[▼さんぽのすすめ▲]  
*映画勘*近作観想  2003/07/07

[五十音順]

あ/ 運動靴と赤い金魚 
か/ 風が吹くまま カンダハール ギャッベ グレーマンズ・ジャーニー 
さ/ サイクリスト 少年と砂漠のカフェ スプリング 
た/ タラネ−15歳  チャドルと生きる テヘラン悪ガキ日記 
な/ ナヴィの恋 
は/ バダック パンと植木鉢 
ま・や/  
ら・わ/ りんご 

運動靴と赤い金魚

(原題:Bacheha-Ye Aseman / 英題:Children Of Heaven)
●1997年イラン/カラー/1時間28分/モノラル/ヴィスタサイズ(1:1.66)
●監督・脚本:マジッド・マジディ

◯出演/
アリ:ミル=ファロク・ハシェミアン
(MIR FARROKH HASHEMIAN )
ザーラ:バハレ・セッデキ(BAHARE SEDDIQI )
アリの父:アミル・ナージ(AMIR NAJI)

ミラマックス・フィルムズ提供/児童青少年知育協会作品
日本版字幕:小田代和子、ショーレ・ゴルパリアン
ノベライズ:角川書店
提供:アスミック・エース エンタテインメント、フジテレビジョン
配給:エース ピクチャーズ

公式サイト

可愛くて面白くてキュンてする。
うまいなあ、やられたなーと思ってしまう。

冒頭から靴屋の音が真っ暗なスクリーンから流れてくる。
それは妹の大切な靴。
しかしその帰り、アリは果物屋に靴を置き忘れ、それはゴミと一緒に持って行かれてしまうのだった。

特出してるのはストーリーテリングの上手さ、演出の豊かさ。
ストップモーションが苦手な私でもウルッとする。
でも一番はキャストがとてもいい顔をしていることだ。
アリの涙ぐんだ顔に嘘がないことがわかる。フィクションなのに。
妹のザーラの華のような笑顔にも惹かれて、こちらも嬉しくなる。
そして素人ながら名優ぶりを顕してるのはアリの父親役ナージだろう。

また、イランの路地や細かな生活ぶりがとても興味深い。
家族の絆に胸が暖まるのは万国共通なんだろうな。

映像美の極みはやはり、邦題の由来であろうラストシーンかな。
これにもまた、キュンとする。

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風が吹くまま

●1999年・フランス=イラン合作・カラー・35ミリ・ヴィスタサイズ・1時間58分・モノラル
●監督+脚本+編集/アッバス・キアロスタミ
原案/マハムード・アイェデイン
撮影/マハムード・カラリ
録音/ジャハンギール・ミルシェカリ
助監督/バフマン・ゴバディ
音楽/ペイマン・ヤズダニアン
◯出演/ベーザード・ドーラニー、ファザード・ソラビ、シアダレ村、シャプラハード村、カンドゥーレ村の人々
●制作/<MK2プロダクション>マリン・カーミッツ(フランス)
 アッバス・キアロスタミ(イラン)
●配給/ユーロスペース
■日本語字幕/石田泰子

長い長いくねくね道を走る車が山すそを進んでいく。
一面の麦畑を越えて、段々に連なる白い壁の村に近づいてゆく。
何かがあると期待して行ったのに何もなかったら、なんて損をしたんだと思うだろう。

TVディレクターのベーザードは、映画の初めからこんな風に出鼻をくじかれる。
そのシアダレ村に来たのは、葬儀に関するこの地方の変わった風習を撮影するためだった。
ちょうど病の床についている老人がいると聞いてかけつけるが、老人の容態はよくなるばかり・・・。

