第3章「野獣の叫び」

きがつくと竜彦はブラジルにいた。
どうやらデパートの従業員が竜彦の入っていた箱と日本制ワイドTVの入っていた箱とを間違えたらしいのである。
このミスにはワイドテレビ注文したフラジル人、ホセ=ロドリゴさんもおどろいたが、なにより竜彦が驚いた。
とりあえず、混乱するホセの顔面を殴り飛ばし、その場から逃げ去った。しかし金もなにもない竜彦は途方にくれた。
「とりあえず金がいるな。」
彼はそうつぶやくと、何かを求めてさまよった。この町、リオはカーニバルの真っ最中だった。陽気な町並みの中で竜彦は一人苦悶の表情を浮かべて歩いていた。ふと前をみると、そこには異様な人だかりができていた。
「おれにかてるやつはいねぇのか!?いねぇだろうな!!」
人だかりの中で一人の筋肉質の男がさけんでいた。
「あれはどういうことなんだ?」
竜彦は回りの男に尋ねた。
「あいつに喧嘩で勝てたら一〇〇万ペソもらえるんだとよ」
「なるほど、そいつはおもしれぇ。」
竜彦はほくそ笑みながらそうつぶやいた。
その笑顔はまるで金をもらう手段をみつけたことのよろこびよりも強い敵に出会えたことの喜びに満ちあふれているようであった。

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