■イギリス留学FAQ

 

University of St. Andrews

 

 このコーナーは「FAQ」というよりは、「ありがちな質問なのになぜか回答されているのを目にしたことがない質問」とその回答をまとめていきます。どのようなニーズがあるか分からないので、とりあえずこじんまりとスタートすることにします。ご質問頂ければありがたいです。ぜひ、「FAQ」集の拡充にご協力下さい。


●お薦めのイギリス留学参考書

 私の個人的な好みなのですが、

Barron, T. (2003) Get Set for Study in the UK. Edinburgh: Edinburgh University Press.

ISBN 0 7486 1810 4

 がお薦めです。著者は、経験豊富なエディンバラ大学の International Officer で、長年、日本からの留学生誘致を担当なさっていました。一読した上で不明な点があれば、著者(エディンバラ大学の研究者。その傍ら、同大学のInternational Officeに在籍)に直接emailで問い合わせてよいと思います。


●defer (デファー)って何?

 入学許可の年度を一年後にずらしてもらうことを指します。deferを申請して必ず許可されるとは限りませんが、例えば、イギリスの大学院に2年間留学する予定で、2校から入学許可を受けた場合などにはぜひdeferをトライしてみるべきでしょう。

 受験生のモラルとして褒められたものではありませんのでお薦めは決して致しませんが、(admission の時期が遅いことで有名な) Oxford, Cambridge, LSE には、最初からdefer狙いで出願する手もあるのかも……。


●推薦状を先生にお願いしたら、草案を作って持ってくるように言われたのだけれど……

 (誰に尋ねたかは明かせませんが、)入学審査を実際に担当する人に単刀直入に聞いてみたことがあります。「もし、推薦状が実際には志願者が作成したもので、推薦者はそれにサインしただけだと気付いた場合どうしますか?」

 その答えは、どんなに立派な願書・学歴であっても「無条件でturn downする」とのこと。自然な結論ですよね。

 ただし、推薦者(大学の先生等)に「このような観点で書いて欲しいのですが」と相談をするのは一向に構わないとのことです。「授業での貢献度」を強調してもらいたい人や学業面を中心に評価してもらいたい人など、人それぞれですし、推薦して下さる先生にとっても、そのほうが好都合なことが多いと思います。

 重ねてになりますが、文章を起草して持っていくのではなく、あくまでも、盛り込んで欲しい内容の希望を伝える(箇条書きの英文とか)のが正しい姿勢だと私は感じます。第一、推薦状の英文としての善し悪しは全く合否に影響しないのですから……。

 とはいうものの、実際には、推薦状の草案を自分で書いて持ってくるように先生から指示を受けるケースが多々あります。理想論からはほど遠いのですが、その場合の注意点を若干述べたいと思いますので、こちらもよろしければご覧下さい。


●MSc から MPhil (2年間のResearch Course)に入学後に変更できますか?

 大学・学部によって可・不可がさまざまで一概に言えません。


●「2nd Upper Class」の学部成績ってどれぐらい?

 募集要項には、 「2nd Upper Class」以上の学部時代の成績が必要と書かれていますが、日本には同等の評価制度がないので、直接比較が難しいですね。そこで、エディンバラ大学のMA (Hons) Social Policy 等の卒業生の評点の分布をご紹介します。

  MA (Hons) Socilal Policy MA (Hons) Politics その他の MA (Hons) (社会科学系)
1st Class

2

5

0

1

0

1

1

0

0

1

0

1

1

2nd Upper Class

10

42

4

2

12

12

4

1

2

0

1

5

1

2nd Lower Class

5

8

0

1

3

0

1

1

0

0

0

1

0

3rd Class

1

1

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

 2nd Upper Class レベルの成績って、上から数えて2/3ないし4/5程度の成績でいいみたいですね。この程度の基準なら、「イギリスで修士を取得しよう」と意気込む向学心の高い人ならばほぼクリアーしていると思われます。尻込みせずにぜひチャレンジを!

