ARE YOU READY?

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「なんか雰囲気変わったと思わない?」
 不意の上原多香子の言葉に、島袋寛子は椅子ごとくるりと振り返り、小首を傾げた。
「いきなり、何?」
 シャープペンシルを口元でノックすると、ベッドの上でこちらを見ている多香子と視線を合わせる。
「だーかーらー絵理と仁絵ちゃん」
「あの2人はいつもああいう感じじゃん」
 あっさりと答えると、寛子は再び机に向かった。その態度に、多香子はむぅっとなる。
 寛子はこういうところは正直な事を言えば鈍感である。だからこそ、仁絵も寛子には何も言ってないのだろう。
 でも、もし、あの2人がどうこうなっていたら、寛子に話をしてもいいが、それが自分の勘違いだったら………仁絵に悪い。
「--------もういいよ」
「多香?」
 吐き捨てるような多香子の言葉に、寛子はやっと腰を上げた。静かに歩み寄って来ると、多香子の頬に指を伸ばす。
「ごめん、怒った?」
「別に怒ってないよ」
「ほんとに?」
 こういうときの寛子は、とても可愛い。だから、ちょっとやな事があっても、許せてしまうのだ。
「ほんとに」
 頬を包み込む手にそっと自分の手を重ねると、多香子は小さく頷いた。それに、寛子はほっと息をつく。
「なら………いいけど」
 そのまま、こつんと額を合わせる。
 こういうところも、大好きだなぁ。
 多香子はそう思うと、ちゅっと軽くキスをした。それに寛子は「うわぁ」と身を離す。
「なんだよ〜〜」
 過剰な反応に、多香子はむぅっとなる。
「いや………いや別に………」
 ごにょごにょと呟く寛子をぐいっと引き寄せ、ベッドに倒す。
「こ………こらっ!多香っ!」
 宿題やってるんだから〜〜〜〜。
 その叫びは無視しといて、寛子の上にのしかかると、多香子は小さく告げた。
「好きだよ、寛子」
 その言葉に、寛子は小さく呻いた。そして、多香子の首筋をきゅっと引き寄せる。
--------判ってるのか、こいつ?
 もう、あれから何度、自分の中の衝動を抑えた事か。正直、自分がここまでスケベでやらしいなんて、思いもしなかった。--------強引にでれない自分が、とても悲しい。
「全く………」
 やれやれと息をついた寛子に、多香子は更にむっとする。
「なによぅ?」
「なんでもない!」
 寛子は多香子の唇にそっと唇を押し当てると、心で小さく溜息をついた。




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