白い雲が、流れていく。
その白さに、ため息をついたのは、セイだった。
「沖田先生、帰りますよ、起きてください」
風が吹いて、総司のゆるめのシャツが少しなびく。
起きる気配は無い。
「…沖田先生!」
そう叫びながら駆け寄ると、ぺたっと正座をして、総司の顔をのぞきこんだ。
(…起きない)
セイは、まじまじとその顔を眺めた。
そんなに、昨日眠れなかったんだろうか。
そう思いながら、総司の額に寄った眉の皺に気付く。
「………沖田先生ぇ—帰りましょうよ〜」
セイは、その額のしわをほぐそうと、総司の眉の間をぐにぐにとつねった。
と、その時だった。
セイの視界がまっくらになる。
「う、うわ、うわわっ」
いつのまに伸びていたのだろう、総司の大きな手がセイを包み込んでいたのである。
「な、何するんですか沖田先生のセクハ…!!!!」
セイは慌ててそう叫びながらじたじたと動いた。
顔を真っ赤にして、総司の顔を覗く。
「……………沖田先生?」
返事は無い。
「……まさか…寝てるとか………?」
総司は規則正しく寝息をたてるだけ。
だが、セイの体に巻き付いた腕は離れそうに無かった。
総司が寝ぼけていたのはわかったが、これではあまりにも苦しすぎる。
セイは思い切って大きく叫んだ。
「…沖田先生っ!!!!!!」
「え、あ、おわ、はいっ?!?!」
そのとたん、総司はびくーッ!!と体を跳ね返らせて起き上がった。
その反動で、セイも体のバランスを崩す。
「わぁあああッ沖田先生沖田先生!!!」
セイの体が総司の腕の中からずりおちて後ろのめりに倒れそうになって、わたわたわたと手を泳がせて助けを求めた。
「え、あ、あっ」
総司もなにがなんだかわからぬまま慌ててセイの腕をつかんだ。
セイを支えようと、必死で片手でその小さな体を抱き込んだ。
だが、今度は慌てた総司が体のバランスを崩した。
「わ、ちょ、っ」
総司に巻き込まれて倒れていくセイの頭は守ろうと、必死でセイの後頭部を掴んだ。
そのまま、二人で倒れ込む。
そうして、案の定総司は肘を打ち、セイはそれを目撃し痛そうに目を瞑り、床に転がった。
「〜〜〜〜〜〜」
総司は、セイを大事そうにかかえ、後頭部を守りながら、肘の痛みに、プルプルと震えた。
「…お、沖田先生…?」
セイも、眉をしかめて、総司を案じるが、それどころでは無い肘の痛みに震えながら耐えていた。
「だ、だいじょぶですか…」
セイはかなり心配そうにおずおずと聞いた。
「だ、だひじょうぶです」
うそばっかり、とセイは苦笑した。
青い空。
白い雲。
それから、やわらかい、鐘の音。
----続く----
うーむ。最近麦茶すきなんですけど、皆様はどうですか?あさは濃い麦茶にハマリちゅう…