My preference...
— そういう、私の好みといえば…:
さてここまで書いてきて、ほかならぬ自分自身の好みを語らずにいるのはアンフェアというものだろう。
自分の好みを見せずして、なんぞ他人を批評出来ようか。
好みによってその人の性向や人となりが示唆されることだってある。
色々批判的なことを言っている割に、私は大抵のジャズトロンボニストは嫌いではない。勿論、二大巨匠のJ. J. Johnsonと Curtis Fullerに関してもだ。そこで、特に好きな人と嫌いな人を数人挙げるにとどまる。それ以外の人に関しては「まぁ、好き」と思って下さい。
まずは「とても」好きな人達:超絶技巧かつとにかくなめらか。
最大の特徴はくるくるとよく回るコンテンポラリーなフレーズ。
お友達はリッチーバイラーク?お互い持ち味を殺し合っているようにも思えることもあるのが残念だ。だが、基本的に志向するサウンドはよく似ているのだと思う。とにかくトロンボーンでは考えられないコンテンポラリーさである。音質はとにかくエッジが効いて軽め。
同系統のトロンボーンには Michael Davisがいる。
彼もまた別のテイスト(Woody Shaw一派の)のコンテンポラリージャズに根付いたフレージングを吹く。
鶏口となるも牛後となるなかれ、という言葉の人なのか、サイドマンとしての参加はそれほど多くなく、最近はアフリカンなテイストで不思議な楽器を集めた不思議としか言いようのないバンド形態での活動が多い。嫁はんがバイオリニスト(チェリストだったっけ?)で、ホラ貝を吹いたり、そういうの。
私が一番好きなのは"Fire and Ice"だったりする。スティービー・ワンダーのYou're the sunshine of my lifeとかやっているし。昔先輩のレコードをテープにダビングさせてもらいましたが、あれ、CD化されてるのかなあ。
Steve Turreのすばらしいところは、その音色だ。Conrad Herwigよりは低音の倍音が豊かで、いかにもトロンボーンといった低音に惹かれる。
同系統、というわけではないが、低い音程に行って返ってくるフレージングやコンテンポラリーなフレーズのブレンド具合は、Robin Eubanksがちょっと似ているかもしれない。
バリバリの白人なめらか系ですね。フレーズもメインストリーム直系の無難なものだし、これこそ私の言う「何も新しいことしてない人」の典型ですが、好きなんだからしようがない。なめらかで、とにかくのどごしがよい。
僕は高音があまり当たらないので、Hi-F以上の音が出てくるソロはコピーできませんけども。
同系統のトロンボーンとしてはCarl Fontanaがそんな感じかと思う。(本当はCarl Fontanaの好きなんですけれども、あんまりCDとか持ってないので)。Andy Martinとかも同系統かもしれない。
同様、非常になめらかな人。ただ、Bill Watrousのように速いフレーズをひけらかすことはあまりない。音色・アーティキュレーションともに、どちらかというと淡泊。Silky、と言っておこう。
特筆すべきは、この楽器に特有のベンドおよびグリッサンドの使い方が非常に上手いこと。ジャズトロンボーンって、「なにもトロンボーンでせんだっていいやん」的な「しんどい」ことをしたがる場合が多いのだが(Bopとか) 、Urbie Greenがいる限り、トロンボーンがなくなることはないだろう。
こういう風に吹きたいが、なかなかできるもんじゃないのだ。
Curtis Fuller:
そして、最後に。やはりこの人をはずすわけにはいきますまい。上の4人は正直自分がトロンボーン吹きであることから選んでいる面が強い(テクニックとか、音色とか)。だが、Curtis Fullerに関してだけはリスナーとしても好きかもしれん。また、作曲も意外と巧妙なんである。特に歌もの。「名盤」といえるものはすべてデビュー後の数年に限られ、その後落ちる一方なのが唯一残念な点である。個人的には"Four on the outside"が最も好き、かな。
こうしてみると、「白人系」、「なめらか」がキーワードのようだ。blowタイプはあまり好きではないかもしれないです。
さて、嫌いな人。ほんとはそんなに大嫌いな人はいないのだけれど。
Frank Rosolino:
どうもねぇ。結局出会いが悪かったのだけかも。ただ、上行系のフレーズでダブルタンギングっぽく聞こえる部分がどうもね、クセがあるように感じるんですが。
Rosolinoが好きというトロンボーンの人が多すぎることと、あと、ジャケがどれもださいという点もマイナスポイント。しかし実は決定的に嫌う理由もなく、昔嫌いだった人がRosolino好きだったというのが唯一の理由なのかもしれない。
ただ、ハイノート、それからハイノートに至るまでの上行系のフレーズは本当に凄い。トップレベルのボクサーが殆どノーモーションで出すパンチの様に、無駄がなく、速い。
顔がゲタみたいだから。あの顔を思い出すと紅茶がまずくなる。バカボ〜ンの極北の一人。
ベイシーのソリストとしてはいいんだと思うが、僕はコンボ中心で聴いているので、彼のコンボのアルバムに関してはあまり好きじゃないなあという感想です。あーでもBasieのバンドでやっているソロとか、練習しましたけどね。
実はLouis Armstrongもそうなんですけど、音のエッジが立ちすぎていて、時にBeepyに感じられるのがね。これはきっとマイクの性能以上に音が鳴っちゃって録りきれてないんだと思うんですが、われちゃっている。多分生で聴いたらもんのすごいんだろうと思うんですけれども。
Benny Green:
一回生の最初にコピーしたのがこの人のソロだった。う〜ん失敗。
また、困ったことに同名のピアニストがいる。しかもコンテンポラリーですっごく頭いい系。他パートの奴と喋るときに紛らわしくていけねぇわ。
「…違う違う、アホのほうのベニーグリーン」…。御免なさい。
でもFかBbかEbのキーしか吹けなさそうな雰囲気がある。
Hi BbからHi Dbあたりの気持ちいいグリッサンドなど、小気味よいのだが。
…嫌いには、あんまり理由は無いみたいだ。そして、これら嫌いにあげた人を私が本当に嫌いかというと、そうとは言い切れないところがジャズのおもしろさだ。
最近は楽器をとんと吹かなくなっているので、トロンボーンジャズのアルバムを聴かない私だが、トロンボーンらしいのを聴きたいなと思うと、まずベニーグリーンとかを取り上げてしまう。てことは、好きなのか。
好きなのかもしれない。
好きです。