チャーイ屋を出てから、寺院に入りその緻密に表現された無数の彫り物を今度は実際に、手で触りながら見て周り、写真を撮り、存分に拝観を楽しんだ。
ホテルに戻りシャワーを浴び、荷作りをしてチェックアウト。バス乗り場に行き、ブバネーシュワル行きのバスに乗りこんだ。僕の隣りには警官と名乗る男が足を広げて座り、僕の荷物、及び所持品をずっと怪しい目で眺めてるのだった。油断もスキもない男であった。それにしても乗り込んだバスは、今世紀最大最悪のバスといえるほどのおんぼろバスであって、目的地に着くまで計4回もエンジントラブルを起こし、本当に目的地までバラバラに分解しないで走れるのか?がんばれバス君!といったような、思わず応援せずにいられないようなものであった。途中、乗客も一緒になってバスを押したりするようなアクシデントもあり、そのおんぼろバスは1時間ちょっと遅れで「奇跡!まぐれ!」といった感じで目的地ブバネーシュワルに辿り着くことが出来た。
ブバネーシュワルはコナーラクとは比較にならないほどの都会で、なんとなく僕の住んでる町、堺を感じさせるものがあった。それにしてもうるさい街である。バスでへとへとになった僕は街のうるささにさらにイライラしながら、ホテルを探すことにした。しかしながら方角も、いま自分が立っている所もどこか分からないので、リクシャーのおやじに「ここはどこか?」と、地図を見せ聞いてみるが、「寺院に連れて行ってやるから乗れ!」と言ってくる。向こうも商売だから誘ってくるのは分かるが、こっちは疲れ果ててすぐにでも休みたいの!と思っているから余計に腹が立つ。
一件目に入ったホテル(ブバネーシュワルホテル)に決めようと思っていたんだけど、入ってみると部屋の窓ガラスがすべて黄色で、部屋にいるだけでも頭が変になってきそうで気持ち悪かったので、別のホテルをあたることにした。二件目(SWAGAT HOTEL)も妖しいことこの上なかったのだが、さっきより若干ましだったので決めることにした。とりあえずシャワーを浴び、汗を流すことにした。
さっぱりしたとこで、おなかも空いてきたし、オープンチケットであるから帰りの便もブッキングしとかないといけないし、街に出ることにした。財布を見てみると手持ちのお金も少なくなっていることに気づき銀行に行くが、「時間外だから明日来い」と冷たくあしらわれた。お金がないのでケチってエア・インディアのオフィスまで歩いていくことにしたが、思いのほか遠く、へとへとになった。オフィスに行って初めて気が付いたのだが、僕の乗るカルカッタからバンコク行きの便は週に1便しかなく、しかも運が悪いことに3月10日、17日共に満席のキャンセル待ちときた。僕は3月18日にバンコクで彼女と会わなければならないので、是が非でもこの飛行機に乗らなければならないのだ。とりあえず祈るような気持ちでキャンセル待ちの手続きをして、帰ることにした。
帰りはへとへとだったのでリクシャーで帰ることにした。ブバネーシュワルの駅前まで乗って、特にすることもないので駅でベンチに座ってボーっとしてた。隣りの椅子には金持ち風のおっさんが座っていて、しばらくすると靴磨きの子供を呼んで自分の靴を磨かせていた。まあ、これはよくある光景なのだがそこからが驚いた。磨き終わった後、おっさんは何が気に入らなかったのか、いきなりその子を足で蹴飛ばしたのである。子供はお金ももらわず、泣きながら走っていってどこかに行ってしまった。この光景を目の当たりにすると、さすがに胸が締め付けられそうになる。このおっさんには良心のかけらもないのか?これが今回のインド旅行で一番ヘコんだ出来事である。
ホテルに帰って部屋に一人でいても寂しくなるだけだったので、また部屋を出てロビーに行くと、なんとプリーのホテルでいつもテレビばかりボケーっと眺めていた、オーストリア人がいた。知っている人を見かけた嬉しさで思わず、「やあ久しぶり!僕のこと覚えてるかな?」と堰を切ったように話し出してしまった。彼もこの町にはうんざりしているらしく、今夜列車でマドラスに行くんだという。
とりあえず、飯でも食いに行こうとなり、近くの屋台にチョウメン(タイ風焼きそば)を食いに行った。食いながら色んな話をしていると、近くに日本人2人が通りかかったので彼らも加えて話をすることにした。
その後40分ほどしてオーストリア人が「俺、そろそろ行くわ」と言い出し、僕ら3人はまた店を変え、チキンカレーを食いに行きことにした。食べ終わってもまだ8時位だったので、ふたりのホテルに行くことにした。
1時間半ほどお邪魔させてもらってから自分の部屋に帰ることにした。部屋に帰り、日記を書いてると、突然誰かが部屋をノックしてきた。あけたらヤバイと思い、しばらく声を出さずにじっとしているとまたノックされた。「誰だよ?」と思い切って聞いてみると「ホテルのボーイだよ、部屋に入れてくれよ」と言ってきた。これは相当ヤバそうだったので、「今日は引き取ってくれ、部屋に入れることは出来ない」と断ってやった。しばらくすると、何も言わず足音だけ遠ざかっていったので、少し安心して部屋を少し開けて外の様子を窺ってみると、インド人が4,5人たむろしていて、こっちに気づきまた入ってこようとしたので、あわててドアを閉めた。油断もスキもないやつらである。
びくびくしながら、就寝。