1月16日 日曜日 香港離陸


 明るくなっても、香港のはかっこいい町だった。圧倒的な都市の密度の中、中国という地盤の上に、イギリスの機能が注入されている濃密ハイブリッドシティだ。無数の看板が張り出す混沌の中をダブルデッカーが走る。中国でもない。ヨーロッパでもない。はじめてみる光景だ。こういうの、香港に初めて来た人のステレオタイプの感想なのかもしれない。でも、そうやってある種の感動を人に与えることの出来る力を持つ都市というのも、そうたくさんある訳でもないはずだ。とにかく、こういう、見たことのない風景の中を散歩するのは本当に楽しい。

 僕が散歩しているのは、ホテルのある九龍という地区。少し前までは「九龍城」と呼ばれた建物があったところだ。もともとは空港もこの辺にあって、この辺りの高層ビル郡の中に飛行機が着陸して行く様はなかなか圧巻だったという。どちらも有名な話だけど、僕は見ることが出来なかったし、これからも見ることが出来ない。これはちょっと残念。散歩はたったの一時間くらいだったが、香港はまた来たいと思える街だった。旅行も良いけど、住むのに良さそうな町だ。なにしろ食い物が恐ろしくうまかった。

 飛行機は昼下がりに離陸し、香港の曇り空の中にあっというまに呑みこまれた。雲のうえの風景というのはすごい。とくに空の上の夕焼けは何回見てもすごい。なのに、窓の外にはまったく興味を示さない飛行機に乗り馴れたおじさんたちは、ブラインドを閉めてさえいる。標高何万メートルから風景は、まさに壮大で神秘的。この光景を見なれたつもりになるなんて、ちょっと神経鈍り過ぎじゃないの。そんなおやじ達を横目に、僕は窓の外をずっと眺める。海外から日本に戻るときの飛行機というのは、なんだか時空を超えているような気がする。全然違う二つの国を結ぶトンネルのようなこの感じが、僕はとても好きである
。夕暮れが描く大スペクタクルを眺めながら、僕は日本酒を片手に悦にふけっていた、日曜日の夜。

夕暮れが描く大スペクタクル

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