こうして、一日の夜がふけようとしていた。
蝉はもうなきやんで、かわりに夏の虫が畑で音を交わしていた。
静かな、田舎町。
星が、奇麗にまたたいて、緩やかな時を流れる。
水を飲みながら星を見上げていたのは、総司であった。
こん、と音をたててコップを窓際へ置いて、ふとんへ入ると、電気を消した。
淡い、光の残像だけが残り、静かな闇が訪れた。
と、思った時であった。
かちゃり…と、ノブをまわす音。
隙間から、白い蛍光燈の明かり。
「………?」
総司はまぶしそうに目をほそめた。
そこから姿をあらわしたのは、予想もつかない相手だった。
そう、セイである。
目をこすりながら、枕をかかえている。
「…神谷さん?」
総司は信じられないような面持ちで固まっている。
そして、耳にしたのはよほど信じられない言葉であった。
「祐にいちゃん…、一緒に寝て」
「はいっ?!」
そんな間の抜けた声も届いていないのか、少女は眠たそうにちかづいてくる、
そうして、するりと布団の中へ入ってきた。
総司は、壁にぴったり背をつけて、逃げるように両手を壁につく。
「え、え…って神谷さん…あ、あの」
真っ赤な顔で、そう話し掛けるが、少女はもう、動かなかった。
----続く----
金木犀ってつんで帰ったら怒られるのかなー