新しき日本語ロックの道と光 /サンボマスター
久々に「ロック」を聴いた、と思った。演奏はかなりちゃんとしていて、歌もめちゃうまい。ボーカルの声は、どれだけシャウトしても崩れない音程を生み出し、声量を絞ってもかすれない。表情豊かな声色を持つメインボーカル&ギタリストの彼は、類稀ない才能を持つロックシンガーと言って良いと思う。しかしながらルックスが相当にまずい。実は友人のホームページで「めちゃかっこいい」けど「日本一不細工なバンド」として紹介されていた。そんなこといわれたら気になるので1ヶ月ほど前に購入したのだけど、「この曲」を「あの人」が歌っているのがうまく連想できなくって、その人曰く「船酔いしたみたいに気持ち悪くなった」そうだ。僕も同感であった。しかし、慣れとは恐ろしいもので、その感覚に慣れてくると、むしろそのイケてないビジュアルさえかっこよく感じてくるから恐ろしい。コギャルがヤマンバメイクを「かわいい」と思ってしまうのと似ているのかもしれない。
アルバムには「新しき日本語ロックの道と光」と、たいそうなタイトルがついている。僕はこういうの好きである。志はないよりあった方がいい。そして、少なくともサンボマスターは目指すべきラインをきちっと超えていると思う。印象に残るフレーズがたくさんあってキャッチーだけど、ポップに成り下がっていない。しっかりロックである。これはなかなか出来ることではないのだ。「口ではうまく言えないから、ギターを弾くわけですよ」とギターソロの前にシャウトするボーカル兼ギタリスト。ロックのくせに敬語というのが、新しき日本語ロックの姿のうちのひとつかもしれない。こんなに礼儀正しい?青年も世の中に不満があり、恋愛に苦しみ、礼儀を重んじながらシャウトとノイズで世界に訴えかけるのである。今後の「新しき日本語ロックの道と光」に期待したい。ちなみに公式ホームページには「人生をドラマにはしない男」と書いてある。ドラマではない人生の中で、新しい日本語ロックの道を作っていってほしい。難しいことこそ、志にふさわしいではないか。