5月29日 土曜日 地面と空の間ぐらいのところで
今日もまた、結婚式場で打ち合わせ。なんだか、なかなか疲れてきました。ばててきました。ということで、たまには妻を誘って粋なバーで酒でも飲むなんてどうだろうかと思って、ホテルの35階にある夜景が奇麗な大人のラウンジへ向かった。妻は本来こういうところが好きなのだけど、僕は彼女をこういうところにあまり連れてこないので、今日はちょっとはしゃぎ気味だ。窓の外には、さっきまで僕らが披露宴の席の並び方などを決めていた地上が小さく見えて、彼方遠い別世界のように見える。そういえば、富士山に登った時に友人の藤井氏が「こんなに高いところから地上を見下ろすと、せせこましい毎日が馬鹿らしく見えるね」という風なことを言っていた。全くその通りだ。今、僕はその時と同じ気持ちになっている。地上で結婚式の席順を決めている人もいれば、今、このラウンジで素敵なジャズを奏でるピアニストやベーシストもいるし、ずっと上を見上げて宇宙のことばっかり考えているような人もいる。いろんな人がいろんなことをして大変な思いをしているこの世間も、こうやって高いところから見れば、本当にすべてがたいしたことではないような気がしてくる。ヒトゴトに見えてくる。富士山で藤井氏は地上に向かって「ざま〜みろ〜〜」と言っていた。その気持ちもよく分かる。地上で小さなことに捕われて、あくせくしていることが、今の僕にはたいしたことじゃないって思えるんだぜ、ってそういうことだよね。そういう風に気持ちが大きくなって、勝手に気分が良くなった。ピアノとベースの生演奏が薄暗いバーで素敵に響いていたのも、また良かったのかもしれない。1時間ごとに始まる、ジャズのライブを2回聴いたから、多分2時間くらいいただろうか。お勘定を払って、地上へ戻る時間がやってきた。地上へ降りてみると、案外さっきまでの大きな気持ちはどこかに行ってしまって、いつもの自分に戻っていた。そういえば、富士山から下山した時もそうだった。実際の僕らは、やっぱりこの地上近くで細かくて大変なことと戦わなければならないことを、体が知っているのだろう。妻は怪しげに光るカクテルを飲んでました。
死ぬよ、そんなの飲んだら。