注:MA (Hons) とはスコットランドの4年制大学の卒業学位です。イングランドの大学(3年制)には同等の学位がありません。多分。


●4000 words ってどれぐらい?

 Microsoft Word 日本語版の標準書式で10ページぐらいです。いきなり4000 words のessay を書くのは結構(かなり)難しいです。まずは、何か 1000〜2000 words ぐらいの Short Essay を書いてみる機会をお持ちになることを強くお薦めします。例えば、英語のサマースクールでAcademic Englishのコースを履修なさるのも一案です。


●一日に1コマしかないってラクじゃないですか??

 いえいえ、そんなにラクではありません。reading list に載っている文献を丹念に読むと、1授業あたり1日を費やしてやっとです。特にMBAやEducation系はコマ数が多いので、おそらく相当ハードな1年間になることでしょう。


●夏学期の過ごし方は?

 4月から「Summer Term」が始まります。ちなみに4月のEdinburghはまだ相当寒いです。

 夏学期はSupervisor と定期的に面談をして、Dissertation を作成する時期です。その他、エディンバラ大学のケースでは、Workshop と呼ばれる、一日完結型集中講義も不定期で開かれています。受講は任意です。

 Supervisor との面談の頻度なのですが、個人差が大きく、一般化できません。非常にせかす教官もいらっしゃれば、「8月末までにね」とおっしゃる大らかな教官もいらっしゃいます。あえて、不正確になる危険を多少冒して追加説明しますと、2週間に1回ぐらいが平均的な頻度ではないでしょうか?この場合、おそらく、2週間ごとに1 つの Chapter のfirst draftを作成していく感じになります。

 ※試験が課されるコースの場合、当然ながらこの時期は、試験対策とdissertation作成の両立です。


●一科目でも落第すると卒業できませんが、本当に大丈夫?

 誰も保証はしてくれませんが、真面目に毎日勉強をしていれば落第(40点未満の得点)することはほとんどないはずと個人的には思います。むしろ、集中的に勉強すれば、distinction (70点以上の得点)も夢ではありません。

 とは言っても、ご心配でしょうから、エディンバラ大学の、ある科目の全員の得点を集計してみました。この母数には、留学生も多数含まれています。

Mark Description Number  
80 - 100% (A) A work of exceptional, that is, publishable quality 0  
75-79% (A) Outstanding work which delivers insight and depth of analysis
that are illuminating and challenging for the markers
0  
70-74% (A) Significantly and consistantly above the average for postgraduate work 6 Max 72
60-69% (B) Work of high quality, sometimes above aversge,
displaying substantial if not comprehensive knowledge and understanding
27 25% percentile 65
50% percentile 60 (median)
50-59% (C) Work which shows some solid knowledge of the topic
but where they may be significant gaps.
21 average 59.75
75% percentile 55
40-49% (D) Work which shows some knowledge of the topic and sources
but the handling of evidence in relation to the argument is likely to raise doubts
6 Min 43
0-39% (E) Flawed in its understanding of the topic 0  

 実は、私は75点以上を得るのが至難の業だと知らず、初めて戻ってきたエッセイの得点が低く驚いたものです。実質的には、70点が取れれば二重マルです。上の表を見て分かることは、

注:この表は、エディンバラ大学のSocial Sciences 関係の学科の例です。大学、学科によって大きく状況が異なりますので、他大学・他学科の方にはあまり参考になりませんので注意して下さい


●Matriculation って何ですか?

 少なくともエディンバラ大学に関する限り、一言で言えば、admissionに関する諸手続のことを指します。(辞書には「入学許可」と書かれてありますが、ちょっとニュアンスが違います)

→ matriculate (入学手続き)をしてもらう (matriculation number が交付される)

つまり、admission という概念は、「入学できるかできないか」という観点に力点があるのに対して、matriculation は、「エディンバラ大学の学生の資格を持っているかどうか」ということに関連する概念です。そのため、入学願書のエッセイに、I would like to apply for admission とは書けても、I would like to apply for matriculation と書くと語感がおかしくなります。


●7・8月って何をしているの?