ベーザードの案内役の少年、ファザードと仲良くなっていくベーザードがなんか良い。
とても素直に気持ちを顔に表して
撮影ができないために色々と村を歩き回って話をするんだけど、みんな一癖ある人達でおもしろい。
携帯電話を受けるために見晴らしのいい丘に行かなくてはならないのだが、そこで出会う井戸掘り男は声だけしか見せないのにとても印象的で惹かれる。
お茶屋のおばちゃんとか、井戸掘り男の彼女とか、お向かいの部屋の奥さんみたいな、女達が元気で気持ちいい。
撮影待ちでぐだぐだしているTVクルーと対照的なのだ。
いたるところに細やかな描写があって、日常がすごくきれいに感じる。
のんびりとした、でも強かなその空気が愛しい。

ともすると、ただ退屈な田舎町が舞台の映画だが、最後にとても劇的な転換を見せる。
徐々に進行していたものに、初めて観客は気づかされる。
それはベーザードの内面の変化だ。
物珍しさで撮影に来た自分たちの行為に対する気持ちの変化。
死の床にあるものへの尊厳のこと。
生きること、日常を暮らすこと、そういう当たり前に在ることへの再認識のような、
意識の下の方へ入っていくような感覚。
ドキュメンタリー、あるいは映画の在り方を監督自身が問うような、そんなラストシーンである。

このキアロスタミ監督は「友だちのうちはどこ?」などの作品で有名なイラン出身の大御所である。世界的な評価も注目もとても高い。
私がイランの映画に惹かれるようになった一番はじめの、きっかけの人だ。
演出されたドキュメンタリーというような、今日のイラン映画の代表的な手法を確立した人だと思う。
日常を映しながら、その奥の根元を探る。
そんな人だと感じる。
たくさんある彼の映画を全て観たいけど、日本では無理かなあ…。

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カンダハール

(原題:kandahar)
●2001年/イラン=フランス合作/カラー/モノラル/85min(4巻)/ビスタ(1:1.85)
●監督・脚本・編集:モフセン・マフマルバフ
撮影:エブラヒム・ガフーリ
音楽:モハマド・ レザ・ダルビシ
録音:べ一ルーズ・シャハマト 、カーウェ・モインファール
助監督:M・ミルタルナスブ、カーウェ・モインファール
撮影助手:ハサン・アミニ、ハシェム・ゲラミ
スチール:M・R・シャリフィー
制作担当:シャマック・アラゲバンド
制作助手:アッバス・サグリサズ
製作:マフマルバフ・フィルム・ハウス(イラン)、バック・フィルムズ(フランス)

◯出演/ニルファー・パズィラ/ハッサン・タイタイ/サドゥー・ティモリー/ハヤトラ・ハキミ

●宣伝/宣伝協力/宣伝デザイン:ムヴィオラ/チャンネルアジア/nix graphics
●配給:オフィスサンマルサン

太陽からも見放されたのか、それとも忌々しい光を放ち続ける太陽からの救いなのか
アフガニスタンに20世紀最後の日食が近づいている。

見事なダイヤモンドリングから映画は始まる。
しかしそれは宝石ではない。
地雷で足を失い、アフガニスタンに独り暮らす妹から、『20世紀最後の皆既日食の日自殺する』という手紙を受け取ったナファス。
妹と父を残して亡命した彼女はジャーナリストとして母国アフガニスタンに入ることを決意する。
妹の住むカンダハールは遠く、その道は危険に満ちている。
長年の内戦、軍事政権の圧力…荒れ果てた故郷をひとり進んでいく。
日食まではあと3日。彼女の希望は妹に届くだろうか。

一番印象的なのはナファスを演じたニルファー・パズィラの強い瞳。
どんな状況に出逢っても自身の信条を屈しない。
そして妹への希望をテープレコーダに集めていく。
神学校を追い出されナファスのガイドを引き受けた少年の歌う詩、
兵士としてこの地に神を探し続けている医師の心情、
そして嘘をついて義足を手に入れた片手のない男に希望は…?

