3月13日 土曜日 世の中のレールに乗りながら


 僕は今でこそ、広告会社で営業なんかやっているけど、大学ではもともと環境設計学科というところに通っていて、建築や都市計画や環境保全などを学んでいた。広告でも建築でも都市計画でも環境保全でも、どれもモノづくりという点では同じで、求められる専門知識が違えども、それを実現させるプロセスは同じである。そう考えて広告会社に入った。僕はとにかくモノづくりに関わりたかったのである。都市計画や環境保全に比べて、実現できる成果物の自由度たるや、これは圧倒的に広告の方が勝る。モノを作るのに制限が多い公共物よりも、もっと自由にモノが作れる。僕が社会人になるときに、広告を選んだ理由はそれであった。

 しかし、建築とか都市計画とか環境保全の、世の中への貢献度の大きさに比べて、広告というのはどちらかというと企業の私欲を満たすためのものが多く、プロセスは同じといえども、その辺たまに我に返って「これって世の中のためになってるのか?」と、自分の労働力をささげる商売として疑問を持ったりする事もある。自分で言うのもなんだが、そういうところは根がまじめなのである。今の仕事は楽しいので、それはそれとしつつ、世の中の役に立ってそうなモノづくりのほうも気になる今日この頃。特に最近で言うと、野口健さんの一連の活動たるや、敬服に価しているわけで、僕もなんかそういうのやってみたいなぁって思うわけです。自分の労働力をささげているものが、他人や世の中に本当に必要とされているかって、働きがいそのものだとも思うし。単にないものねだりで、その辺が今の仕事で満たされていない部分だということだけなのかもしれない。

 というわけで今日は、とある自然豊かな離島の中で、子供達に環境教育を行いたいという志を持った人達が集まる会があると聞きつけ、代表者に連絡をとって出席したのだった。もともとその離島は、イルカの繁殖地ということもあり多大な興味を持っていたし、これから盛んになりそうなエコツーリズムにも関係ありそうなところも気になる点であった。しかしながら、そういう一種偽善めいている可能性のある集会に一人で出席するのは恐ろしかったので、同期の藤井氏についてきてもらった。結果からいうと、志の根本は良いのだけど、実行力や今までないものを作り上げる牽引力みたいなものの欠如を感じた。僕はここでこの団体のことを非難したいわけでもなんでもない。ただ、そういう今までにないものを作り上げることの難しさを改めて感じたのと、そういう機会を意識的に作らないまま大人になっちゃう世の中が良くないんじゃないかと思ったとうこと。

 ひょっとすると昔からそうだったのかもしれないけど、便利な今の世の中ではたいていの仕組みが出来あがってしまっていて、自分が何をしなくても前に進んでいけるようになっている。システムに乗っかってさえいれば、お金だってある程度はもらえるし、料理とか出来なくってもコンビニがあるし、その状況で満足できるひとにはがんばるための理由などないし、他の人と違う道を開いてゆく努力の必要もない。第一、そんな場面に遭遇した事がないから、実際に遭遇すると対処が出来ない。前に進む時に、そっちの方向でいいのかを誰かに確かめて「OK」のはんこでももらわないと前に進めない。保証された道しか道じゃないと思っている。それで困らない世の中だから、それはそれでいいのかもしれないけど。

 かくいう僕も、そうやって便利な世の中のレールの上を歩いているんだけど、そうじゃない人たち、つまり世の中のシステムにのっているだけではなく、自分たちでシステム自体を一から作っている人たちを見ると、すごいなあって素直に思う。その作ったシステムも、もっと大きなシステムに乗っているだけかもしれないけれど、それは僕らの一次元上の段階にいるということになる。彼等は、もっと自分達で色んなことを考えて、決定して、実現して、その責任を自分達で負う。責任を負わなくてはいけないから、みんな腰が引けてしまうのは当然だと思うのだけど、せめてそんな疑似体験ができる環境を、もっと大人になるまでに体験させるような教育環境があってしかるべき時代に来ているはずである。そこが日本には著しく欠如しているのではと思ったのである。じゃあ、具体的にそれは何?といわれても、そこまで考えてないのけど・・・。

 日本は社会をシステム化することによって、効率化を図って高度経済成長の波に乗った。そこまでは良かったが、ここに来て、ついに行き詰まっている。今の世はシステムに乗っかって生きてきた人たち(政治家でさえ)で構成されているから行き詰まった時に、社会全体として解決能力がない。昨今の、この由々しき自体はそう簡単に解決はできないと思うけど、この自然豊かな離島の話だって、小さな話ではあるけれど、実はすごい大事な話だったりするわけで、そういうのってお金にならないから、ほんとにそういう問題解決の応力のある人たちが、こういうところに回ってこない。だから、ほんとは大事なものがどんどん壊されていってしまう。こういうところに、なにか貢献できるようなことがしてみたいなあって思うのだけど、それはつまり、新しいシステムを作るということであるからして容易ではない。でも、そういうことがしたいと思っているのよ、最近。すごい、漠然としているけど、そこには確実な需要と、なにかしらうまいやりようはあると思うので、そこに供給できる技術や経験を持った人間に育つよう、意識してご飯を食べようと思っているのです。あ〜あ、偉そうなこと言っちゃったよ。

夜は会社の同期(女子)の結婚式二次会へ。奇麗でした、ほんとに。ファンでした。ほんとに。

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