 意外に答えるのが難しいのです。Oxford、Cambridgeのように9ヶ月でdissertationを仕上げなければならないようなコースとは異なり、エディンバラ大学の場合、MSc のdissertation の締切りは9月上旬です。そのため、「7・8月にはもっぱらdissertationを書いている」というのが模範回答なのですが……。

 ただし、一日中、図書館や自室でdissertationを書いているかというと、そうも言い切れません。私の友人(日本人ではありませんが)は、アルバイトをしながらdissertationを書いている人が多いです。私のsuperviserはとても親切で、「近々旅行に行く予定はないの?」と、dissertationの進捗報告のmeetingのたびにいぶかしそうに聞いてくれますので、おそらく学生がこの時期を利用して小旅行に行くケースも多いのでしょう。ただし8月のエディンバラフェスティバルを尻目によそに旅行に行くのはもったいないと思いますが……。


●dissertationを書くってどんな感じ?

 15,000 words は、MS word 標準書式で 本文40 ページほどです。どうしても留学前に分量の雰囲気が知りたい方には、私の駄作でよければメール(660kB)しますが……。

 通常のessayはともかくとして、dissertationはネイティブの知り合いにチェックを頼んだ方が無難です。私の場合、正直に申しますと、エディンバラで英語教師をしている友人に英語の添削(proofreading)を有料でお願いしました。ただし、dissertationとはsupervisorに相談しながら自分で書くもの!英語のチェックを越えたアドバイス(章立てや論理構成、専門用語の用法の当否など)は受けない方がよいでしょう。

 さて、dissertationの締切日は、9月12日(2003年の例)でした。数ヶ月を費やして完成されるものだけに、少しぐらい前倒しにして早く帰国できないものかという疑問が湧きそうなものですが……。
 周囲の留学生を見ていますと、ほぼみんなが締切日頃まではエディンバラにとどまっていました。その後、自国に帰るついでに海外旅行をする予定の人も多かったです。dissertationの完成は、supervisorの助言あってのもの。supervisorは、学生の標準的な進捗進度に合わせて学会参加日程を組んだり、夏休みを取ったりするはず。進捗が自分の都合ぴったりになる保証はありませんので、早く帰国しなければならない理由のある方以外は、締切日頃まではエディンバラに住む予定にしておくのが無難です。どうしても早く帰国しなければならない場合は first draft (少しの手直しですむ程度の完成度であることが必要) を仕上げて、supervisorにはメールでコメントをお願いしつつ、コメントのあった箇所を修正し、製本して郵送で提出する段取りとなるでしょう。帰国前倒しはおそらく1ヶ月が限度です。

 なお、追加の説明書きもつくりましたので、ご覧下さい。


●せっかくだからエディンバラで第二外国語を勉強したいのだけれど

以下のリンクをご参考にどうぞ

IALS (Institute for Applied Lanugage Studies) http://www.ials.ed.ac.uk
Open Studies http://www.lifelong.ed.ac.uk
L'Institut Français d'Ecosse (13 Randolph Crescent) http://www.ifecosse.org.uk/
Istituto Italiano di Cultuta (82 Nicolson St.) http://www.itacult.org.uk

●「Office」(学生控え室)はありますか

 残念ながら、MSc (taught)には、自分専用の机をあてがってもらえません。MSc by Res ならば、(同じ授業料にもかかわらず) PhDコース扱いになり、自分の机がもらえます。

PhD student の office の例(4人部屋)


● National Library of Scotland って何ですか?

