12月27日 土曜日 博多で魚を食べる。
朝から100枚の年賀状を書いて、郵便ポストに投函した。右手が棒のようになってしまった土曜日の朝。なんとか今年の仕事をすべて終えられて嬉しい。今日は、その足でそのまま街へ出て、母親と食事をすることになっていた。向かうは「やま中」という高級寿司店である。よく、僕の勤めている会社でも「博多は魚がうまい」という話を聞く。「それは博多の魚がうまいというより、東京の魚がまずいんじゃないですかね」と心のうちで思っていたのだけど、今日はそれがそうではないということを思い知った。この「やま中」は、職場の先輩が出張の時に九州支社の人に連れて行ってもらって、いたく感激して帰ってきた店で、そこの魚がどんなにうまいのかという話を何度も聞かされた店である。しかしながら、料金が高いようで何となく行きそびれてきた。今回は年末のボーナスのような臨時金があったので、母親へのねぎらいも兼ねて、ちと奮発してみようというわけである。博多出身の僕が、博多のうまい店を知らないというのも、なんだかくやしい気もしないでもないし。 場所は天神の手前、薬院の近く。どんな店構えかも知らないで行ったら、随分とモダンなデザインで意表をつかれた。僕も知らなかったのだけど、設計はかの有名な磯崎新。なんでも店主の山中さんと磯崎新が古くからの付き合いだそうだ。しかし、知り合いとはいえ、磯崎新に設計を頼むなんて、随分と儲かってるんですねぇ。さてさて、席について最初に出てきたのはワカメだった。このワカメが異常にうまくって、横で母親が「このワカメおいしい」を連発していた(ワカメで喜ぶのは早いよ)。その後、次々に出てくるもの、これがどれも今まで食べたことのないくらいうまかった。僕は「魚は築地市場が一番」と思ってきたが、ちょっと格が違うようだった。築地にもうまい魚はいっぱいあって、それは間違いなくうまいのだけど、ここで食べた魚は、店の価格帯が違うとはいえ、どれも築地で食べたものよりかなり上手をいっていた。中でも「あら」と呼ばれる魚は、博多の高級魚として有名。こいつを今日初めて食べたのだけど、これはもうさすがに高級なだけあって、しっかりした甘みと歯ごたえをもつうまい魚だった。鱈の白子のつもりで「白子」を頼んだら、いきなりふぐの白子が出てきて、お勘定でややビビったが、2人で3万円弱。正直、福岡でこの値段は相当高いといわざるをえないが、しかし、これが東京だったら倍は取られているであろう。全国を飛び回るパイロットやスチュワーデスも「博多の魚が日本で一番うまい」と言っていると聞いたことがある。ちょっと値段は張ったが、いいものを食べた。なるほど、博多は魚がうまい。と、言えるようになった。