promise


 胸元をはだき、唇でその先端を弄ぶ。それには、すすり泣くような喘ぎが戻ってくる。
『ヒ………ロ………』
 心に響く声。それだけで判る。彼女が何を欲してるのか。
「タカ………」
 脇腹を指の腹でなぞると、びくりと身を震わせた。
 くすぐったいわけじゃない………普通だったら、そう思うのに。身体の中のスイッチが、どこかで切り替わったみたいになっている。
 背中とベッドの間に腕を差し込み、上半身を起こさせる。そして、肩にかかった服を、はらりと落とした。
 ふるり。
 寒いわけではない、どちらかと言えば羞恥の方で。————生まれたままの姿を、他人に見せるのは、初めてだったから。
 思わず隠そうとする両腕を、ヒロはそっと奪った。そして、呟く。
「何で隠すの?」
『………だって』
 恥ずかしいよ。
 こちらを見上げる瞳に、心臓を打ち抜かれる。ヒロは困ったように溜め息をつくと、両腕を拘束したまま、そっと頬に唇を当てる。そのまま、耳たぶへと唇を移動させながら、甘く囁いた。
「何で、綺麗だよ?」
 だから、もっと………もっと見せて。
 耳たぶを嬲りながら、囁かれる。もう、それだけで。
 タカは細く、長い息を吐いた。そのため息を奪うように、唇を奪う。
「………好き、だよ」
 唇が離れる度、囁かれる。熱くて甘い囁き。ヒロは、タカの身体を大切そうに抱きかかえると、再びベッドに横たえた。
「————恥ずかしいんだったら」
 きゅっと瞑った瞼に口づけながら、ヒロは自らの衣服をじれったそうに剥ぎ取った。そして、タカの上に重なる。
 心地よい、感覚。どんなに質のいい毛皮でも表現できないだろう、その感触。
「————これで、いい?」
 初めて、人の重みを全身で感じる。愛しい人の重みを。それは、こんなにも心地よいという事を、知る。
「タカ?」
 タカはそっと目を開くと、その頬を両手で包み込んだ。静かに、笑む。
『………好きだよ、ヒロ』
 そんな嬉しいことを、そんな色っぽい表情で言われたら………。
 ヒロは小さく頷くと、導かれるまま、その唇を奪った。


 貪るように、相手の口内を犯す。その舌に翻弄され、意識が飛びそうになる。それと共に、胸元を苛める指先。少しずつ、でも、確実にタカを追いつめてゆく。
 もっと………もっと、あたしを感じて。
 心で囁きながら、ヒロは愛撫の手を休めようともしない。唇は首筋を辿り、鎖骨をちらりと舐めた。
『んっ』
「………気持ち、いいの?」
 思わず挙がる声に、タカはふるふると首を振った。ヒロは口元だけで微笑むと、
「………我慢しなくて、いいんだよ?」
 浮かび上がる鎖骨に舌を這わせながら、囁く。びくりと跳ね上がる、腰。
『………ヒロぉ』
 情けなさそうな声。それを振り払うように、再び胸元に顔を移動させた。赤く色付いた先端を避けるよう、周囲を舌先でなぞる。
『んぁっ』
 焦らされている感覚。狂おしい程、思うこと。それは………、
『………って』
「ん?」
『————もっと………触って』
 髪に指を差し込みながら、タカは甘えた嬌声で囁いた。
 ぞくり。
 思わず背筋が震えた。

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