第6章
「縛られた野獣」

男の心は飢えていた。
その男・・・坂本竜彦はアメリカの刑務所にいた。
しかし彼はそこにも東京と同じ退屈な空気を感じていた。
そして、そこにいる住人達は腹立たしいことにその退屈な空気を楽しんでいるようだった。
「ここには獣はいないな。」
竜彦は虚空を見上げてそうつぶやいた。

ちょうど3日前・・・
竜彦はこれまでにない敵、熊と戦い、それをころした。
そしてはじめて戦いの中に死を実感した。
しかし同時にこれまでにない充実感を得た。
それでもなお「もっと強い奴と戦いてえ。」という気持ちがふくらんできた。
だからこそ竜彦はさらなるたたかいを求めて刑務所に入ったのである。
「府抜けどもを殺しても意味はねぇ。」
彼はまた、退屈と空しさに殺されそうになっていた。
その時、新しい住人がその部屋に入ってきた。

次回「野獣とペルソナ」に続く。