砂漠に咲く花のような色鮮やかなブルカたち。
この国で女性が自らを守る最後の砦か、それとも閉じこめられた檻か。
ナファスがブルカ越しにみたものはなんだろう。
私はアフガニスタンに行ったことはないし、アフガン人の知り合いもいない。
地雷に襲われた経験もないし、“平和”な国に暮らしている。
真っ直ぐに捉えるには、私は頭でっかちすぎるみたいだ。

しかし、単純に面白い映画である。
映像美、テンポの良さ、ラストの余韻。好きである。
それに伴うマフマルバフの道徳的すぎるほどのアピールはなんだか…と思ったこともあったが、それもきっと前向きに捉えて良いことだ。
今頃はアフガニスタンに学校がひとつできているはずだ。
私も世界の子供たちの明るい未来を望んでいる。

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ギャベ

●1996年/フランス・イラン合作/カラー/ビスタ(1:1.85)/73分 /モノラル
●監督・脚本・編集/モフセン・マフマルバフ
制作総指揮/マスタファ・ミルザハニ
撮影/マームード・カラリ
音楽/ホセイン・アリザデ
◯出演/シャガイエグ・ジョタト、アッバス・サヤヒ、ホセイン・モハラミ、ロギエ・モハラミ
●制作/カリル・ダルチ、カリル・マームディ
●配給/オフィスサンマルサン
■翻訳/ショーレ・ゴルパリアン 、 字幕/大矢敏

「rang!(色)」
そうさけぶや否や、その手は無限の色へ変わる。

総天然色の世界に、現実とギャベの物語が入り混じる幸福な映画。

「ギャベ」とはイランの南方に暮らすカシュガイ族の織る伝統的な絨毯のこと。
そこには昔から人々の生活や様々な物語が色鮮やかに織り込まれている。
そのなかから飛び出した美しい娘ギャベ。
彼女の恋、その周りの人々の暮らしが豊に描かれてゆく。

イラン全土で色が失われた時代に作られた映画というだけあって、見ているだけでワクワクする。
ギャベを演じるシャガイエグは同監督の「サラーム・シネマ」にもでてくる、瞳の大きな女の子で、その表情は本当に豊かで魅力的。
かわいくて、ちょっと哀愁を感じるおじいちゃんもいい。

何も考えずに見ることをオススメ!

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グレーマンズ・ジャーニー

●2001年/イラン=NHK/カラー/110分
●監督・脚本:アミル・シャハブ・ラザヴィアン
プロデューサー:アリレザ・ショジャヌリ、上田信(NHKエンタープライズ21)
撮影監督:モハマド・レザ・シャリフィー
カメラ:サイエド・プーレエスマイリ
編集:キアヌシ・アヤリー
音響:モハマド・ジャラル・ホセイニ

◯出演/
ジャウド:レザ・シェイク・アーマド・カムセ
エスファンディアル:アーマド・ビグデリー
バーマン:アリ・シャーサウァン
作家:セイエド・ミルザ・ラザヴィアン

日本語字幕/ショーレ・ゴルパリアン

関連ページ

劇場に勤めベテランの人形遣いのエスファンディアル、
今は老人ホームに居り太鼓を叩き物語を歌うジャウド、
カマンチェ奏者のバーマン。
かつて人形芝居をして回った3人の老人がテヘランで再会した。
懐かしい恋の話や旅人や行く先の小さな観客たちとの交流をしながら、バーマンの故郷ビルジャンドをめざす。

綺麗な映像にまず心を奪われる。
イランの季節や人を絶妙に切り取って映し出してみせる。
夕焼けを背景に話す3人のシルエット、ピカピカに磨いた古い車も夜の焚き火に映える。
観ているとパン(視点の移動?)が多く使われているのがわかる。
水たまりから車を映し、そのままカメラを移動し、走り去る所を捉えた場面や
木々の紅葉からカメラが移って老人3人がポーズをつけてるシーンはちょっと面白い。