 National Library of Scotland は、イギリス・アイルランドに所在する6箇所の「legal deposit library」(おそらく日本の国会図書館に納入する納本制度に相当)の一つです。ちなみに他の5箇所は:
・ the British Library (とはいっても、British Library はイギリス国外で発行された書籍の蔵書規模もものすごく、全く比較外の規模です。)
・ the Bodleian Library, Oxford
・ the University Library, Cambridge
・ the Library of Trinity, Dublin
・ the National Library of Wales
 大学院生であれば、「General Reader's Ticket」という図書館カードを発行してもらえます。このカードがあれば、いつでも図書館で本を閲覧することができます(貸し出しは不可です)。OECD等国際機関発行の書籍・雑誌・Occasional Paper類も多数納められています。
 比較的空いていて、東京の国会図書館のように先を争って閲覧申し込みをすることはありません。「明日また読みに来ます」と言って、取り置いてもらって帰宅することも可能ですし、ランチなどのために外出したりもできます(この点は、国会図書館と比較して格段に親切ですね。)。
 なお、地図専門の分館があり、その収集規模はイギリス随一だそうです。
 http://www.nls.uk/catalogues/online/index.html


●いつ頃までに出願すべきでしょうか?

 願書の準備はもうできましたか?
 出願時期は、個人差が大きく何とも言えませんが、願書に明記されている3月末までには提出すべきだと思います。なお、以前 British Council のホームページには「できればクリスマスまでに」と推奨されていたのですが、最近このページをチェックしたら、なくなっていました。私の場合、2002年1月上旬に出願し、約1ヶ月で合格通知をもらいました。
 大学によっては、英文の成績証明書や出身大学の先生からの推薦状の入手(←個人差が大きいです。私の妻:一晩。私の場合:半月。さらに時間を要した知人もいます。)等に意外と日数を要します。早めの準備をお薦めします。
 エディンバラ大学以外では、オクスフォード・ケンブリッジ・LSEへは出願を急いだ方が有利という話を耳にしたことがあります。(なぜなら、一般に大学は出願者から届いた願書を精査して随時合否を決定し合格枠を埋めていきます。そのため、出願が集中する時期になると、多くの出願者が残りの枠を争うことになり、ほんのわずかな学力の差が合否を左右することがあり得るからです。)
 なお、合格する場合の所要日数のほうが、不合格通知を受け取るまでの日数よりも平均的には短いようです。


●願書の Research Proposal には何を書くべきでしょうか?

 私個人は、MSc (taught) の担当教官のもとで引き続き MSc by Res として研究することにしたので、口頭で許可を取り付けたため、形ばかりのProposal しか書いたことがありません。あまりお役に立てなくて申し訳ないです。
 ただし、Research Proposal は、当然ながら実際の research design のプロセスと多くの共通点を持っていると思われます。ここでは、Hazel Genn という著名な Socio-Legal study の先生の手による research design に関する(かなりざっくばらんな)ペーパーの中身を簡単に紹介しておきます。

STATEMENT OF RESEARCH OBJECTIVES AND MODE OF RESEARCH

 お書きになったドラフトを推敲する際に、役立つかも知れません。


●Research Proposal について(その2)

 上記に加えて、Blaikie, N. (2000) Designing Social Research. Polity Press. (ISBN: 0-7456-1767-0)に記述されている内容を簡略に紹介します。この Research Proposal の説明は、PhD student 及びグラントを申し込む場合を意識して書かれていますので、願書に添付する proposal を書く際には、適宜読み替えて、不必要な部分を削除して下さい。

・ Title
It should capture the essence of what the project will be about and where and with whom it will be conducted.
例: Environment Worldviews and Behaviour among Students and Residents
  Age and Environmentalism: A Test for Competing Hypotheses
  Gender Differences in Environmentalism: Towards an Explanation
  Motivation for Environmentally Responsible Behaviour: The Case of Environmental Activists

・ Statement of the topic/problem
The statement will normally consist of a few paragraphs. This will usually require reference to some literature (such as reports, official statistics, ...).

