1月17日 土曜日 娘さんを僕にくださいの巻
彼女と結婚することにしたのは、去年の年末。話はとんとんと進んでいる。元旦には自分の親に結婚の意志を伝えた。東京に戻ってきて、部屋探しを始めた。シフト制の仕事をしている彼女と休みの日が合う最初の土曜日。つまり今日、彼女のご両親に挨拶にいく。一か月前は、こんなことになるとは思いもしなかったので、自分でも「いいのかな」と思うところもあったが、思い立ったが吉日である。こういうことが、こういうふうに、とんとんと進んでいくのは、きっと良いことなのだろう。実際、僕もこのスピード感を楽しんでいさえする。僕は土曜日の日課である英会話をお休みにし、今日は仕事用のためではないスーツを着込み、クリーム色のニットのネクタイを締める。クリーム色ではあるが、自分では紅白の「白」のつもりだ。誰もそんなことには気付かないと思うが、縁起は良い方がいい。髪を慎重にセットし、この日のために新調した、なかなか足になじんでくれない靴を履いて家を出た、土曜日の朝。 途中の新宿で電車を一度降りて、高島屋のデパ地下で一番おいしそうなケーキを買った。そんなことをしていたら、彼女の家がある国立駅には、予定より1時間ほど遅れての到着となってしまった。車で迎えにきてくれた彼女は、車中で「なんて言うの?」と、いじわるな笑顔で何度も聞いてくる。「なんて言うの?」とは、つまり「娘さんを僕にください」のような類の言葉のことである。いまどき、そんな古風なこという人なんかいないと思うが、そういう定型文が好きな彼女なのである。彼女は、自分の本拠地に外様の僕を迎えて優位にたった気でいるのか、いつも強がっている僕が緊張しているのをみて楽しんでいるようだった。率直に「郁子さんと結婚しようと思います」とでも言おうと思っていたが、親切に家に迎え入れてくれた彼女の両親は、僕が自己紹介を終えて席に着くなり「この度は、おめでとうございます」ときた。僕はそれに「ありがとうございます」と応えて、それで終わりだった。ちょっと拍子抜けしたが、たくさんの料理やお酒で、おもてなしを受けて、楽しい時間を過ごすことができた。5時間くらいかけて結構な量のビールと、ワインを2本、日本酒の4合瓶1本を飲み干した。7割くらいは僕が飲んでしまったかもしれない。酒を飲み過ぎた僕はいつのまにか、彼女の家のリビングで眠ってしまったようだった。酒が勢いづくと止まらないのは、こういう席でも変わらないのだなと自分に呆れてしまう。まあ、これもいつも通り。そんなこんなで、彼女の家の布団で夜を越すことになるのである。あちゃぁ。
ということで突然ですが、私、このたび結婚することとなりました。結婚が確定した1月17日からここまで、直接会って報告できた人もいますし、まだ報告出来ていない人もいます。この日の日記の更新は遅らせてみたものの、まだ皆さんへ報告しきれておりません。こんなかたちの第一報もいかがかと思っていますので、知人の皆様へは改めて口頭で報告させてください。それでは、その時にお会いしましょう。
婚約者の郁子です。顔の色とか詳細はまだ秘密です。
これは、彼女の家ですっかり酔っぱらってしまった時に撮影したものです。
よっぱらってすいませんでした。