登場する3人の老人がなかなかにくせ者で面白い。
みんな昔、苦い恋をして忘れられないようなちょっと哀愁と愛嬌のあるおじいちゃんたち。
ジャウドはヘビースモーカーで煙草をやめろと医者にいわれても「1日50本から1本減らして、よくなってからまた吸うよ」なんていう困った爺様。一番好きだったなあ。
出逢う人々も、父の墓で売れない本が金に換わるように祈る老人や、素直に人形劇に見入る小学生、血の気の多い若者、密輸がばれて捕まってしまうアフガン難民、そしてバーマンの妹ラベエ…とそれぞれに人生を持つ者たち。
人生の悲哀とは、喜びとは…老いるとは。なんて思いも胸をかすめる。

劇映画だと思って観ていると、所々に撮影隊が登場する。
イラン映画得意のドキュドラマ?と思ったら、最後に種明かしとなるようなエピソードがあって、ふっと切なくなった。

でも実は途中集中力がきれてうつらうつらもしちゃったけど。
『ストレイト・ストーリー』もそうだったな。へへへ;

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サイクリスト

●1989年/イラン映画/カラー/83分/スタンダード
●監督・原作・脚本・編集・美術/モフセン・マフマルバフ
撮影/アリレザ・ザリンダスト
音楽/マジド・エンテザミィ
◯出演/モハラム・ゼイナルザデ、エスマイル・ソルタニアン、マフシード・アフシャールザデ、サミラ・マフマルバフ
●配給:オフィスサンマルサン

イランで100人に1人は観たと言われる超人気作。そして名作。

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少年と砂漠のカフェ

●2001年/イラン=日本/35mm/カラー/1:1.66/96分/モノラル
●監督・脚本・編集:アボルファズル・ジャリリ
撮影:モハマド・アハマディ
プロデューサー:アボルファズル・ジャリリ、市山尚三
エグゼクティブ・プロデューサー:森昌行

◯出演/キャイン・アリザデ、ラハマトラー・エブラヒミ

●製作:バンダイビジュアル、フィルム・エ・アヴァル/オフィス北野
●企画・制作:ティー・マーク
●配給:ビターズ・エンド

公式HP

イランとアフガニスタンの国境近いデルバラン。
そこでは様々な所からやってくる人々が暮らしている。
アフガンから一人でここにやってきた少年、キャインは国境へ続く道の途中にあるカフェで働いていた。
実の親のように優しいおじいさん、おばあさん。常連のお客さんたち。巡回に来る警官…。
おじいさんは常連でもある警官にいつでもアフガン人が入ってきてないか訪ねられるが、キャインたち難民を庇ってくれていた。
警官の目、厳しい砂漠の生活、人々との温かな暮らし。
しかし、その生活も永遠には続かない。

キャインは血気盛んな少年で良く走る。
走って走って走り続ける。
みんな大切でみんな大好きで、けれど日々状況は変わり続ける。
どんなに歳が過ぎていっても、きっとキャインはこのカフェのでの生活を忘れないんだと思う。
決意の瞳に、深い強かさを感じた。


 

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スプリングー春へ

●1996年/フランス・イラン合作/カラー/ビスタ(1:1.85)/78分/モノラル
●監督・脚本・編集/アボルファズル・ジャリリ
Director/Screenwriter/Editer:Abolfazl Jalili
撮影/メヒディ・ヘサビ
Director of Photography:Mehdi Hessabi
録音/ハッサン・ザヘディ
Sound:Hassan Zahedi
音楽/モハマド=レザ・アリゴリ
Music:Mohammas-Reza Aliqoli
プロデューサー/ナセル・ペゼシキ
Producer:Nasser Pezeshki

◯出演/メヒディ・アサディ Mehdi Asadi、ヘダヤトラ・ナビド Hedayatollah Navid
●配給:ビターズ・エンド

公式HP

イラン・イラク戦争の最中、戦争で家族と離れ、ひとり親戚の家に避難して来たハミド。冬の深い森でのおじいさんとの二人暮らし。初めは閉じていたハミドの心も森で生活をするうちに開いていく。しかし、ラジオからの戦況放送におびえ、空襲の様子が目に焼き付いて離れない。そして、春がやってくる。