・ Aims and significance
The statement of aims is normally accompanied by some justifications for pursuing them.

・ Background
how the research problem has arisen, who views it as a problem, evidence for its existence, the context in which it occurs and who are the stakeholders など
'a review of literature' にとどまり、そのreview と自分の研究との関連性が不明確であるというパターンが一つの典型的な失敗例だそうです。

・ Research plan and methods
What is needed is an outline of the way in which the research will be conducted. The research design is invaluable for the preparation of this section of the proposal.
The research questions that are to be investigated should be also appear in this section. If appropriate, any related hypotheses should be stated and their sources indicated.

・ Budget
grant の申請の場合に重要です。

・ Justification of the budget
同上

・ Timetable
The major components commonly include the following: preparation of the research design; review of the literature; selection of data sources (including sampling); development of the research instruments; collection of the data; analysis of the data; and writing the thesis/report. (In some cases, literature reviews and research design stages are assumed to have been completed.)

・ Expected outcomes or benefits
(Aims and significance に包含される場合も想定できます。)

・ Ethical issues

・ Problems and limitations
It is a good idea for the researcher to make an explicit assessment of the particular strengths and weaknesses of the research design. Lack of awareness of both the strengths and weaknesses of a research design can be interpreted as indicating a shallow understanding of research.

・ Communication of findings
(研究成果をいかに公表するかについて)


●日本であらかじめエッセイを書く練習がしたいのですが。

 British Council の英語学校(東京の飯田橋)が開講している writing のコースは大変お薦めできます。土曜日のコースならば社会人でも通学できますね。IALS (エディンバラ大学付属の語学学校) の Academic English の授業構成はこのコースによく似ていました。日本で writing の勉強を終えておいて、イギリスにいらっしゃってからは spoken English の勉強に専念なさるのも一考かと思います。なお、このコースは、IELTSの writing パートの練習としても好適です。
 テキストは、Oshima, A. and Hogue, A. (1998) Writing Academic English 3rd ed. NY: Longman. でした(2002年)。基礎的ながらなかなかよいテキストだと個人的には思います。

 こちらこちらもよろしければご覧下さい。 


● 一年間の留学予定です。MSc (taught) と MSc by Res のどちらがよいですか?

 MSc in Policy Studies (taught) のコース内容については、まずは大学のホームページをご覧下さい。端的に申し上げると、
・ Autumn Term と Spring Term で合わせて、6科目を受講する
・ Summer Term (9月上旬まで)に 15,000 words の dissertation を書き上げる。

MSc by Res (Social Policy)は、
・ Autumn Term 開講科目 'Research Skill' は、taught と共通
・ Spring Term に 'Research Design' という科目を受講する必要がある。
・ dissertation は 15,000 words (ただし、受講科目数(6科目が想定されています)が少ない場合、その分、文字数の多い dissertation が求められます)
・ 自由度が高いので、研究スキル及び専門知識の両方をすでに有している人(例えば、日本のPhDを一年休学して留学する人など)には問題なくお薦めできる。

これだけ見ると、MSc by Res を受講した方がよさそうに見えるのですが、Policy Study に関して前提知識をお持ちでない方、及び日本で修士課程レベルの勉強をなさった経験がない方には、taught のほうを個人的にはお薦めします。これは、私が両方に入学してみた経験からの意見です。

理由
・ MSc by Res は、遅くとも Spring Term には supervisor による指導が始まります。そのため、実質3ヶ月ほどのインプットからアウトプットに切り換えなければならず、身につけられる専門知識に限界があります。
・ MSc by Res は、「research」に特化した授業構成です。例えば、「social research の方法にはどのようなものがあるか」、「social science とは何か」、「研究計画をどのようにmanageするか」など、すぐに応用できるとは一概に言えないような内容が大部分を占めます。実質部分の「policy study」については、Spring Term の一科目(せいぜい2科目)の知識しか身につけることができません。
・ MSc by Res で、かつ policy study を専攻している同学年の学生がいるとは限りません。大学の教育システムがよくわからない状況の下、研究を進めなければならない可能性があります。


●エディンバラは、Policy Study を研究する上で、立地的に不利ではないですか?

