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 光の使徒
  第一章 ヴァンブリア編


第一話「爆弾魔」

  1.
 夜の車道……その真ん中を、一人の男が歩いている。
 ロングコートを深めに被り、よたよたと歩を進める様は、飲酒者かとも思わせるが、その足取りは危ういものとは違っていた。
 何か不気味な……不思議な足取りである。
 男の容姿は細かくはわからない。180を超える身長と言う以外は、その長いコートに阻まれ、有力な情報は得られなかった。

 ふと前方から眩しいヘッドライトを全開にして急接近する車両があった。
 最近、人気が出てきている、四輪でわざわざ地面を蹴り進むタイプのスポーツカーだ。
 空中に車道が幾らでもあるこの時世に、地を走る車を駆るのは、裕福な人間か一部の特殊な趣味の人物か……何れかと言う代物だ。
 その車には、二人の人影があった。
 男と女……。調子の良い男に遊ばれているのか、女が自らか望んでかは知らないが、その二人はこの深夜にドライブを楽しんでいるようだった。

 歩行者の安全を全く無視した危険な走行で、その車がコートの男のすぐ真横を通り抜ける。
 コートの裾が車に軽く当たり、引っ張られるようにして、その男の身体は、大きく姿勢を乱した。
 彼の手にしていたものと思われる物体が空中に巻き上げられ、その一つが開けられていた車の窓から、その中へと偶然にも、飛び込んだ。
 轢き逃げかと思われる動作を遣って退けた車は、一回クラクションを鳴らしただけで、コートの男に気を止めた様子もなく、凄まじい速度で離れていった。
 片膝をついていたコートの男は、何事もなかったかのように、辺りに散らばった自分の荷物を拾い集めて、顔を軽く歪めた。人を軽蔑したような、不気味な表情へと……。
 すぐ後に激しい爆音が轟く……。彼がそちらの方へと首を回すと、その音のした方向には赤い光が広がっていた。
 彼は口元を歪め、満足そうな笑みを浮かべると、再び不気味な歩みで、その場から歩き出す。
 コートの男が確認した方向は、彼を撥ねた車が走り去っていった道の、その先であった。

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