My first friend

魔法王国コヴォマカのはずれにある村。
そこの村に、精霊の見える不思議な力を持つ少年が居た。
だが、普通の者には見る事ができない精霊。
少年が精霊と話している様子を一人の子供が見て以来、子供達からは仲間外れにされた。それだけではなく、村の大人達までもが、少年を嫌い、『嘘つき』や『悪魔』と罵った。
そして……今、泉の側で膝を抱えこんでいる少年が、不思議な力を持つ少年 バジル=スフィアードだった。
「何で信じてくれないのかなぁ…?」
『仕方の無いのー。人間は自らの目で見えるモノしか信じないのー。』
「でもっ!!」
『これは仕方のないことなのー。
それに今日はもう帰った方が良いのー。』
「……うん。わかった。」
『また明日お話しようなのー。』
「うん…。バイバイ、エア。」
バジルは帽子を治すと、エアに別れを言って自分の家へと駆け出した。



翌日になり、バジルがいつもの様に泉へと来ると、そこには居る筈のエアが居なかった。キョロキョロと辺りを見回してみても、居る気配が全くない。
「おい!!!」
「っ?!」
バジルはおそるおそる後ろを振り返る。
そこに居たのは、自分を一番初めに虐めた少年だった。
「ど…どうしたの…?カップくん…。」
「どうしたじゃねーよ!今からココは俺の場所だ!!
お前なんか出てけ!!!!」
「え…?い、嫌だよ!僕が一番初めにココを見つけたんだから!」
「うるせぇ!やっちゃえ!!!!!」
カップと呼ばれた少年がそう叫ぶと、茂みから仲間と思われる子供達が出てきた。
バジルはそこからただ…逃げる事しかできなかった。


「なんでよぅ…っ」
やっとの思いで逃げて来たが、嬉しくはない。
せっかく自分が見つけたとっておきの場所をとられては、良い気分は決したしない。バジルは人気の無い場所で泣き始めた。
バジルは何やら騒がしい物音や、人の声で目が覚めた。
辺りは暗く、もうすでに日は沈んでしまっていた。
キョロキョロと辺りを見回すと、綺麗な車が止まっていた。
あんな物は村長でも持って居ない。
では…誰の…?
そう考えながらじっと車を見ていると、ドアが開き、一人の少女が出てきた。
少女の顔は見えないが、とても整っているのだろう。周りの者が頬を染めている。
そのまま少女をじーっと見ていると、少女がこちらを振り向き、目があった。
驚きのあまり、そのまま視線を外せずに居ると、少女が微笑んだ。
バジルは頬が赤くなるのを感じた。
恥ずかしくなり、俯くとそこには少女の姿は無かった。



草原に吹く優しい風に身を任せていると音がした。

ぱき…

振り向くと、昨日見た少女がこちらを心配そうな顔で見ていた。
「ねぇ…どうかしたの?」
「え…?」
「あ、私は、ラズベリー。ラズで良いから。貴方は?」
「バジ、ル…………。」
「ねぇ…バジル。私じゃ…なにも出来ないけど、ね?聞く事はできるよ?
辛いことや、悲しい事、苦しい事…。話せば…すっきりするよ?」
その言葉が、バジルの心に染みわたった。
バジルは話した。自分が村でどう言うあつかいを受けているか、なんと呼ばれているかを…。
ラズは、嫌な顔を一つもしず、真剣に聞いてくれた。
それが嬉しくて、たくさん話した。
気が付けば、もう日は落ちていた。
バジルがまた…会える?と聞くと、ラズはうん…と静かに頷いた。
それから一週間の間、ラズとバジルは毎日会い、朝早くに会って日が沈むまで話たり、遊んだ。
だが…幸せは長く続かなかった。
「ねぇ…。バジル。私、ね?
もう、会えないの。」
「え?ど…どう言う意味???」
ラズはバジルの様子の渋面を作ると、話し始める。
「…今日で、お別れなの。
後…ね?これから、一ヶ月後、老紳士が貴方を訪ねて来る…。
その人は、貴方の運命を変える人よ。だから…その人の話を良く聞いて、よく考えて判断じてね。」
「う、うん…。」
バジルが頷くのを見ると、にっこりと笑みを浮かべた。
「じゃあ…バジル、いつか、会える日まで…また、ね?」
「うん!またね!」
それ以来、ラズを見る事を無かった。
ラズの言った通り、一ヶ月後に老紳士が訪ねてきた。
老紳士はバジルが魔法使いになる素質がある。と言った。
だが、その為には魔法学校へ行く必要があると言われ、両親へ相談すると、両親は「貴方が望むならば、行きなさい。」と、バジルに力強く言った。
魔法学校に来てから…八年も経った。
いつもこの時期なると、ラズを強く思う。
彼女はどこに居るか。彼女はなにをしているか…そう考えてしまう。
優しく吹いてくる風に身を任していると…木の枝を踏む音が聞こえた。

ぱき…

バジルがまさか…と思いながら、音のした方を見ると…
「あ…。」
「ねぇ、なにかあったの?」
そこには、優しく微笑むラズが居た。
「私じゃ…なにも出来ないけど、ね?聞く事はできるよ?
辛いことや、悲しい事、苦しい事…。話せば…すっきりするよ?」
初めて会った時と同じ言葉を言うラズ。
その様子に呆然とするバジル。
「お久しぶり、バジル。
また…会えたわね。」
「お久しぶり…ラズ…。
会えて…嬉しいよ。」

風が、二人の再会を祝福するかのように吹いた———。







Fin

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登録日 :   2002年08月24日 15時32分38秒
更新日 :   

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