 Scottish Executive や Scottish Parliament が所在するスコットランドの首都ですから、地方分権化などの研究に非常に適しているのは事実なのですが、Whitehall, Westminster のことを研究するには立地的に(少なくとも気持ちの上では)不利かもしれません。
 ただし、これは単なる気持ちの持ちようかも知れません。Sir Robin Butler や Sir Peter Kemp といった有力者(イギリス行政改革が専門の方以外には名前の羅列でごめんなさい)に面談をしてもらい、dissertation を仕上げた taught master の学生(北欧人)もいました。私の場合も、今年の日程が許す限り、supervisorに紹介して頂いて、ロンドンへインタビューに出かけるつもりです。
 せっかくロンドンに所在する大学に入学しても、学生数が多すぎると taught master のdissertation は放任状態という話も聞いたことがあります。地方都市にじっくり腰を据えて勉強をするのも一つのよい経験ではないでしょうか?


● 学生とSupervisor はどのような関係にありますか

 原則論を申しますと、

・ Dissertation は、あなたと supervisor との共同執筆ではありません。あなた自身の研究成果です。
・ よって、dissertation を仕上げる責任は、あなた自身にあり、(道義的にはともかく)supervisor にはありません。
・ supervisor に何を求めるかは人それぞれです。黙っていたら何かをアレンジしてもらえるというように考えてはいけません。
・ supervisor の主な仕事は、本人の研究です。appointment なしにいつでも相談に乗ってもらえるとは限りません。supervisor には学会や夏期休暇が控えています。親切なsupervisorも大勢いらっしゃいますが、それは、その先生が学生に対して日頃払っている好意であって義務ではありません
・ 通常、イースター明けが最初の実質的な(dissertation を書き始めて、その内容の相談に乗ってもらう)meetingになります。(個人差はあります)
・ 標準的には、「3〜4回のmeeting」があります。(個人差が大きいです)
・ supervisor に問題なく期待してよい項目は:
 ・ dissertation の構成のアドバイス
 ・ 研究の方法論についてのアドバイス
 ・ 研究にinterviewが必要であれば、先生のつてを紹介してもらう
 ・ 先行文献についての基礎的な知識の教授

 上記に加え、学生が抱えている学業以外の問題に耳を傾ける('mental encouragement')のも教官の務めと考えてくれていらっしゃる方は多いです。

 当学科の PhD ・ MSc by Res の convener (コース責任者)の先生の手による学生向けのメモ(約 6,000 words)をご覧になりたい方は、メールで差し上げますので、ご連絡下さい。


● コンディショナルオファーについて

 英語の点数が足りないために、大学から「Conditional Offer」をもらう場合があります。この点について、少々注意を喚起したいと思います。

 まず、イギリスの TOEFL 受験会場は極めて少ないことを考慮して下さい。スコットランドでは受験できませんので、はるばるロンドン(あるいは外国)まで足を運ぶ必要があります。

 次に、IELTS ですが、3ヶ月に1度しか受験できないという条件は大きな制約となります。慣れない土地で一発勝負の受験をするのはリスクが伴います。なお、受験した経験のある友人の話では、出身国で受験した時よりも設問が難しく、会話の採点も辛目だったそうです。建前上、IELTSは他の受験生との相対評価で評点が付く訳ではありませんが、実質問題として、聞き取りがよくできてしゃべり上手なヨーロッパ人と同じ会場でテストを受けて、日本で受験するのと同じ点数がもらえるかというと若干疑問です。また、9月にIELTS試験を受けた場合、もし採点結果に納得がいかなくても、点数の再検証を申請する時間的余裕がありません。

