9月20日 土曜日 ぶつぶつ
薬疹というらしい。週の半ばに風邪を引いて、会社の医務室でもらった抗生剤が、体に合わなかったらしい。体中にぶつぶつができた。ぶつぶつは昨日から僕の体を蝕みはじめ、僕の気をめいらせた。仕事は忙しく、パートナーである上司は中国出張だった。休むこともできず、熱のある体にむちを打ち、会社に出た。スケジュール最後の、新製品の市場導入戦略についての打ち合わせも深夜まで続き、結局会社を出たのは午前2時だった。朝起きたら、ぶつぶつは消えているのではないかと淡い期待を抱いたけれど、残念ながらぶつぶつはまだ僕の体の表面から消えていなかった。土曜日の朝、午前八時。九時に始まる新製品受容度インタビュー調査のために、ぶつぶつと一緒に家を出た。休日出勤。
家に戻ったのは14時頃。もう何もしたくない。関東地方に近付いている台風のせいで雨も降り出した。熱があり、ぶつぶつがあり、雨が降っている。外に出る理由はもう何もない。家にこもる。「小説家を見つけたら」という映画を見た。その後、テレビであっていた「Fried Green Tomato」をみる。どっちもいい映画だった。その映画の間に見たテレビ番組もなかなか面白かった。その番組は、仲村トオル(なつかしい)がペルーに行っていろんな体験をするというもの。もともと、旅番組は好きなので、キャスティングの仲村トオルが気になりつつ(もちろんネガティブイメージで)、画面を眺めていた。
その旅行のなかで「アンデスの奇祭 ケンカ祭り」というコーナーがあった。とあるアンデスの村では年に一度祭りがあり、その祭りで自分が嫌いな奴を指名して、がちんこの殴り合いをするというもの。映像を見る限りではかなり本気での殴り合い。若い男が中心ではあるけど、女や子供も参加していて日頃のうっぷんを晴らしていた。喧嘩の理由は「うちの敷地にそいつの羊が入って来た」とか「とうもろこしを盗んだという濡衣を着せられた」とか「私の好きな男にこの女が手を出した」とかいうもの。この祭りのおかげで、村は年中平和だという。何人かでよってたかって、一人の人間をやっつけるってこともあまりないんだって。そりゃそうだろうねぇ。この祭りが「タイマンの美学」をつくってるんだから。
人間の怒りというのは、やっぱりどうにかしてこういう風に、健康的に解消されなくてはいけないんだなぁ、としみじみ思う。戦争とかも、もっとこういうケンカ祭りみたいので解消できないもんですかね。ブッシュとビンラディンでガチンコの殴り合いすればいいのに。自分の身は守っといて、国の人間使って、相手の国の関係ない人間殺すから、余計な争いが生まれるんじゃないか。って、話はそんなに簡単でないことは知ってるんだけどね。ケンカ祭り。いいなぁって思って。