をつつきながら、リーナが大助に声をかける。口にいっぱい食べ物を頬張ったまま「ふ?」と顔を上げるとこぶしが向

かってきた。勢いとは裏腹に軽くコンと額をこづくと、リー名はため息をついた。

「アンタねぇ、遠慮って言葉知らないの?」

ため息と共に出たり−ナの言葉を、ひょいっとかわし、「いいやないは。ふぉにょびゃ−い…ンッ、いいじゃないか。この場合遠慮なん
てするもんじゃないって」と、手羽を片手に軽い調子で言ってのける。

「300Gは大金だぜ?それに、家に帰ってからずっとゲームしてて何も食ってなかったからなー」

「は?」

「いやいや・・・」

と、とりあえずはぐらかしておく。

「大金ったってねぇ、そんなにばかばか食べたらすぐなくなっちゃうわよ」

リーナは深くため息をつくとレイルの持っていた手羽を奪い、二口でたいらげた。そして席を立ちそのままカウンターの方へと進んで行
き、会計を済ませる。

「うおわっ、ひょ、ンッちょっと待てって。卑怯だぞーっ!」

その様子を見ていた大助だったが、慌てて料理を呑み込み悠々と店を出ていくリーナの後を急いで追いかけた。