 さて、エディンバラ大学のIALS(大学付属の語学学校)のサマースクールには、IELTS対策のコースがありますが、このコースに入学すればIELTSの点数が向上するのかどうかについては、何とも言えません。実際問題として、私の知人・友人の実例や伝聞した話によると、相当数の学生がIELTS受験に失敗しています。
 ヨーロッパからの学生の場合は、いとも簡単に帰国できてしまいます(英語だけ勉強すればよい一浪状態ですね。)。すべての留学生がIELTSの試験結果に人生を掛けているわけではないことをまず頭の片隅に入れておいて下さい。

 実例を少し挙げます。国籍はまちまちですが、いずれもアジア人です。自分の直接見知ったケースと伝聞した話が混在しており、2002/3年度と2003/4年度の例を一緒にしていますがご容赦下さい(プライバシーに配慮した結果です)。

・ 法学部: 不許可(サンプル2名)
・ Nursing Study : 不許可(サンプル2名)
・ 教育学部: 最終的には入学を許可(サンプル3名)
・ その他人文社会科学系: ケースバイケース。不許可の例もあり。同一人物に交渉した結果、置かれていた状況が少し異なったため、片や許可、片や不許可に分かれた例もあります。

 これ以上の詳細は伏せますが、全体を概観したところ、何とか入学が許可されるかどうかは、その学科がどの程度 humane なことを研究対象としているかによって左右されているような印象を受けます。(例えば、法学部の場合、「あなただけ特例を作るのはアンフェア」と言われたりするそうです。)

 このように書きますと、過剰な期待を持たせてしまいそうですが、現実はかなり厳しいです。まず、交渉能力が必要です。客観テストで示すことが出来ないような英語力を持っていることを示さなければならないので、IELTSの会話テストより難しいと考えた方がよいでしょう。日本人はこのようなことが苦手な傾向がありますので、上記のアジア人学生の平均像とは異なるかも知れません。

 できるかぎり「unconditional offer」を手にして渡英なさることを強くお薦めします

 最後に一点。不運なことに、最後のチャンスで受験に失敗した場合どうするかについて、ほんのわずかなアドバイスです。このとおり実践した結果については一切責任を負いかねますのでご承知置き下さい。

・ 交渉相手は、実質的な選択権(名目的な決定権ではない)を有している人物を。Course Convener が望ましい。間違っても、「規則を遵守する」ことを仕事としている人物(学科長、学部長、事務局長等)を相手に交渉しないこと。
・ 年度の始まりは大学の業務量が激増している。最も繁忙な時期に相手に時間を割いてもらうのだということを忘れないこと。この時期は返事が遅くなることも珍しくない。
・ とりあえず会ってくれるだけでも親切な先生だと感謝すること。「会うわけにはいかない」という回答をもらって終わりというパターンもある。
・ 例えば、IALSでテスト対策の英語を勉強していた場合などは、怠惰が原因ではなく不幸にも点数が届かなかったのだということを客観的にアピールしてくれる人物(IALSのコースディレクターなど)に口添えしてもらう、あるいは連絡を取り次いでもらう手がある。
・ いかにして英語力を向上させていくつもりがあるか問われた場合、うまく答えられるようにすること。
・ 「MSc ではなく、Diploma への入学でよいか」などのオファーを受ける場合も想定される。学位が欲しくて留学に来ているのか、その学科でどうしても研究したいので留学に来ているのかについて、気持ちの整理を付けてから交渉に臨むこと。


● 手紙の書き方

 出願に際して、イギリス的な手紙の書き方を知る必要がある場合があろうかと思います。私のお薦めは、Esther Selsdon (2001) Everything You Need to Know Letter Writing. Glasgow: HarperCollins. ISBN 0 00 7102348 です。汎用的な本ですが、いろいろと書き方のヒントが得られると思います。


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