青い青い、色を失った森は、まるでどこでもない幻想のようで観ているうちに迷い込んでしまいそうになる。
ハミドとおじいさんの新しい共同生活を軸に進むこの物語は、人を慈しんだり、希望を信じる純粋な願いが込められているように思う。

映画の最後に全ての戦争孤児に捧げると監督の言葉がある。
ずっと子どもの視点から現在まで映画を撮り続けてきたジャリリ監督の、根幹の見える作品である。

現実の問題を目の前に捕らえながら、それを普遍の物語へと仕上げる幻想的な映画。

なにより、主役のメヒディが本当にきれいな顔しててかわいいんだ!
瞳がすごく印象的で吸い込まれそう。(笑)
彼はこのあとの作品「かさぶた」にも主演し、監督の最新作では助監督もつとめているとのこと。
今後にも期待*

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タラネー15才

(英題:Tarane-15years old)
2002年イラン/カラー/110分
●監督・脚本:
ラスール・サドレアミリ
プロデューサー:
撮影監督:
カメラ:
編集:
音響:

◯出演/タラネ・アリドュステ/ホセイン・マジューブ

日本語字幕/

関連ページ


刑務所の父、天国の母。優しい祖母と一緒に暮らす少女、タラネ。
喫茶店も映画館にも行かずに、家族の世話と勉強をする彼女。
アミールは彼女にアタックを続けやっと結婚ということろになった。
身よりのない彼女に新しい家族が出来た。
お互いが学生のため、宗教上の仮結婚となったがこれで二人は堂々と町を歩ける。
しかし、忙しいタラネに対し寂しいアミールはつい浮気をしてしまう。

…水準が高い。
というか空気が洗練されていて、ものごく面白かった。
これは絶対劇場公開すべき。
もう一回観たい。
なにがって、主演のタラネがかわいすぎる。
つい先日、同じく女性からの離婚が出てくる『サラ』(メフルジューイー監督)を観たが、この愛憎ぶりと違ってタラネは健気で強かな青春的映画でした。
冷静なレヴューはもう一回観ないと書けないな。
イランの女性は本当に強い。
自立ということに関してとても厳しいと思う。
その憧れと自分への情けなさと。好きな映画です。

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父 

(原題:pedar)
●1996年/イラン/カラー/ 分
●監督・脚本:マジッド・マジディ
プロデューサー:
撮影監督:
カメラ:
音響:

◯出演/ホセイン・ アベディニ

日本語字幕/

再婚家族という深刻な問題を扱ってるのに、なんだかコミカルな映画でした。
食料を包んでいたピンクのタオルを頭に巻いて、道を陣取るお父さんについ笑ってしまった。
イランて沙漠の国かあ、と今更思った。

乾いた国でのその大切さから、水はそれ自体に生命のイメージを持つようだ。
緑茂る田舎町から都会に出る道は一転荒涼とした沙漠となる。
極限の世界で父と子は何を掴むのだろうか。

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チャドルと生きる

(原題:The Circle)
●2000年イラン映画/カラー/1時間30分/ビスタサイズ/ドルビーSR
●監督・製作・編集:ジャファル・パナヒ
脚本:カンブジア・パルトヴィ
撮影:バラム・バダクシャニ
美術:イラジュ・ラミンファー
録音:メーディ・デジュボディ

◯出演/フレシテ・ザドル・オラファイ/マルヤム・パルウィン・アルマニ/ナルゲス・マミザデー/エルハム・サボクタニ/モニル・アラブ/ファテメ・ナギヤウィ/モジュガン・ファラマジ

●提供:GAGA アジア グループ
●配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションズ Kシネマ 
協力:ナド・エンタテイメント

