ぴん☆けとりおの旅日記
第二話 長崎卒業旅行-前編-
初日の宿「シーボルト亭」は普通の民家だった。
民宿だから当たり前なのだが「長崎」「シーボルト」「〜亭」といった言葉のイメージに見事にだまされた。
夕食は冷めたコロッケだけだった。
「あんたら、もう一泊するんやね。」女将が言い放った。
「予約受付けの返信はがきには、看板だけで建物は写ってなかった」のをがっちゃんは思い出した。
これ以後彼は、宿予約を担当することはなかった。
二日目の宿は生まれて初めての「ユースホステル」だった。
出発の朝、「同年代の旅仲間」(女子二名)が出来た。
私がもう一人誘った「銀行内定の大脇さん」(男子)の話をすると、
「俺、聞いてへんでぇ〜〜〜。」
がっちゃんが顔をしかめた。
「地獄巡り」の後、普賢岳に登ることになった。
げんさんは革靴だった。途中で滑って登れなくなった。
「俺、麓(ふもと)で待ってるわ。」げんさんはさわやかに言い放った。
「そうかぁ。」がっちゃんは登り続けたそうだ。
「じゃぁ、麓で。」たまらず私はげんさんを追って山を下りた。
げんさんは「今にも泣き出しそうな顔で下りていた」様に思えた。
麓で私達は住所交換をして別れた。
(後編につづく)