迂回





「…神谷さん…ここ…」



「えーーー?聞こえませんよ!!」









響き渡る騒音。



あふれかえる人。





「…か、神谷さん待ってくださいよ」



「沖田先生、何やります?!」



「そ、そんなこと言ったって私はこういうところ初めてなんですから」



騒がしい騒音の中、しどろもどろと紅い顔をして総司が言う。





「えっ?!ゲーセン初めてなんですか?!」



「遊んだことは無いです…」



総司は少し焦ったように申し分けなさそうに言った。







そんな総司を、セイはおかしそうに笑うと、腕を引っ張った。



「じゃあ、私が好きなやつ!!さ!!やりますよー!!!」



「は、はい」











そうして二人はゲームセンターの人混みの中へと吸い込まれていった。





「沖田先生!!なんで?!」



「神谷さんこそ、よくやってる割に弱くないですか?」



アイスホッケーの板が二人の間を行き交う。







総司は片手をポケットに入れて余裕で板を飛ばしているが、セイは中腰で必死である。



「あっ!!!」

ポーン!



また一点、総司が入れる。





はあはあと肩で息をするセイを見て総司は笑う。



その隙に、セイはさっと板を飛ばして総司のところへ入れ込んだ。







「あっ?!神谷さんずるい!!」



「油断してる沖田先生がいけないんですよ」





セイが心から楽しそうに、くったくなく笑う。







そうして、板がまたテーブルの上にスラリと出現した。





それと同時に、セイは少しかまえた。





女の子の黄色い声。



煩すぎる音楽のドラム音。











「顔も声も名前もわからない人を、探すのは、おかしいですか?」









セイの声が、総司の耳にはっきりと響いた。





そして、この他人が沸きめきあい我関せず騒がれるこの場所で、総司だけが、その声を聞いていた。











ホッケーの板が、カツ、と音をたてて滑り落ちていく。





それを見たセイが、うれしそうに笑ってみせた時の、その、影の残る笑顔も。









「見つかるといいですね」





総司は、自分側に入っていった点を無視して、叫んだ。













その瞬間だった。





セイは、泣いていた。

























総司はゆっくりとラケットを手放して、セイの元へ向かう。







自分以外の人を求めるセイを、抱きしめに。







顔も、声も、名前もわからない、その人の為に、泣くセイを。




















----続く----

「ぼくの地球をまもって」って昔流行りましたよね?あれの次世代編?
みたいのが今日出ててびっくりしました。…買いました★(おい)