甘い旅行(仮)No.3

 

 星が散りばめられた夜空を眺めながら入る風呂は最高だった。他のお客が入ってこない為に心も落ち着く。
 目を閉じると宿の隣を流れる川の音がやさしく高耶を包み込んだ。澄んだ水の音である。

 高耶は湯船につかりながら足をばたつかせた。お湯が波を打って湯船から溢れていく。
 そんなお湯を目で追っていたら目が何か肌色なものを捉えた。

 (何だ?)

 よく目を凝らして見るとそれは人間の足だった。

 (足?)

 そのままゆっくりと目線を上へ移すと……そこには千秋がいた。

 「な、なんで入って来るんだよ!」

 高耶はお湯の中で後ずさりながら真っ赤になっている。

 「何でって風呂に入っちゃ悪いか?」

 千秋は髪を結って腰にはピンクのタオルをまいている。

 (なんでこいつピンクが似合うんだよ…)

 千秋は軽く湯をかぶって湯船に入ってきた。湯船は4,5人が入れる大きさなので大人2人が入ったところで
 何も問題ない。高耶が後ずさっていってのでちょうど四角い湯船の角と角にお互いいるというなんとも奇妙な光景だ。
 高耶は外の景色を見ながら持ってきたタオルを頭の上に乗せていると

 「綺麗だな。」

 千秋が突然空を見上げてつぶやいた。それに気が付いた高耶も空を見上げる。
 確かにそこには大小様々な星が夜空のキャンパスに散りばめられている。
 まるで黒い紙の上に宝石箱をぶちまけたような感じだ。都会では見る事のできない綺麗な星空である。

 そのまま二人で星を見ていたが、千秋は飽きたのか湯船を出るとシャワーのの前に座って頭からシャワーを浴びる。
 少し長い髪がぬれていつもの千秋じゃないみたいだ。シャンプーを手にとってワシャワシャと洗い始める。
 高耶はそんな千秋の後姿を湯船の淵に顔を乗せてじーっと見ていた。

 「そんなに見つめないでくれる?」

 千秋が泡だらけの頭のままでこちらを振り返る。高耶ははっと我に返って

 「見てねーよ」

 と答えたが実際見とれてしまっていた。高耶が明後日の方向を向いて頬に手を当てる。
 温泉につかっているせいもあるだろうが、心なしか体が熱い。

 「なぁ、景虎。」

 「何だよ」

 自分がドキドキしてるのを悟られないように返事をする。勿論顔は合わせない。
 千秋はシャワーを浴びながら話を続けた。

 「覚えてるか?」

 不意にそんな事を言われても何の事だかわからない。
 高耶の頭にはクエスションマークがポンと浮かぶだけである。

 「何を?」

 「過去のコト。」

 「いつ?」

 目を伏せて記憶を辿る。全てを覚えているわけではないけれど、途切れ途切れの色々な記憶が走馬灯のように
 駆け巡る。楽しかった時間、辛かった時間。どっちの方が多いかと問われたらやっぱり辛かった時間の方が多い
 ように感じるがそれも全て過去の事。時間が過ぎてしまえばそれも思い出へと変化していく。
 その出来事をいつか笑いながら話せたらその瞬間からその出来事は自分の思い出へと変わるのだ。

 「いつだったかなぁ、俺がお前に告白したの覚えてる?」

 「………」

 「あん時はさ〜ひょっとしたらこれが最後かもと思って言っちまったんだよ。って覚えちゃいないか。」

 「そんな事も…あった…かな。」

 首をかしげて誤魔化し顔で千秋を見ているとだんだんと千秋が近づいてきた。
 無防備な顔もまたかわいい。

 「しよっか?」

 「何を?」

 「エッチ。」

 「何言ってんだよ!」

 「遠慮しなくてもいいんだぜ?」

 「遠慮なんかするか!」

 「そう?でも嫌がられると人間ってやりたくなるんだよねぇ。」

 と言うと千秋が腕を伸ばして高耶を引っ張った。
 抵抗を見せた高耶だったが抵抗も虚しく千秋に抱き寄せられていた。

 「そんなに嫌がらないでくれる?それともホンキで嫌?嫌なら逃げていいぜ?」

 と言って千秋は高耶にキスをした。高耶も別に千秋が嫌いなわけじゃない、いや、むしろ好きなのだが
 面と向かって気持ちをぶつけられると恥ずかしい。

 心拍数が異常なくらいに上がっていく。口から心臓が飛び出しそうというのはまさにこういうことを言うのだろう。
 優しいキスと同時に千秋の手が段々と首、胸とどんどん下がっていく。
 そしてお湯の中で敏感になっている部分をそっと掴んだ。

 「もうこんなじゃん。気持ち良くしてやるから力抜いてな。」

 千秋が指の腹で先端をやさしく撫で回す。微妙なタッチの愛撫に声が出そうになる。

 「誰も来ないんだから声出したって平気だぜ?」

 耳元で千秋がささやく。そっと耳に息を吹きかけられて高耶の理性も限界値を超えた。

to be continued

 


           ちょっと時間が空いてのUPとなってしまいました。(汗)
           い、いかがでしょう?久しぶりに色々描写が直接的なお話なのでヒヤヒヤものです。年に何度かこういう話が
           突発的に書きたくなるんですよね〜。このお話も突発的に書きたくなって書き始めたものです。

           千秋が高耶に告白ってのは全くの私のオリジナルって言うか想像です。(当たり前だ〜)
           個人的に千秋の高耶に対する愛情ってきっとあったと思うんですよ。それがどういう種類の愛かは別として。
           直江とはまた別の愛情が千秋にはきっとある!と貴月は勝手に解釈してそんな事を千秋に言わせてみました。
           愛と友情の間で揺れる恋心みたいなのっていいですよね〜。(オイオイ/苦笑)
           機会があれば、そんなお話も書いてみたいものです。

 

           さて、次回UPでいよいよラスト。
           UPはいつになるかな・・・・・・・・・・。
(だって恥ずかしいんだもん。/笑)

 

2001.10.8  貴月ゆあ

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