海には、椰子の実が浮いていた。
それを一つ一つ、拾ってはカタカタと振って中身を確かめた。
総司はその隙に魚をしとめていた。
この島の森は広く途方も無いが、豊かだった。
森の仕組みを把握すれば、小さな広い空き地も発見できたし、そこは苔もやわらかく気持ちが良かった。
二人は森の中でじゃれあいながら、その広場に来ていた。
海と隣接したその空き地は、風通りが良く涼しい。
二人は一通りの獲物を手に抱えると、満足したようにそこに寝転がった。
丁度、セイが総司の足元に顔を向けて、総司がセイの足元に頭を向けるような形に寝そべり、伸びをした。
「…沖田先生」
「何です?」
「…さっきワカメまた取ってましたよね?」
「!!!と、…とってませんよう」
「じゃあワカメ鍋と引き換えにお願い聞いてくれます?」
セイはそう言って、ころんとうつ伏せに寝返りを打った。
「…ワカメは炒めます!!」
「炒めワカメも却下です!!」
燦燦と降り注ぐ太陽の光が、二人の顔をちらちらと椰子の間から照らした。
「…沖田先生」
「何ですよぅ」
ふてくされたような声音に、セイはくつくつと笑いながら椰子の実を転がした。
「いつか、此処から出て行くことを諦めてると言ったら先生怒ったでしょう?」
椰子の葉が揺れる。
総司は、黙って海を眺めていた。
「今も、此処から出たいと思いますか?」
総司はもうしばらく海に視線を泳がせてから、ふっと、セイの方を向いた。
そうして少し口の端を上げて、息を吐いた。
「…そうですね」
セイは、総司から目をそらして、また椰子の実で手を遊ばせた。
----続く----
こっそり連載再開…