10月12日 日曜日 結婚という人生の通過儀礼 僕達も大人になった
もう秋も半ばだというのに、大阪の町は25度ほどあり、ここ最近寒かった東京から、冬物のスーツを着てやってきた僕は、汗まみれになっていた。今日は、大学時代にお世話になった先輩の結婚式のため、大阪にやってきた。その先輩は、僕のひとつ上で学科も同じだったし、部活も同じ。面倒見の良い先輩だったので、式場には後輩の姿も多かった。式場といっても、いわゆるレストランウェディングで、ベルギービールの専門店での披露パーティ。新郎・新婦入場時には、新郎が背中にビールサーバを背負って、チェリー風味の風変わりで気の利いたビールを、各テーブルに新郎が自らチャージしてゆくという、いかにも面倒見の良い彼らしい演出であった。僕はいつもどおり、飲めるだけの酒を胃に流し込んでいたら、披露パーティが終わるころには、かなりいい気分になっていた。同級生の上田氏に「あんた、そげん飲みかたするけん、酔っ払い過ぎるっちゃろうが」といわれた。その通りである。それから2次会、3次会と一団は流れていったが、何も覚えていない。ああ、またいつもどおり。
3次会のカラオケを出たところで、今夜の宿泊先を決めなくてはいけなかった。僕は、ずっと実現できなかった「谷岡家訪問」を実現すべく、谷岡夫妻に今夜の宿を無心した。夫妻はこの酔っ払いを快く引き受けてくれた。谷岡夫妻は、ともに僕の大学の後輩であり、ふたりはクラスメイトであったのだった。大学時代の同級生と結婚なんて「あすなろ白書」みたいでいいよね。そんなことを改めて思いながら、タクシーで西宮の谷岡邸に向かう。その道すがら、タクシーの窓から甲子園球場が見えたのだけど、甲子園球場の隣には、でっかいダイエーがあって、タイガース優勝セールの垂れ幕が、ここぞとばかりに垂れ下がっていた。そうそう、来週から日本シリーズです。福岡ダイエーホークスvs阪神タイガース。ダイエーなのにタイガース優勝セール。ダイエーといえども、タイガースのお膝元で、ホークスの優勝セールだけをやるわけにもいかなかったんでしょうな。そうこうしているうちに、僕らは谷岡邸がある高層マンションに到着した。で、ぶったまげた。
谷岡邸は地上30階建ての高層マンションの20階くらいにあって(細かいことは忘れてしまった)、部屋は2つか3つあって、リビングがあって、っつーか要は広いのよ。谷岡氏は、社会人3年目なのだけど、こんな家は社会人3年目が住む家じゃない、と僕は思っていた。しかも、家賃が5万だか6万だか、そのくらい。東京でこれを借りると、間違いなく30万円コースだ。僕の東京の部屋なんて、しがない軽量鉄骨組のしけた1Kのアパートで8万もはらっとるっちゅうのに。まあ、谷岡氏は某超大手ゼネコン勤務なので、現物支給のように安価でいい物件を貸してもらえるというハンデはあるのだけどね。ほんと、選んだ職業によって、こうも日々の生活が変わりますかね。他人の芝は青いといいますが、もう、谷岡邸の青いこと青いこと。すっかり「地方に住むぞ」モードが高まってしまった。初めて訪れた谷岡邸は平和そのもので、結婚っていいよなぁなんて思った日曜日の夜。しかし、今日は暑かったなぁ。スーツを脱いで、すっかりくつろぎモード。次の朝、一番に起きてリビングでくつろいでいたら、元大学の後輩である奥さんが寝ぼけ顔でおきてきて、お茶を淹れてくれたりして、周りのみんなはどんどん結婚するし、めぐちゃんは奥さんだし、僕らも大人になったなぁってしみじみ思った。