■甘い旅行(仮)No.2■
「雑誌とかでは見た事あったけど、あの商店街のくじ引きにしてかなりの宿じゃね〜?」
宿を見るなりの千秋の発言。確かに商店街のくじ引きにしては良すぎる旅館だった。
高耶も券の裏側に書かれていた温泉宿の名前は知っているくらいだから相当高い旅館なのだろう。
あとで商店街で聞いた話によると、ここの温泉宿のオーナーと商店街のお偉いさんがどうやら知り合いで商店街の
活気付けに役立ててほしいと宿泊券を貰ったらしい。外見は和を重んじるような作りである。ふと昔を思い出させた。
「ま、それより早く行こーぜ、景虎。」
「って、おまえ自分の荷物くらい持ってけよ!!」
車のトランクから荷物を出しながら高耶が叫ぶ。千秋はくるっと振りかえると
「ここまで運転してきてやったんだから荷物くらい持ってきたってバチ当たらんと思うぞ?」
と言って先に歩き出してしまった。
ちっくしょ〜!!)と思いながらも高耶は二人分の荷物も持つととぼとぼと千秋の後を追った。
高耶達が案内された部屋は本館の最上階の部屋だった。旅館なので最上階と言っても5階であるが
窓から見える景色は最高である。しかも部屋は8畳間が二つに洗面所とトイレ、しまいには貸切の露天風呂が
付いている。普通に泊まったら1泊いくらなんだか考えただけで恐ろしくなる。
「何かございましたらお部屋備え付けの電話で呼び出してくださいませ。
お風呂は24時間いつでも入れますのでごゆっくりどうぞ。お食事は7時頃お持ち致します。それでは失礼します。」
案内してくれた30代半ばの女将が部屋を出ていく。薄紫の着物が似合う落ち着いた女性だった。
「にしてもすげー宿。この部屋露天風呂付きじゃん。」
千秋が座布団に座ってタバコに火を付けた。
「ホントすげーよな。ちょっと俺露天風呂見てくる。」
高耶は子供のようにはしゃいで露天風呂を見に行った。
ちらりと窓に視線を送るとそこからは宿と平行に流れる川と紅く染まった紅葉が風情ありげに見える。
(たまにはこういうのもいいもんだな)
千秋はなんとなく申し訳なくなってタバコの火を灰皿に押し付けた。
「千秋、千秋、すっげ〜!!」
露天風呂を見に行った高耶が嬉しそうに走りながら戻ってきた。
「はいはい、少し落ち着きなさい。落ち着くために茶入れて。」
千秋は笑いながら高耶にそう言った。
部屋に備え付けになっている浴衣に着替えしばらく日本茶を飲みながら雑談をする。
すると「お夕飯です」という声と共に中居さんが夕食を運んできてくれた。
松茸に栗、地元の川で捕れたという川魚に秋の食材を生かした豪勢な和食が出てきた。
「すっげ〜。」
高耶が関心の声を出す。温泉に付いてから高耶は「凄い」を連発していた。
いちいち食事を観察してはこれどうやって作るんだ?今度家で作ってみようかな?などと独り言を
言いながら嬉しそうに食べている。ちょうど最後の一品に手を付けた時、
「なあ千秋〜飯食ったから風呂入ってきていい?」
高耶はまるで子供が親に「あれしていい?これしていい?」と聞くような態度でたずねてくる。
そんな普段は見せない高耶の態度に千秋は思わず笑ってしまった。
「はいよっ、ずーっと入ってゆでタコにでもなってくれ。」
高耶は「何笑ってるんだよ」と言いながらも残りの一品をたいらげると千秋にもう一杯お茶を入れてやると
さっさと露天風呂へ行く支度をはじめた。
小出しUP第二段いかがでしたでしょうか?(笑)
まだ何も進んでない〜って感じですね。これからお風呂シーンです。フフ(壊)
今回は高耶がいかにはしゃいでるかがポイントです。
私の書くちーたかって基本的に高耶が暗いのが多いと思って(落ち込んでるとか、淋しいとかばっかり・・)
今回は明るくなってもらいました。
シリアス調なちーたかもいいけどポップな感じもいいかと。猫がじゃれあうようなそんなお話が書けたら
いいんだけどやっぱり難しいですね。いつか書けるといいなぁ。
次のUPは来週頃を予定♪残りあと2回ってかんじかなっ。
2001.9.20 貴月ゆあ