そのまま、セイは爆睡を続ける総司の隣で考え込んでいた。
こんこんと眠り続けるその顔に、セイはため息をついた。
朝のホームルームのチャイムは当分先だ。
「…何だ。先客か」
セイはびっくりしすぎて声も出なかった。
いつのまに後ろに立っていたのだろう。
見知らぬ顔が、セイを見下ろしていた。
「…あんたは」
何やら妙な反応だ。
細い目をびっくりしたように開けてられても、セイにはわからない。
「…どなたですか?」
「ああ。まだ一度も会ったことが無かったな」
飄々としたその人の態度に少しセイはえ?とばかりに眉をしかめる。
そのセイの表情に、ふっ。とその人は笑って見せた。
「斎藤一だ。あんたと一緒の住まいだ、聞いて無かったか?」
「…斎藤さん…………」
何か聞いたことあるな、とセイは記憶をたどる。
そして、とたんに記憶がはじけた。
「…………あっ!!」
セイが驚いて見せても無表情なその顔に、セイは叫んだ。
「『カンの強い斎藤さん』!!!!」
「何だ、聞いていたか」
「い、いえ聞いたっていうか…藤堂さんて人からちょっと噂を」
セイはしどろもどろと答える。
「まあ、同じ家に住む身だ、よろしく頼む」
そう不適に笑ってみせるその顔は、どこまでも無表情だが、セイは好きになれそうだと、微笑んだ。
「…で、隣に倒れてるのは沖田さんか」
セイはその言葉にはっと身を起こした。
忘れていた。
「あ、そうなんです、なんだか…」
そこまで言ってセイは少し言葉を止めた。
「おめえら、始まるぞ」
「ああ、土方さんか」
こんなに人口密度の高い屋上は初めてだ。
セイは開いた口がふさがらない。
斎藤という人も土方も、現れるときの気配が無いのだ。
いつそこに立っていたのか、まったく気付けないので、セイは目を丸くするしかない。
灰色のスーツ姿の土方は、ズボンのポケットに腕を突っ込んで、ネクタイをゆるめていた。
仮にも教師が、というような立ち居振舞いで、セイと斎藤を見下ろしている。
「…で、そこの馬鹿は何倒れてやがる」
土方はたばこを一本吸い始めながら、セイに聞いてきた。
「あ、ですから寝不足で……」
そのセイの答えに、土方は眉をしかめて煙を吐いた。
「おまえ、その馬鹿が起きたら連れて帰れ」
「はっ?!」
セイの驚いた声は掠れてたばこの煙を揺らす。
「校長命令だ」
「こ?」
土方はそのままたばこを床に投げ捨て踏み潰した。
そうして、セイに背を向ける。
「おら、斎藤行くぞ」
「…本当に沖田さんには甘いな」
二人はそのまますたすたと屋上から去っていく。
セイの開いた口は塞がらない。
ぱくぱくと口を動かし、やっと叫んだ。
「校長—————————ッ?!?!」
セイの叫び声は大きすぎるほどだったが、総司はぴくともしなかった。
「っていうか何で私まで休まなきゃいけないの………?」
セイの疑問に答えてくれるものは、いなかった。
----続く----
眠すぎるといきなり頭かくッてなって「うおあッ」て叫びません?(お前だけだよ)