初夏





ぼうぜんと布団を握り締めるセイにやさしく笑うと、総司はおかしそうに言った。



「さてと、着替えたいんですけどね」



それを聞いたセイは、あわててぺこりと頭を下げて、総司の布団はいまだ手の内に廊下へ逃げ出した。



廊下はひんやりとつめたくセイの裸足に張り付いた。



そうして混乱した頭を沸騰させていると、大きな影がセイにかかった。



「?」



セイが頭をもたげると、そこにはいまだ見たことの無い大男が立っていた。



「おや、もう起きたのか」



そう言ってやさしく笑うその人の顔はひとなつこく、ごつごつとしたあごに手が添えられていた。



「あ、あの昨日からお世話になります…」



「神谷くんだったね」



大きいその人は、セイが寄りかかる戸に大きくノックをしながら言う。



「おーい総司〜、朝だぞ」



セイは不思議そうにその顔をながめていた。



なんだか、とても穏やかなその笑顔に、見とれていたのかもしれない。







そうして戸が開いて、総司が出てきた。



「おはようございます、近藤さん…っと、神谷さん」



総司は、セイのさきほどの醜態は黙っていてくれるつもりらしかった。





しかしそれよりも、セイは総司の服装に驚いて、じっと総司に見入っていた。



「…ああ、総司は神谷くんの学校だったかな」



「…ああ、そういえばそうでした!」



二人はその視線と共に何かに気が付いたように目を合わせた。





「…同じ学校…?」



不信そうにセイは総司の服装を眺める。



白いワイシャツに、灰色のズボンを少し緩めにはいて、黒いベルトをしている。



それから、肩にかけられたネクタイが、いかにも締まるのはいやだとばかりにだらりと伸びている。







「…まさか」



セイは嫌な予感がして眉をひそめた。



「そのまさかです★」



総司は楽しそうにおどけてみせる。





「そう、総司はこれでも一応、教師だ!仲良くしてやってくれ」



はっは!と大きく口を開けて笑う近藤を言う人は、ぽんとセイの背中を叩いた。





「私は近藤と言うんだ。よろしくな」



そう笑って、近藤は階段をゆっくりと降りていった。







「………」



無言のセイの視線に、総司は頭をかいて困ったように言った。



「そんなに変ですか?」

















----続く----

飲むヨーグルトの牛さんマーク。おいしい。