1月10日 土曜日 部屋を探す その1
もうすぐ部屋の契約も切れるし、せっかくなので引越しでもしてみようと思い、いくつか部屋を見て回った。最初に見たのは天王洲アイルにある高層マンション。空いていたのは30階のワンルーム。この日は雲ひとつない快晴で、景色はどこまでも見えそうなくらいだ。さすが湾岸の30階からの眺めはなかなかであった。しかし、再開発地域として一時は脚光を浴びた天王洲アイルも、土日は見事なまでのゴーストタウンで、すこし外れると今でも倉庫街でしかない。人のにおいがしない街は、空がどんなに晴れていても限りなく灰色であった。唯一、色らしい色といえばベランダから見下ろしたところにある、割と立派な野球場の人工芝の色だけだ。米粒くらいの人達が、針の先ほどの球をめぐり、人工の緑の上で攻防を繰り広げていた。家賃は簡単に払える金額でもなかったし、人工的な環境もなんだか自分に合いそうにないかと思ったのだけど、ものは試しで申し込みをしてみた。人生、なにごとも試してみるに限る。しかし、残念ながら滑り込みで他の人が申し込みをしてしまったようで、僕はその部屋を契約することができなかった。
僕は天王洲アイルからモノレールに乗って浜松町に出て、そこから山手線で有楽町の英会話教室に行った。頭の良さそうなアメリカ人と雑談のようなレッスンを2時間。彼はアメリカでビジネスコンサルタントをやっていたそうだ。今は日本人の彼女もいるし、結婚式では袴を着てみたいという。まだ日本に来て4ヶ月しかたっていないようだけど、彼の毎日は充実しているようだった。ベルリッツにいる外国人はみんな面白い。みんな自分の力で人生を切り開いている人達ばかりだ。この人も日本に住んでみたいという思いひとつで、この国へ飛び込んできたのだ。そんなこと、僕にはできるだろうか。レッスンを終えて、銀座である知人の結婚式の2次会へ向かう。いつも僕の後ろの席で、のんびり仕事をしているぬぼっとした男性も、今日はきらきら輝いていた。ちっともぬぼっとしていなくって、結婚式ってすごいなぁと思った。2次会を終えると、高校の仲間である前田氏、岐津氏と酒を飲んだあと、前田氏を家に連行してさらに酒を飲んだ。そして酔っ払って寝た。年末年始が終わったなぁと感じる一日だった。