公式HP

真っ暗な画面からお産の声。
そして新しい生命がまたこの世界(circle)へと生まれてくる。
誕生したのは女の子、男の子を心待ちにしていた家族は失念して何度も性別を確認する。
一族に知らせるため電話ボックスへ向かった女性はそこで刑務所から逃げてきた3人の女性達と会う。
彼女たちは警官の目をくぐり抜け故郷へと向かうところだった。
また、恋人を亡くし一人妊娠してしまった女性は堕胎手術をするために刑務所での知人を訪ねる。
貧しいがために愛娘を捨てた女性は男の車に乗り煙草をくゆらす娼婦を見る。

イスラム社会で暮らす女性の閉じこめられた繰り返す円の中。
イランの現実社会を映し、またどこの社会でも起こりうる、内包している様々な問題の核心を捕らえる映画である。

彼女たちの強かさ、愚かさ、美しさ、生きる事への強い思い…そのバイタリティは素晴らしい。

少しずつ絡み合うそれぞれの物語は綿密な構成で成っていて、見るたびに新たな発見がありそう。
最初のエピソードで故郷への夢を目を輝かせて語るナルゲス。
その周囲を見る不安げな疑心に満ちた瞳に、この世界の矛盾が映っている気がする。



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テヘラン悪ガキ日記

(原題:pedar)
●1998/イラン/90分/カラー/35mm/1:1,66
 
●監督:カマル・タブリーズィー
脚本:カマル・タブリーズィー&レザ・マグスーディ
撮影:アズィーズ・アサーティー
音楽:ケイヴァン・ジャハンシャーヒー
編集:ハッサン・ハッサンドゥースト

◯出演/ファテメー・モタメド=アリア/ホセイン・ソレイマニー/ゴルシード・エグバリ/ジャムシード・エスマイルハーニー/モハマド・ダヴュードナジェド

製作:Varahonar Co. &Farabi Cinema Foundation
(c)Farabi Cinema Foundation
日本版字幕:松岡葉子/協力:ショーレ・ゴルパリアン
配給:パンドラ

公式ページ

少年院にソーシャル・ワーカーのきれいな女の先生がやって来た。
一目で彼女に見とれるメヘディ。だって彼女は切り抜きの母親にそっくりなのだ。
授業中「坊や(pesaram:私の息子)」と呼ばれ、メヘディは彼女こそ母親だと決め込んだ。
夫を亡くし娘アフーと二人暮らしをしている彼女に大きな災難が降りかかったのだ。

タイトル間もなく、白黒の連続写真が映し出される。
その中に母親の写真を持っていると自慢する少年がいる。
「嘘だ」と否定され、少年が泣きながら握りしめていたのは、一枚の新聞の切り抜き写真。
その温かな母子の写真から映画が色を帯びてゆく。

事務的に仕事をこなす職員たちの中でひとり、情熱と愛情を持って彼女は少年たちと話をする。
盗みをしなければ暮らしていけない貧しい子供たちの存在が浮かび上がる。
しかし、底抜けに明るく前向きなメヘディがこの映画をコミカルに導いてゆく。
自分の欲求に都合の良いことばかり並べて行動していく彼が小憎らしくて愛しいのだ。

メヘディ役のホセイン君自ら作った、母を想う詩には歌の上手さだけでなく伝わるものがある。
実際に少年院でスカウトされた彼の中にも、きっと何かの種があるのだ。
こんな所からもイランという風土が伝わる。詩を愛する国の小さな詩人。
日本人だって昔はもっと身近に句や詩があったのではないかしら、とふと思ったりした。

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ナヴィの恋

●1999年・日本・ビスタサイズ・92分
●監督/中江祐司
原作・脚本/中江祐司 中江素子
撮影監督/高間賢治
音楽/磯田健一郎
テーマ曲/マイケル・ナイマン+登川誠仁
制作/竹中功 佐々木史郎
○出演/西田尚美、村上淳、平良とみ、登川誠仁、平良進、アシュレイ・マックアイザック、嘉手苅林昌、大城美佐子、山里勇吉、兼島礼子
●制作/イエス・ビジョンズ オフィス・ビジョンズ
配給/オフィス・シロウズ 東京テアトル

