「…もっと寝てればいいじゃないですか」
セイは、手の内の紙を隠そうともせずにそう言い放った。
さすがに本当に眠いらしい、総司の足取りはおぼつかなくふらふらとしている。
「…ちょっと風が強すぎやしませんか」
やっとそう言ったというような重い口どりに、セイは苦笑した。
「…また、何も聞かないんですね」
鷺がひゅるりと回転をとげる。
それは、美しく弧を描いて。
セイは、無意識に紙をにぎりしめていた。
しわくちゃになってセイの手中に収まる。
「…貴方が話したいときに話せばいい」
セイはごくりと生唾を飲み込んだ。
…このひとは、こういう人なのだ。
それが、セイに小さな衝撃を与える。
風が吹く。
セイがそうして何も言えずに黙っている間に、総司はいい寝場所を見つけたらしく、
風の届かない柱の影に横たわっていた。
(…寝るの早いし)
セイは、はやくも寝息をかきはじめたその人の寝顔を覗き込む。
「…いったい何をしに屋上へいらっしゃったんですか」
セイの疑問は総司に届くことなく、遠くに消えた鷺にさらわれていった。
----続く----
最近アロマキャンドルにこってるんですけどねぇ。マッチがつけられなくて(駄目じゃん)