10月26日 日曜日 妹の結婚式、そののち日本シリーズ。


妹の結婚式

 妹が結婚するというと「泣いた?」とかなりの人に聞かれたけど、泣いてない。別に彼女が結婚できないかもしれないとか思ったこともないし、結婚も自然の流れのような気がするし、何かが無くなるわけでも、変わるわけでもないと思うし。ただ、新郎新婦はとても幸せそうで、周りのみんなもとても嬉しそうで、結婚式ってそういうところがやっぱりいいと思う。みんなが一日中「おめでとう」といっているなんて、正月か結婚式くらいだ。そういっためでたい日の中でも、トップ級にめでたいのが結婚式だ。妹も、当初は結婚式や披露宴をしないでも良いかも、と言っていたのだけど、僕が「結婚式だけはちゃんとやっておいたほうが良いよ」とアドバイスしておいた。きっと、今はやって良かったって思っているんじゃないかな、と思う。実際、とてもいい式だった。

 そうこう言っている僕だって、そもそもは自分の結婚式なんて、全然やんなくっていいやって思っていた。そんな僕の考えを変えたのは1年前。友人の結婚式二次会で、会を締めくくる、新郎のお礼のスピーチだった。彼は、そのとき次のような内容のことを言っていた。「今日の今日まで、僕は結婚式というものは、女性のためにあるものだと思っていました。女の人が綺麗な格好をして嫁に行くことを実感して、みんなに綺麗ねって言われて喜ぶためのものだと。男はそれに付き合ってやることが仕事みたいなもんだと。でも、今日という日を迎えてその考えを改めました。自分達のためにこんなにたくさんの人が集まって、祝ってくれ喜んでくれて、僕は大変感激しているし、結婚式をやって良かったと心から思います。結婚式は女の人のためにあるなんて間違っていました。」大まかそういうことを言っていた。

 彼は、僕が信頼する人物で、軽軽しいことは口にしないし、冷静沈着に物事を見つめながら、シュールなユーモアでもって周りを和ませる稀有な人物である。彼はそのスピーチで、結婚式というひとつのセレモニーが自分にもたらした感激を、素直に伝えようとしていた。僕は、その姿を見て、彼がそう言うのだったらと「結婚式は良い」説を信じることにしたのだった。きっと結婚式の当事者になってしかわからない感激があるのだ。結婚式(披露宴のことね)は手間もお金もいっぱいかかるし大変だろうけど、僕は可能ならばある程度の結婚式はあげたいと今は思っている。

 ちなみに妹の結婚式は博多都ホテルという、福岡の老舗ホテルで執り行われた。最近できた派手で豪華なホテルでもないし、都ホテルっていうのも地味だなぁとか生意気なことを思いながら、式が始まるまでどんなもんかと思っていたのだけど、結果からいうと、とってもいい式だった。老舗だけあって、式のノウハウはかなりちゃんとしていて、安心してみていられたし、すべての心配りがちゃんとしていた。同席の祖母や祖父へのケアも完璧だったし、司会の人も進行がとっても上手だった。そういうひとつひとつが、こういうイベントをバシっと引き締めてくれるのだ。僕も仕事でいろんなイベントを仕切ったり、見たりするけど、都ホテルのそれはとても良かったともう。最近はレストランウェディングも流行っていて、それはそれでいいけれど、ちゃんとした結婚披露宴はやっぱりちゃんとしていていい。

 ちなみに僕は式中、場内を駆け巡り、今日という日を今後に残すために写真を撮りまくっていた。デジカメと一眼レフを駆使し、相当な枚数を撮影した。こんなものはありすぎて困るものではない。幸せのひとときは存分に切り取って残しておくべきだと思う。そういえば、先々週に大阪を訪れていたときに、大学の後輩である谷岡夫妻(ふたりとも後輩なのです)が一年前の結婚式および披露宴の映像を見せてくれたのだけど、それを見ながら妻の恵さんが「こういうの見ると、ほんと離婚とかできんっておもうわぁ」とつぶやいていた。同感である。僕もその手法を利用して、子供ができたときに、その子供をものすごくかわいがっている風の写真をたくさん撮って、それをリビングに置きつづけようと思う。そうすると、子供もさすがにそんなにぐれないのではなかろうかという作戦なのだが。そうはうまくいかないのでしょうか。式は、ほどなく終わり僕は福岡ドームに向かった。今日は、プロ野球の日本シリーズ第6戦が福岡で行われるのだ。

日本シリーズ

 福岡ドームについたのは、試合開始前15分の午後6時だった。席につくなり、地元企業の社長が始球式を終え、試合はあっという間に始まった。福岡ダイエーホークス対阪神タイガース。18年ぶりにセ・リーグを制したタイガースは日本全国を賑わしていた。しかもここまでの5試合といったら、第2戦の13対0というのを除けば、すべてが一点差の好ゲーム。巷では、近年まれに見る、面白い日本シリーズだということになっていた。実際、そうだったのだけど、第5戦まで2勝3敗と、わがホークスは負け越していて、今日の試合は、あとひとつ負けると日本一の夢を絶たれてしまうという大切な試合だった。ホークスは、2連勝のあとに、敵地甲子園で3連敗。完全に勢いを絶たれてしまっている。それだけに、この試合の序盤がホークスの運命を決めるのは言わずもがなだ。試合は一回の裏に3番井口のツーランホームランで先制。投げては先発の2年目杉内がぴしゃりと押さえていて、完璧にホークスの勝ちパターンに入ってゆく。僕は、一緒に見ていた大串氏と、1回表、2回表、3回表、4回表と、各回が終わるごとに生ビールを買い、飲み干していった。ホークスも勝っているし、気分は最高だ。

 しかし、一杯700mlはあるだろう生ビールを次々に飲み干した僕らは、7回ごろには泥酔状態となり、最終的にはどうやって家に帰ったかさえ良くわからなかった。ビールは6回表までは毎回飲んだはずだ。プラチナチケットだった日本シリーズを、生で見ることができる立場でありながら、そこで記憶がなくなるまでビールを飲みつづけるという至福?の、日曜日の夜。試合終了後、合流した後藤氏には迷惑をかけた(かどうかさえ良く覚えていないのだけど…)。しかし、僕は幸せだった。最後のほうは何も覚えちゃいないけど、ホークスが勝って、日本シリーズが3勝3敗のタイに縺れ込んだことは覚えている。次の朝、モーレツな二日酔いの中、5時に起床し、7時の飛行機で東京へ戻る。機内で見たスポーツ新聞によると、ホークスのバルデスが終盤にホームランを打っていた。僕はそれを覚えていない。でもきっと、そのとき僕は応援バットをかき鳴らし、大喜びをしていたはずである。万歳三唱とかしてしていたはずである。そんな覚えてもいない自分の姿を想像するだけで、僕はなんだか幸せな気分になった。

初めての共同作業の絵

土曜日へBack! / Diary Topへ戻る

Home