公式HP

て・ててん・てん・てん・てん♪
軽快にアメリカ国歌をひきながら畑へ向かうおじぃ。けらけらと笑い恋する気持ちを忘れないおばぁ。
赤いブーゲンビリアが画面に映える。
とろとろと、とろけてしまいそうな ゆるやかな空気が映画館全体に満ちている。

都会に疲れて島に里帰りした奈々子。
待っていたのは結婚を迫る幼なじみ・ケンジと、祖父母の恵達おじぃとナヴィおばぁ。
なぜだかおじぃが偶然同じ船に乗っていた福之助を泊めると言いだし、同居生活に。
その頃、見慣れない老紳士の噂に島は揺れていた。ナヴィおばぁも落ち着かない様子。それが嵐のはじまり???

観ているうちについつい笑顔になってしまう。心地よくなってしまう。
粟国島の琉球民謡と「愛してるランド」のケルト民謡、そしてオペラ?!
話のストーリーより何より、何気ない仕草やおしゃべりから、ここに暮らす人の強かさを感じてうれしい気持ちにさせられる。
ナヴィがなんともかわいい。その笑顔に60年越しの愛の逃避行もゆるせちゃう。
おばぁの動向に動じずに、マイペースに全てを受けとめるおじぃも、すごく良い。三線(さんしん)を弾く姿がまたかっこいい。
そりゃそうだ、実際にこの登川さんは三線の名手・天才なのだそうで。
ちゃめっけがあって、助平(笑)で、独特の寛容さを持つひと。役の状況からすると、せつないんだけどね。

若い二人も負けておらず、西田尚美にますますハマルことになってしまった。
フクノスケ君と奈々子のラストの衣裳とか雰囲気が大好きだなあ。

監督の中江氏はこれまでも沖縄を舞台に映画を撮っているそうだ。
あの空気感をどうやって捕らえるんだろう。本当にすごいと思う。内側からのあたたかい視線ということなんでしょうか。

理屈なしで日々の暮らしのパワーを感じてください。ぜひ観るべし。

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バダック

(原題:Baduk)
●1992年/イラン/カラー/86分
●監督・脚本:マジッド・マジディ
プロデューサー:
撮影監督:
カメラ:
編集:
音響:

◯出演/モハメッド・カセビ/メハロラ・マゼルゼヒ/マハヤム・タハン

日本語字幕/

関連ページ

印象的な目をした少年と少女。兄のジャファルと妹のジャマル。
井戸掘り中に父を亡くし、国境を彷徨ううちに密輸人に売られてしまう。
兄と妹は離ればなれになるが、ジャファルは妹のことを捜し続ける。

親玉がまた濃いいんだ。
芝居がかってて。ジャファルとのギャップがすごい。
しかも多分アフレコだから、キアロスタミとかの映画とかとはベクトルが真逆。
長編一作目ということで、舞台俳優出身のマジディらしさが出てると言えるのだろうか。

ラストの終わり方はイラン映画的だなと感じる。
オチがついてるけどね(笑)。
シリアスな場面は多いけど、かなりコミカルな役者陣だった。

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パンと植木鉢

●1996年/フランス・イラン合作/カラー/ビスタ(1:1.85)/78分/モノラル
●監督・脚本・編集・出演/モフセン・マフマルバフ
撮影/マームード・カラリ
美術/レザ・アラゲバンド
音楽/マジド・エンテザミィ
録音/ネザム・キアニィ
◯出演/ミルハディ・タイエビ 、アリ・バクシ、アマル・タフティ、マリヤム・モハマッド・アミニィ、モハラム・ゼイナルザデ
●制作/アボルファズル・アラゲバンド
●配給:オフィスサンマルサン
■日本語字幕/杉山緑 、 字幕監修/ショーレ・ゴルパリアン

