1月11日 日曜日 部屋を探す その2


 今日も部屋探しをした。今日見た部屋は、品川と田町の間にある。東京に住んでいる人でさえ、品川と田町の間に何があるのか知っている人はほとんどいないのではないか。何があるかというと、実際に何もないのである。正確に言うと汚水処理場があって、新幹線基地への引き込み路線があって、誰が使うのか解らない埋立地の残骸のような運河がある。それと、JRの車両基地。つまるところ、普通の人とたちが訪れることのない施設の集積地。それが「品川と田町の間」だ。なんでそんな辺鄙な場所の部屋を見ているかというと、これが公団の住宅だからである。公団の住宅は礼金や仲介手数料(家賃の約3ヶ月分のお金に相当)、それと保証人が要らない。引越し資金の随分がこれで節約できるというわけだ。しかしながら、都南の公団住宅はどこも辺鄙な場所にある。昨日見た天王洲アイルは、まだ再開発地域だから納得もいくが、都市から取り残された「品川と田町の間」は明らかに人の住む場所としてはふさわしくなく、見に行く気持ちも限りなく透明に近いグレイである。

 部屋に入って外を眺めると、11階の部屋からは広大な汚水処理場と、新幹線の引込み線と、生き物の匂いのしない運河。それとたくさんのコンクリートが見えた。不思議だったのは、僕がその景色を綺麗だなと思ったことだ。街に人の気配はなく(これは街とも呼べないのかもしれない)、運河には鴨みたいなな鳥がたくさんいて何をするでもなく羽を休めていた。線路には客を乗せていない新幹線がゆったりと走っていた。品川の車両基地はいつも人にあふれているはずの車両が、空っぽになったままたたずんでいて、ひっそりとしている。聞こえる音はすべて遠くから聞こえる音だった。ここはすべてのものが休むことを許されているような場所だった。電車も新幹線も鳥もみんな休んでいる。一緒に休んでも良いかなと思った。周りにお店とかないけれど、こんなところに住むところがあること自体、なんだかトウキョウライフじゃないか、なんて思って部屋を予約した。もうちょっと他のところも見てみるけどね。

部屋探しの帰りに寄った泉岳寺で見た空。
忠臣蔵・赤穂47義士の墓があるんです。

土曜日へBack! / Diary Topへ戻る

Home