「沖田先生?!何してるんですか?!」
「え?ワカメですよ!ほら!」
セイは黙ってそのワカメを睨んだ。
悲しいほどに遠く限りなく続く海の表面に、ぬめったワカメが光照っていた。
空はいつものとおり青く、いつものとおり美しかった。
「ね?今日はワカメ鍋ですよ!」
「…美味しくなさそうだしそんな鍋聞いたこともありませんから」
「神谷さん可愛くない!!」
「…泣きそうになってもワカメ鍋は却下です」
ええ〜!!という総司のこだまする声に耳をふさぎながら、セイはそのまま森へと足を運んだ。
まっさらで何も無いこの島には、信じられないほどの食物であふれていた。
全て、総司が教えてくれたのだ。
これは食べれて、これはここにあり、…そう、これが綺麗だとか、余計で愛しい知識も。
あれからどれくらいの月日がたったろう。
もう日にちを数えるのはあきらめていた。
何のことは無い、生きてゆけた。
きっと、(あまりそうは見えないが)総司が頼れるのだった。
「神谷さん!!森の中に行くときは言ってくださいって言ったでしょう?!」
あわてて駆け寄ってきた総司を一瞥すると、セイはぷいとそっぽを向いた。
「だって沖田先生だってお願い聞いてくれないじゃないですか」
「ええっ?!だってそれは…」
「私だけ言うこと聞くなんてズルイですー」
セイは頬をわざと思いっきり膨らまして足を速めた。
「ま、待って!待ってくださいよ神谷さん!それは無理だって…」
あーーーーー!!
いきなり響いた大声に思わず振り返る。
「神谷さん、見てください!ほら!神谷さんの大好物のキノコ!!」
総司はその怪しげな色をした小さなキノコを掲げて鼻息を荒くしていた。
セイは思わず笑った。
「じゃあ今日はキノコ鍋です」
「ワカメも…」
「却下」
太陽が森の葉の間に差していた。
すべてが穏やかで、時間は緩やかだった。
総司の黒い髪がまぶしくて、目を細めた。
鳥だけが、この島から去っていく。
----続く----
第三章です!
いきなり書きたくなりました。
明けましておめでとうございます。
今年もマイペースにがんばります★
あ、そうそう、「電車男」DVD映画版買いました!山田君の演技に惚れて(笑)