ドーム上の天井から光の射し込む廊下を歩く二つの影。
黒いチャドルが揺れて、瞳が覗く。
パンを持つ少年と植木鉢を持つ青年。
その後に見え隠れする、真実。

モフセン・マフマルバフ(監督)は自分が少年時代に警官を襲った事件を映画化しようと思いオーディションを行う。
そこへ当時の警官がやってきて、自分の役は自分に審査させろと言う。
ついには演技指導まではじめて、マフマルバフ側と警官側で全く別れて撮影が開始される。
こうして、警官思いを寄せる少女に植木鉢の花を渡すところを、パンの下に隠したナイフで襲うという計画が再現されるのだが、実はその少女も少年の共犯者だった・・・。

まず、少女役のマリヤムがすごくかわいくて魅力的で、警官が惚れるのも納得いってしまう。
マフマルバフ側と警官側の思惑が全く違って、空回りする様子がとてもおかしい。
自分はハンサムだと言って聞かない強面の元警官が、この映画でこそはマフマルバフに勝とうと必死なのに滑稽で、当時の情勢を考えると全然笑えないのにコミカルで、見せ方がうまいなあと思った。

マフマルバフのこの事件は有名で、映画を撮る前は反政府運動をして刑務所に入れられたりしている。
マフマルバフの批判精神のルーツ。暴力行動より映画の影響力を信じたということだ。
過去と現代の時代の移り変わりを象徴的に映し出すことに成功していると思う。
今まで観てきたイラン映画の中で、私の中で一番しっくり来た。

大好きな作品です。DVD買いました、私(笑)。

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りんご 

●1998年・イラン=フランス合作・カラー・ヴィスタサイズ・1時間26分
●監督/サミラ・マフマルバフ 
製作総指揮/イラジュ・サルパズ 
脚本・編集/モフセン・マフマルバフ 
撮影/エブラヒム・ガフープモハマド・アーマディ 
助監督■マルジエ・メシキニ、アクバル・メシキニ 
録音■べ一ルズ・シャハマト
○出演/マスメ・ナデリー、ザーラ・ナデリー、ゴルバナリ・ナデリー、ソグラ・べ一ルジ、アジゼ・モハマディ
●製作/マフマルバフ・プロダクションズ、MK2プロダクションズ
●配給■フランス映画社

とにかく出てくる子供たちがかわいいのだ。
目がきれいで、好奇心の塊みたいな。
これは実話を題材に、本人たちが
本人の役をやってるんだけど、本当に その場でストーリーを作っていったというから、ドキュメンタリーに近い気がする。
(最初のほうの映像がビデオっぽいところから、監督がこのニュースを知ってすぐに飛び出していったというのが想像できる。)
外の世界を知らない双子のみてる世界を 鮮やかにうつしていて、すごくきれいな映像。
視線が温かいというか、登場人物の心に近い感じがした。

双子のおんなのこが、両親に生まれてからずっと家の外に出してもらえなくて、近所の人の通報で保護してもらったところを、お父さんが迎えに来るところから話は始まる。

なんといっても、このお父さんが良い。
渋い。娘がかわいいのがよく伝わるのだ。
双子の出会う子ども達も良い。
りんご好きの双子に、りんごを窓からつるしてからかう男の子や、双子がりんごをあげて
友達になる女の子二人も、なんか楽しい。
淡々としてるのにちゃんと映画になってる(笑)のが良いなあとおもう。

それはやっぱり監督の力量ってことなのかも知れない。
この監督サミラ・マフマルバフという女性は十八歳で父も映画監督。良い映画に囲まれて育ってきたのかな。
十八歳ってところが、同年代としてすごく刺激される。年齢の問題じゃないとはわかってるけど。

この映画の中の空気にあこがれます。
イランの映画もっとみたいです。
一度は行ってみたい・・・。

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