ダルマさんが


ダルマさんが延びをした、手をいっぱい延ばして

そして遂にはぎこちなくやっとの思いで立ち上がる事までしたんです

そう、足をいっぱいに延ばして、ヨッコラショッと

小鳥のさえずりが跳ね回っていた、それは春の事でした


草や木が

もう草や木の名前なんか、とっくに忘れてしまっていたのだけれど

草や木が

すべてが芽をだし息づき、はねまわる生命があふれ

手にあまる程なんです

威風堂々としてなきゃいけない太陽まで

ぴょんぴょん跳ね回っていたんだもの


春のそよ風が、ただダルマさんの頬を

おそるおそる逃げ出すように、さわって行ったのです

そりゃ

ダルマさんはもう真冬のオオカミみたいな顔をしていたんだから

でも春のそよ風はみんなの頬を優しく撫でて行かなけりゃ、、、、

怖いけど、あんた義務ってもんなんだよ


その時、その時なんだ!

ダルマさんが伸びをした

まるですべての物を吸い込むみたいに

いっぱい手を足を延ばして

春の空気を、身体のすみずみまで吸い込んだんです


それからバカだから、本当にバカとしか言い様がない

ぴょんと飛び跳ねたんだ

準備体操でもやってからってのが常識ってもんだ


ぴょん、コロン

案の定ひっくり返っちまった

ぴょん、コロン ぴょん、コロン ぴょん、コロン


その度にこわばっていた顔の筋肉がほころび

ニコッ


八回目にはうまくなってぴょんぴょん ぴょんぴょん

だから七転八起なんて言うんだなあ、これが

あとはもう気狂いみたいにぴょんぴょん飛び回っていたんです

冬の眠りからさめたカエルみたいに


春のそよ風ももう、おそるおそるじゃなく

まるで友達みたいに一緒に、、、、


あれ? ダルマさんが

春のそよ風になってしまった!



丹正雅晴


これが始まり



思いつくままに

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