HTML ドキュメント
朝ご飯はパンに目玉焼きを乗せた、簡単なもの。
…明日から作ろうかな、と半分考えながらそれを平らげる。
窓からカーテンを照らす色がまぶしくて、少し目を細める。
此処の住人は何人くらいいるんだろうと、大量の椅子を眺める。
考えても仕方ないので、そのまま立ち上がって玄関へ向かった。
まだ朝食を続けている総司が、慌てたように叫ぶ。
「えッ、もう行っちゃうんですか?!」
「…行ってきます沖田先生」
それを無視するかのように、セイはにっこりと笑うと玄関を出た。
「神谷さんったらつれな〜〜い!」
「総司さっそく振られてやんの」
そんなたわいない会話がセイの背中にかかるが、向かい風を受けて学校へと向かう。
転校初日から変な噂にまきこまれるのは少し気が引ける。
それに、セイは学校の静かな朝が好きなのだ。
だから、いつも少し余裕を持って学校へ向かう。
朝の肌寒い空気が気持ち良い。
学校にたどり着くと、屋上へ向かう。
どこの学校も、屋上への道のりは簡単だ。
音楽室とか、理科室とか、そういったたぐいの教室の近くから階段を上がって行くと、たいていは屋上にたどり着く。
かばんをどさりと落とすと、フェンスにもたれかかった。
下を眺めると、どこまでも広がる畑が見えた。
ずっと遠くには、連なっていく山が雲のかさをかぶる。
此処が、自分の、新しい環境。
目を、少し瞑る。
気持ちが良かった。
風が頬に当たったので、目を開ける。
もう一度下を眺めると、ゆっくり止まる自転車が見えた。
長身の、黒髪。
(………沖田先生だ)
すぐにわかる自分が不思議だった。
その黒髪に惹かれて眺めていると、すぐにその黒髪は自分を見上げた。
そうしてひらひらと手を振ってきた。
向こうも自分のことがわかったのだろうかと思うと、ちょっと驚いたが、手を小さく振った。
そのまま、手を下ろしてゆっくりと校舎へ入っていく総司を見つめた。
そして、少しため息をついた。
----続く----
んんん、台風多いっすね。なんだか。